【動画】ヘビの第5の移動手法を発見「投げ縄式」

ヘビはどうやって木に登るのか、新たな知見

2021.01.14
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ミナミオオガシラ(米ネブラスカ州オマハのヘンリー・ドーリー動物園で撮影)には、体長3メートルほどに成長するものもいる。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
ミナミオオガシラ(米ネブラスカ州オマハのヘンリー・ドーリー動物園で撮影)には、体長3メートルほどに成長するものもいる。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
[画像のクリックで拡大表示]

 ヘビは様々な移動術を持っている。砂の上を横に動くものもいれば、木から木へジャンプするヘビや、体をくねらせて泳ぐヘビもいる。しかし今回、ヘビのまったく新しい移動法が明らかになった。柱に巻き付けた体をくねらせることで、柱を登る方法だ。(参考記事:「【動画】枝から枝へジャンプするヘビ、ほぼ滑空?」

 ミナミオオガシラは、オーストラリアやパプアニューギニアなどが原産のヘビで、主に樹上で暮らしている。第二次世界大戦後、このヘビは意図せずグアムに持ちこまれた。貨物船にまぎれ込んでいたのかもしれない。ミナミオオガシラはグアム島で急速に勢力を拡大、他の動物たちの数を減少させ、グアムに生息していた10種の鳥を駆逐した。対策として、死んだネズミに毒を詰め込んで空中投下したり、ヘビを探すイヌを使ったりといった試みが何度も行われてきたが、今のところどれも成功には至っていない。(参考記事:「毒餌ネズミを空中投下、グアムの蛇対策」

ヘビよけの障害物で鳥を守ろうとしたが

 2016年、米コロラド州立大学の生態学者であるジュリー・サビッジ氏とトム・サイバート氏は、あるアイデアを思いついた。動物よけに使われる直径20センチほどの金属製の円柱を鳥の巣箱の根元に取りつけて、鳥が犠牲になるのを防ぐという方法だ。表面がなめらかな円柱を取りつければ、ヘビは柱を登れず鳥を捕食できなくなるはずだ。

 ミナミオオガシラは、カラスモドキという鳥を狙う。この鳥は絶滅の危機には至っていないが、グアムでは減少傾向にある。

 研究チームは、グアムにある米地質調査所のミナミオオガシラ研究所でこの方法を試してみた。しかし、結果は失敗に終わった。ビデオカメラには、体を輪のように円柱に巻き付けて柱を登るヘビの姿が映っていたのだ。

「衝撃のあまり、私たちは互いに顔を見合わせました。ヘビがこんなことをできるなんて、考えたこともありませんでした」とサイバート氏は話す。

 彼らはこの新しい移動方法を「投げ縄式運動(lasso locomotion)」と呼ぶことにし、その詳しい仕組みを論文にまとめて1月11日付けの学術誌「Current Biology」に発表した。

 これまで、ヘビの移動手法には次の4つが知られてきた。多くのヘビが行う蛇行運動、直進運動、砂の上を横に移動する横ばい運動、そして木に登る際に使われることもあるアコーディオン式運動だ。今回提唱された投げ縄式は、第5の移動方法となる。

「非常に珍しく、激しい運動です。とても驚いています」と、米ラトガーズ大学の進化生物学者サラ・ルアン氏(本研究とは無関係)は語る。

太平洋諸島原産のミナミオオガシラは、1940年代後半に貨物船にまぎれ込んでグアムにやってきたと考えられている。(PHOTOGRAPH BY BJORN LARDNER, UNITED STATES GEOLOGICAL SURVEY)
太平洋諸島原産のミナミオオガシラは、1940年代後半に貨物船にまぎれ込んでグアムにやってきたと考えられている。(PHOTOGRAPH BY BJORN LARDNER, UNITED STATES GEOLOGICAL SURVEY)
[画像のクリックで拡大表示]

次ページ:ヘビのポールダンス

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
会員*のみ、ご利用いただけます。

会員* はログイン

*会員:年間購読、電子版月ぎめ、
 日経読者割引サービスをご利用中の方、ならびにWeb無料会員になります。

おすすめ関連書籍

PHOTO ARK 消えゆく動物

絶滅から動物を守る撮影プロジェクト

今まさに、地球から消えた動物がいるかもしれない。「フォト・アーク」シリーズ第3弾写真集。 〔日本版25周年記念出版〕 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:3,960円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加