サメは、これまで考えられてきたよりも深刻な危機に直面しているらしいことが、最新の研究でわかった。
研究者らが、太平洋からカリブ海にいたる世界58カ国、371のサンゴ礁でサメの大規模調査を実施したところ、そのおよそ20%のサンゴ礁でサメが確認されなかった。海の食物連鎖の最上位にいるサメは、獲物である魚を食べることで、その数を健全に保つという重要な役割を果たしている。
カタール、ドミニカ共和国、コロンビア、スリランカ、グアムなど、人間の居住地に近いサンゴ礁は、特にサメの数が少なかった。
7月22日付けの学術誌「Nature」に掲載されたこの研究は、サンゴ礁に生息する海洋生物の世界的調査プロジェクト「Global FinPrint」の一環として実施されたものだ。「これまでのサンゴ礁におけるサメの調査で最大のものです」と、今回の論文の共著者で、ナショナル ジオグラフィック協会付きエクスプローラーであるエンリック・サラ氏は話す。
カナダ、ダルハウジー大学の生物学者アーロン・マクニール氏が主導する調査チームは、世界371のサンゴ礁に全部で1万5000台以上のエサ付きカメラトラップ(自動撮影装置)を設置した。そこで撮影された写真からわかったのは、サメのいないサンゴ礁が多かったことだ。調査したうちのほぼ20%のサンゴ礁で、かつて生息していたオグロメジロザメ、ツマグロ、ペレスメジロザメなどが見つからなかった。
「手つかずの海から汚れた海まで、世界中の数百カ所の海を潜ってきた経験から言えば、調査対象となったサンゴ礁の5分の1にサメがいないことは、驚きではありませんでした」と、サラ氏は言う。同氏は世界の海を保護しようと、2008年に「原始の海」というプロジェクトを設立している。(参考記事:「“原始の海”を守る、エンリック・サラ」)
また、サラ氏によると、サメが見つかったサンゴ礁でもその数は大きく減っており、生態系のなかで最上位捕食者の役割を果たすのは難しくなっているという。
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