THE YELLOW MONKEY|4人が語る2019年のTHE YELLOW MONKEY

4人でバンドをやりたかった

──先ほど吉井さんが「4人の関係性が健全だったら大丈夫」と言ってましたが、やはり作品においてはメンバー同士のつながりが大事だと。

吉井 そうですね。最初は「バンド名を変えてやるのもいいよね」って話してたんですよ。

菊地英二(Dr)

アニー うん。「とにかく、この4人で音を出したい」というところから始まったので。

吉井 旧譜は一旦置いておいて、「4人で新しいバンドをやります」というのが発端だったんですよね。周りのスタッフは「いやいや、そこはTHE YELLOW MONKEYでお願いします」と言いましたけど(笑)、それはともかく、“人間ありき”なのは間違いなくて。どんなにブランクがあっても、どんなにギクシャクしても、4人でバンドをやりたかったんです。特典映像(初回生産限定盤DVD「SELECTION of THE YELLOW MONKEY」 / 再集結以降に行われたライブから、選りすぐりのライブ映像10曲を収録)に最初のテイクが収録されていますけど(2015.08 都内スタジオ / 15年ぶりに4人で音を出したスタジオセッション の1曲目のテイク「Subjective Late Show」)、エマは最後のサビの展開もちゃんと弾けなかったし。忘れてたでしょ?

エマ 忘れてました(笑)。バンドのグルーヴもまだ未熟だったしね。

アニー 自分の音だけで精いっぱいだったから。

エマ それぞれのスキルはあるんだけど、昔のような音にならないというか。

吉井 でも、昔の残像はあるっていうね。

──「最初はギクシャクしていても、4人で音を出し続ければ大丈夫だ」という確信もあった?

エマ それはメンバー同士の会話から感じましたね。下ネタをしゃべってるときとか。

吉井 下ネタなんだ(笑)。

菊地英昭(G)

エマ (笑)。スタジオの休憩中に話してると、人間関係が変わってないことを感じられて。それがあれば、音楽はなんとでもなるんですよね。もちろん「どうやって今のTHE YELLOW MONKEYの音を出すか」と考えたし、ツアーに入ってからもいろいろと試行錯誤してましたけどね。途中でイヤモニのセッティングを変えたり。

吉井 そういうツールに不慣れなんですよ。我々は19世紀の人間なので(笑)。

アニー 20世紀飛び越えちゃった(笑)。

ヒーセ 長生きにもほどがあるよ(笑)。

吉井 90年代はモニタースピーカーだけでライブをやってましたからね。音は空気に触れてナンボという感じもあるし、そこは今後も課題でもあって。ただね、最初のセッションから現在に至るまで、ずっと変わらない音が確実にあるんです。それが実体として出てきたのが、今回のアルバムだと思いますね。

「これがTHE YELLOW MONKEYだ」

──ちょっと大げさかもしれませんが、今のシーンに対して「これがロックだ」と提示したいという気持ちもあったのでは?

吉井 それよりも「これがTHE YELLOW MONKEYだ」というのが一番かな。ロックが死んでるとか生きてるとか、それ自体が大昔の話だし、それを掲げるのはどうなのかなという気持ちもあるしね。ただ、自分たちの作品は自分たちが愛してきたロックの化身だし、ロックに対する憧れでもあって。この3年間で、「やっと、そういう存在になれた」というのはありますね。

廣瀬洋一(B)

ヒーセ こういう話になったときに、思うことがあって。今の音楽を取り巻く環境だったり、シーンをにぎわしている音楽の中に、いわゆるロックバンド、ロックンロールバンドの形態が減っているのは確かだと思うんですよ。でも、自分たちのことを“王道のロックバンド”みたいに言われると、「そうじゃないんだけどな」って。自分たちが好きだったバンドも全然王道のロックバンドではなかったし。

吉井 そうだね。Queenもそうだし。

ヒーセ そうそう。Queenも最初は王道のロックバンドとは思われてなかったじゃないですか。ある時期に“王道”と呼ばれる瞬間が来たんだけど、本来はそうじゃなかった。自分たちもそうだと思うんですよ。だから“王道のロックバンド”と呼ばれると、「簡単に言いすぎてない? 全然違いますよ」って。

吉井 クラシックロックを題材にしているバンドが少ないから、そう思われるのかもね。ロックって恥ずかしいんですよ。フュージョンっぽくしてみたり、DJを入れたり、ラップみたいな歌い方をするバンドが多いのは、何かをコラージュしないと恥ずかしくてできないからじゃないかな。我々みたいにベースがクラシックロックで髪の毛が長くて、ピタピタのパンツ履いて、キラキラの服を着てるバンド、今はほとんどいないですしね。

ヒーセ 4ピースバンドで、こういうルックスだから“王道”って呼ばれるのか。

アニー ああ、なるほど。

吉井 ちょっと偉そうな言い方だけど、こういうバンドって、人間力がないとやれないんです。楽器の演奏はもちろん、スタイル(体型)や見た目、佇まいを含めて、これが成り立っているというか。そういう意味で“王道”と言われているんだとしたら、すごくうれしいけどね。

第二のTHE YELLOW MONKEYの人生を

──ニューアルバムのリリースに伴うアリーナツアー(「THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 -GRATEFUL SPOONFUL-」)も楽しみです。過去の名曲だけではなく、アルバムの新曲をメインにしても完全に成り立つはずなので。

吉井 ワクワクしてますよ、我々も。早くお客さんを熱狂させたい。

ヒーセ ホントに。公演ごとにトランプのマークが付いてるんだけど、それによってセットリストのパターンが違うんです。「9999」の曲はもちろん、昔の曲の中からどれがプラスされるのかも楽しみにしてほしいですね。同じマークであっても、会場によって曲目が変わる可能性もあるので。

エマ 新録の7曲は今回のツアーで初披露だから、早くやりたいですね。「9999」の曲は演奏していても楽しいんですよ。今の自分たちが表現されているし、ノリもよくて。過去の曲とは何かが違うんですよね。

吉井 過去の曲は忙しいんだよね(笑)。

アニー それはそれでいいと思うけど、アルバムの曲は音を削ぎ落として、ソリッドになっているから。ライブでも映えるだろうし、それを早く実感してみたいなと。

──期待してます! アルバム「9999」が完成したことで、さらに前に進める実感もありますか?

吉井 それが楽しみなんですよね。よりシンプルになるかもしれないし、プログレッシブになるかもしれないし。また海外でレコーディングするのもいいしね。一度死んでるバンドだし。「THE YELLOW MONKEYは二度死ぬ(笑)」って冗談で言ってるんだけど、今は第二の人生というか、倍生きてる感じなんですよ。50代になったら、生きてること自体が奇跡なので。

──いつ何があるかわからないというか。

エマ 本当にそうですよ。

吉井 大昔の人は35歳くらいで寿命を迎えてたでしょ? たぶん人間は、そのあたりで一度、生命の終わりを迎えるんじゃないかな。THE YELLOW MONKEYもその時期に一度終わったんだけど、第一期の人生でやれることはすべてやり切ったという感覚もあったので。それをもう1回やれるなんて、ラッキーですよ。しかも、こんなにいいアルバムもできて。あと7枚は作らないと。

アニー 最初の人生と同じ枚数だね(笑)。

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