井上苑子|ラブソングと向き合い歌い続けるシンガーソングライター

2020年7月にメジャーデビュー5周年を迎える井上苑子が、1月に全国10カ所を回る冬ツアー「その、恋ノうえ。」をスタートさせる。

今回のツアーのテーマは恋。さらにもう1つのテーマとして井上自身が掲げられている。音楽ナタリーでは、小6でライブ活動を始め、17歳でメジャーデビューし、この12月に22歳の誕生日を迎えた井上の近況とツアーにかける意気込みを聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 前田立

気張っていてもしょうがない、もっと自由に生きよう

──年末なので、まず、2019年の音楽活動を振り返っていただけますか。どんな1年になりましたか?

井上苑子

挑戦させてもらったこともいっぱいあったんですけど、気持ち的には安定してる部分が多かったなと思います。悪い意味ではなく、自分自身に感情の波がなかったというか。モチベーションを高くキープできていたし、ずっとワクワク感があってよかったですね。今までは自分に自信がなかったので、とにかく焦ってしまっていたんです。でも、前回の冬ツアー(2018年12月から2019年3月にかけて開催された「ファンタジックツアー」)をきっかけに肩の力を抜くことを覚えたというか(笑)。あんまり気張っていてもしょうがないなと思うようになりました。

──ツアーで何があったんでしょう。

会場によってライブの出来が全然違ったんです。よかった点もあるんですけど、焦りすぎて歌詞が出てこないことが一番多かったツアーで。そんな自分をめちゃくちゃ責めて、実は最近まで負の連鎖が続いていました。でも、うまくいかないのは自分が焦っていたせいだと痛感しまして(笑)。無理やり突き進もうとして焦るから「あれもこれもダメだ!」となってしまう……最近自分を俯瞰してみて気付きました。失敗しても今、死ぬわけじゃないし、ゆっくりと自分を好きになれるようにがんばろうと思えたんです。今は深呼吸ができる状態になって、音楽とじっくり向き合えている気がします。

──冷静に考えられるようになったのは5月に発売した3rdアルバムよりあとですか?

そうですね。このアルバムのときは生き急いでました(笑)。泣いたり、笑ったり感情の起伏が激しかった。それはそれで楽しかったですけど、アルバムを作り終えて、ほっとしたのかもしれないです。

──「白と色イロ」いうタイトルですが、ご自身にとってはどんな1枚になってます?

私に対する世間のイメージが高校生のままでずっと止まってるんですよね。まだ初恋みたいな曲を歌っているイメージが強いのかなと思って、初恋を想起させる“白”にして。でも、いろんな色を出していきたいなとも思ったので、“色イロ”と付け加えたんです。白というイメージを壊したいわけではなくて、「どんな色にもなれる」というのを表現したかったんです。アルバムを聴いてくださった人から、自分が気付きもしなかった部分を褒めてもらえて。そういう反応があったことでほっとしていたし、12曲もできたからリリース後のライブは充実して、それが自信になったのかなと思います。

──気持ちが安定してから、改めて自分と向き合って何が見えましたか?

井上苑子

自分のいろんな面が見えましたね。私は今まで、自分の気持ちを隠すことが苦手だったんです。でも、そういう正直すぎる性格が他人に迷惑をかけているんじゃないかと思って、意識的に人と会うのを止めて、会ったとしてもあまり自分の話をしていなかったんです。すると周りの子から「どうしたの? 元気ないんじゃない?」と心配されて。事情を話したら「自分を隠さない子だから、私も話をしたいと思ったし」と言ってくれました。あと、自分が思っているよりも周りの人は他人を気にしないんだということにもやっと気付いて(笑)。もっと自由に生きようと思いました。

──人は人、自分は自分と分けて考えられるようになったんですね。

そうですね。もちろん、頭ではわかっていたんですけど、それをやっと実感できるようになったんです。これまでは「私はこうだから、君もこうだよね」って、自分の気持ちを押し付けていた部分があって。でも今は、人のことをそこまで考えなくなったし、他人は他人なんだからと思えるようになりました。例えば私は穴の上にいて、落ちた人を引っ張ってあげられる存在になりたいと感じています。ここ数カ月で、穴の上にどしっと立っていられるくらい強くなったと思うし、もっとみんなに頼られたいと思っていますね!

恋の歌を歌うために生まれてきた

──ちょっと大人になってきた雰囲気も感じる井上さんですが、冬ツアーが決定しています。どんなツアーになりそうですか?

「ファンタジック」ツアーのときはどうしても、“白”の部分がコンプレックスになっていたんですね。でも、今回はあえて「その、恋ノうえ。」というタイトルにして。

井上苑子

──これ、前からご存知でした? 「そのこ いのうえ」と姓名を逆にすると“恋”が入っているって。

あはははは(笑)。私も今回気付きました。だからもう、私は、恋の歌を歌うために生まれてきたのかなと思って、そういう自分を認めてあげるツアーにしたいですね。今までは「恋愛の曲を書いている人だよね」と言われることをコンプレックスに感じる時期もあったんです。そんな自分を抱きしめてあげるツアーになる予定です。

──タイトルはどのように決めましたか。

たまたまなんです。過去に恋をテーマにしたツアーをやったことがなかったので、やりたいなと思っていて。あと、来年メジャーデビュー5周年を迎えるので、自分を引っさげるのもありだなと思って。とりあえずグッズを考えようと思って、平仮名で「そのこ いのうえ」と書いてたら、「そのこ、いのうえ……その恋のうえ……いいじゃん!」と閃いて。恋の上ってなんなのかわからないかもしれないけど、恋の先ってイメージしたら、愛とか、いろいろなことが思い浮かぶツアーになるかもと思って決めました。

──コンプレックスに感じていたラブソングは今、ご自身にとってどんなものになってますか?

私、恋をしている人が本当に好きなんです。特に恋の始まりが好きで、初期衝動というか、人間性が出るなと思っていて。私自身も恋をしたら、「恋をした!!」と感情が高ぶっちゃうタイプなので、そういう気持ちを書いたら、共感してくれる人がきっといるはずだと思って作っています。私にとっては日記というか、妄想とか想像を歌詞にしていることが多いので、それが聴いてくれる人にとって心の拠りどころになればいいなと思っていますね。

──また、今回のツアーではサンスター文具さんのアイテム「DELDE」とのキャンペーンも展開されています。公式Twitterアカウント(@delde_official)をフォローし、キャンペーンのツイートをリツイートした方の中から抽選で100名が冬ツアーに招待されるという企画です。

「DELDE」とコラボするのは2回目で、前回は高校3年生のときにペン立てにもなるポーチを数量限定で作らせていただきました。生地やチャームなどいろいろこだわって実際に高校でも使っていました。また一緒にやらせてもらえてすごくうれしいです。

──応募する方にメッセージをお願いできますか。

応募をきっかけに「DELDE」と井上苑子にハマって抜け出せなくなるくらいになってほしいですね。ツアーに来てくださったら絶対に楽しませる自信があるので、「DELDE」は知ってるけど、井上苑子の曲は聴いたことないという人もぜひぜひ応募してください。学生の方以外にOLさんもデスクの上で使えると思うので、どんな方もどんどん参加してほしいと思います。