第一線で活躍する医師や看護師、医療従事者などが講師として登場し、わかりやすく解説する「メディカのセミナー」。そのセミナーのプログラムのうちチャプターの1つをメディカLIBRARYだけで特別配信します。

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講師
則末泰博
東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科(集中治療部門)部長

<セミナーはこんな内容>
■酸素療法とデバイスの基本を、症例も交えやさしく解説!身近な「なぜ?」を解決できる!
■急激な低酸素など、急変時の心構えと対応が身につく。
■人工呼吸器離脱の考え方と方法が分かり、ケアを実践できるようになる。


配信|CHAPTER 4:人工呼吸患者で評価すべき指標


こんにちは。東京ベイ・浦安市川医療センター救急集中治療科の則末です。このチャプターでは、人工呼吸患者で評価すべき項目についてお話ししていきます。患者さんの異変やアラームにどのように対処すべきか、ということについてもご説明します。

まず一般的には人工呼吸管理されている患者さんでは、次のスライドのような項目で評価すべきと言われています。これにはすべて意味があり、とても重要な項目です。

【人工呼吸器設定】
どのようなモードが使われているか、サポート圧がどれくらいなのか、呼吸回数は何回に設定されているか、PEEPはどれくらいなのか、そしてFiO2の設定は何%なのか。

【アラーム設定】
呼吸数の上限と下限、気道内圧の上限と下限、一回換気量の上限と下限、分時換気量の上限と下限です。

【実測値】
先ほどはアラームの設定値でしたが、こちらは患者さんが実際にどれくらいの数値を出しているかということです。酸素飽和度、呼吸回数、最高気道内圧、一回換気量、分時換気量などが重要な数値です。

【人工呼吸回路】
接続が緩んでいないか、加温加湿器の電源は入っているか、加温加湿器の水量は大丈夫か、温度はどうかです。

【挿管チューブ】
挿管チューブの深さはどれくらいか、カフ圧はどの程度かです。

そして最後に【患者の身体所見】です。

これらの項目を評価することが必要ですが、これだけだと教科書的ですので、実際の患者さんでイメージを膨らませながらお話ししていきます。

人工呼吸管理の適応・設定・患者評価01


次のスライドのような症例です。

82歳の女性で理想的な体重は45kgくらいです。COVID-19による肺炎で人工呼吸管理をしていて、筋弛緩が行われています。この患者さんにA/C-PCV(A/Cのプレッシャー・コントロール・ベンチレーション)というモードを使っています。そして酸素の濃度はFiO250%、吸気圧のPEEPは10cmH2Oに設定されてます。そして先ほどより低一回換気量アラームが鳴るようになっています。サチレーション(SpO2)は保たれています。

このようなときに、どのようなことを評価して、どのように動いたらよいでしょうか。

人工呼吸管理の適応・設定・患者評価02


まず低一回換気量アラームが鳴っていますので、【アラーム設定】の一回換気量の上限と下限に引っかかったということになります。

その一回換気量の下限はどれくらいに設定されているかというと200mLでした。つまり患者さんの一回換気量が200mLを下回ったときにアラームが鳴るように設定されています。

となると【実測値】を見る必要があります。確認したところ、呼吸回数は34回/分、一回換気量は190mL、そして分時換気量は6.6L/分となっていました。つまり1回の呼吸でガス交換される量が190mLしかないことになります。そして最高気道内圧は20cmH2Oと、それほど高くありません。

人工呼吸管理の適応・設定・患者評価03


そして患者さんの【身体所見】はどうでしょうか。次のスライドは、すべての呼吸器モードで確認すべき身体所見です。

・吸気に伴って胸郭が挙がっているか?
・胸郭の挙がりに左右差はないか?
・呼吸音に左右差はないか?
・喘鳴や気道狭窄音は聞こえないか?


これらはすべての人工呼吸患者で気にする身体所見です。

人工呼吸管理の適応・設定・患者評価04


この患者の身体所見ですが、吸気時の胸郭の挙がりがわずかだということがわかります。胸郭のが挙がりがわずかということは、つまりあまり換気ができていないということになります。

そして前胸部から頸部にかけて「ヒュー」という気道狭窄音が聞こえました。つまり何らかの理由で一回換気量が入りづらくなっているということになります。

一回換気量が入りづらくなる原因としては、大きく分けると次のスライドの3つと考えて間違いありません。

①リークがある
②肺が硬くなってしまっている
③気道が狭くなっている


ということになります。

人工呼吸管理の適応・設定・患者評価05


まずリークを確認する必要があります。それが「評価すべき項目」のスライドの【人工呼吸回路】の項目です。

接続は緩んでいませんでした。そして【挿管チューブ】の深さ、カフ圧、例えば挿管チューブが浅すぎた場合は、バルーンがしっかり膨らんでいたとしてもリークが起こってしまいます。またはカフが損傷している場合でもリークが起こります。この患者さんには、そのようなことはありませんでした。


ということで、肺が硬くなっているのか、それとも気道が狭くなっているのか、つまり風船にストローをつけて膨らます時のことを考えていただくと、この風船が硬くなっているのか、それともストローが細くなってしまったのか、このどちらなのか判断するいい方法があります。

肺が硬いのか、気道が狭いのか、これを流量つまりフローのグラフィックで見分ける方法をご紹介します。



ログインして動画でご覧いただくと「フローのグラフィックで見分ける方法」をはじめCHAPTER4の解説(残り約7分程度)をすべて視聴するができます。また、ご購入いただくとプログラムもすべてご覧いただけますのでぜひご検討ください。

人工呼吸管理の適応・設定・患者評価06



プログラム


① 酸素療法
酸素療法で使うデバイスは何を基準に分類される? 使い分けは?

・酸素療法の基本
・低流量システム
・リザーバーシステム
・高流量システム

② 人工呼吸管理の適応
この患者さんには挿管が必要? どうして必要? 考えながらご覧ください!

・症例提示
・気管挿管の適応『MOVES』って?
・症例の振り返り
・NIVの適応
・呼吸ではないNIVのもう一つの適応

③ 人工呼吸器の仕組みと設定
人工呼吸器は設定ごとにどのような違いがあって、どのようなトラブルが起きやすいでしょうか? 知っておくことでケアの実践につなげましょう!

・人工呼吸器回路について
・人工呼吸器の設定
・A/Cモードについて
・A/C-VC と A/C-PC
PSVモードについて
・SIMVモードについて
・覚えておくべき用語のまとめ

④ 人工呼吸患者で評価すべき指標
人工呼吸器からアラームが! 何を疑って何を確認しますか? 設定モード別に解説します!

・症例で学ぶ 設定のみかた PCV編
・呼気のグラフィックのみかた
・症例で学ぶ 設定のみかた VCV編

⑤ 急激な低酸素血症への対応
命綱は『換気』! 常に最終手段を意識してスムーズに動けるようになろう!

・急激な低酸素が起こったときにできること
・挿管チューブのカフに問題があった際の対応
・分泌物によるチューブの閉塞があった際の対応
・気胸やチェストチューブの閉塞があった際の対応
・低換気ではなかった場合の対応

⑥ 腹臥位療法の実践
肺にやさしい腹臥位療法! コツを学んで何度もシミュレーションし、実践につなげよう!

・仰臥位と腹臥位の違い
・腹臥位療法実施前の準備
・体位変換の実施

⑦ 人工呼吸器のウィーニングと離脱
人工呼吸器からの離脱の過程は2種類! 患者さんの状態に合わせた方法で離脱を進められるように、考え方を学びましょう!

・ウィーニングとDaily SBT
・Daily SBTについて
・SBTの方法・失敗の基準例
・ウィーニングの方法
・抜管の手順

⑧ 症例別の人工呼吸管理
実際の症例から、より具体的な対応を学べます! こんなときあなたはどう動きますか?

・症例1:CABG術後の69歳女性
・症例2:市中肺炎で入院した70歳男性
・症例3:COPDの急性増悪で入院した68歳男性
・症例4:23歳の小柄な女性