Dr.純子のメディカルサロン

窓ぎわのトットちゃんに見るポジティブサイコロジー
~人のプラス面に着目~

 黒柳徹子さんによる「窓ぎわのトットちゃん」の続編が42年ぶりに刊行されました。1981年に出版され、多くの国で翻訳されてきたトットちゃんは、なぜこんなにも多くの人たちの共感を得て、多くの人たちを元気づけたのでしょうか。ポジティブサイコロジー心理学の視点から読み返してみました。

(文 海原純子)
「窓ぎわのトットちゃん」続編を書いた黒柳徹子さん

「窓ぎわのトットちゃん」続編を書いた黒柳徹子さん

 発達障害という概念が知られていない時代、今なら多動障害と言われてしまうようなトットちゃんは、ちょっと変わったユニークな子どもでした。子ども時代に動き回ったり、物をなくしたり、忘れ物をして始終注意されたりしていた人にとっては、トットちゃんのように普通とは違っていてもこんなに生き生きのびのび成長できる場があることや理解してくれる大人がいることに励まされたと思います。

 トットちゃんが黒柳徹子さんになるまでの成長の中に、ポジティブサイコロジーのエッセンスが隠されていますので、そのポイントを考えてみたいと思います。みんなと同じにできない子をもつお母さんたちや、みんなと同じにできないと落ち込んでいる方にはヒントになると思います。

 1. 居場所に合わせて自分を閉じ込めない

 トットちゃんは普通の小学校でおとなしく授業を受けられません。小学校で机をばたばた開けたり閉じたり、授業中に大きな声で窓から空にいるツバメに向かって話し掛けたりして、小学校を退学になってしまうのです。母親は、受け持ちの先生から小学校に来ないようにと言われますが、トットちゃんには学校を退学になったとは伝えず、トットちゃんを受け入れてくれる学校を探します。

 黒柳さんのあとがきによると、退学の事実を知ったのは20歳を過ぎた頃だといいます。もし子どもの時にそれを知ったらのびのびと行動できなかった、自己肯定感が低下して転校しても萎縮していただろう、と黒柳さんは書いています。「なぜみんなと同じにできないの?」とは言わず、ありのままの子どもを受け入れてくれる場を探したお母さんの知恵が感じられます。びくびくしながら自分を抑圧してその場に合わせるのではなく、ありのままの自分で生きられる場を見つけることは心の健康を守る大事なポイントです。

 2. 自己肯定感を保てる言葉

 転校先のトモエ学園校長の小林先生は、トットちゃんに「君は本当はいい子なんだよ」と会うたびに声を掛けてくれます。トットちゃんはいろいろと問題行動も起こしています。でも声を掛けられるたびに、トットちゃんは「自分はいい子なんだ」と思い、自分のいいところを見つけようとしています。ポジティブサイコロジー心理学では、性格の特性の中で自分の強みを見つけることが心の健康度を上げるとしています。

 校長先生から声を掛けられるたびにトットちゃんは、自分がしたいいこと、例えばいじめられた子を守るために闘ったり、人に親切にしたり、病気の動物を必死に看病したりしたことなどを思い出し、自分のいいところ、自分の性格の強みを確認できたといえます。人間は駄目なところを見つけて落ち込む場合が多く、自分の持つ良さには気が付こうとしません。自己肯定感を育む言葉がトットちゃんの心の健康を高めたといえるでしょう。

 3. 好奇心はウェルビーイングの原動力

 トットちゃんが通ったトモエ学園の教室は机といすがありません。電車が教室で、どこに座るかは毎日の気分で変わります。今のフリーデスクのような学校です。時間割もなく、自分が好きな科目から始めていいのです。好奇心があり、やりたい科目から勉強できるので、楽しく始められるのです。嫌いな科目もその日のうちにやればいいので、自分のペースで勉強ができるわけです。子どもが何に関心を持っているかも分かりますし、子どもは自分なりに考えて授業の科目の順番を決める力を養えます。好奇心を持ちわくわくしながら調べたり、集中したりすることが心の健康度を高めます。

 4. 性格の強みを見つけて伸ば

 トモエ学園の校長先生は、「どんな子も生まれた時にはいい性質を持っているが、大きくなる間にいろいろな、周りの環境とか大人たちの影響で、スポイルされてしまう。その『いい性質』を見つけて、それを伸ばしていき、個性のある人間にしていこう」という方針だったといいます。「悪いところを直すより、まずいいところを見つけて伸ばす」というのはポジティブサイコロジー心理学のポイントです。校長先生は期せずしてこのポイントを実行しているといえます。

 ちなみに、ポジティブサイコロジーによる性格の強みの中には、勇敢、チームワーク、親切、ユーモア、好奇心などが挙げられています。自分の持ついいところを伸ばしていけば、問題のある部分は気にならなくなるものです。

 「窓ぎわのトットちゃん」にはこうしたヒントがちりばめられています。子どもだけでなく、誰かとすぐ比較して落ち込んだりする人も「自分の持ついい部分を見つけてみる」「好奇心があるものを追求する」「自分がありのままでいられる場を探す」など、ヒントになることがたくさんあるはずです。(了)

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