チャン・ツィイー:「グランド・マスター」 腰を痛めて1週間寝込むも「ジャッキーに比べたら…」

カンヌ映画祭の会場でインタビューに応じたチャン・ツィイーさん Stuart Wilson/Getty Images for Gaga
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カンヌ映画祭の会場でインタビューに応じたチャン・ツィイーさん Stuart Wilson/Getty Images for Gaga

 中国各地に実在した武術の宗師(グランド・マスター)たちの壮絶な戦いと運命を描いた「グランド・マスター」(ウォン・カーウァイ監督)が公開中だ。トニー・レオンさん、チャン・ツェンさんらと共演したチャン・ツィイーさんが先ごろフランスで開催されたカンヌ国際映画祭に、出品された同作を引っさげ現地入りした。映画祭の会場で今作の過酷な撮影の様子や見どころを聞いた。(毎日新聞デジタル)

ウナギノボリ

 −−カンヌ映画祭に参加されていますが、現地の雰囲気はいかがですか? レッドカーペットに参加した感想や同映画祭に対する思い入れがあれば教えてください。

 カンヌは私にとって特別な場所。実はオープニングの夜、(審査員を務めている)アン・リー監督に再会しました。私の初めてのカンヌは彼とともに「グリーン・デスティニー」(00年)で参加したときでした。もう結構昔の話なのに、鮮明に覚えています。それから、鈴木清順監督と「オペレッタ狸御殿」(04年)でも参加したし、コンペへの参加や審査員も務めたりと、もう8、9回参加しています。コンペ作品でもそうでなくても、カンヌやレッドカーペットを見ると“映画の世界の宮殿”のような場所に感じます。

 −−「グランド・マスター」で主人公の葉問(イップ・マン)と武術を競い合い、やがて引かれあうようになるルオメイ役を演じるにあたって過酷な訓練を受けたそうですが、訓練で一番きつかったのがどういう面でしたか。

 ジャッキー・チェンに比べたらまだまだだけど!(笑い) 今回は3年間に3人のマスター(宗師)に主にルオメイが使う八卦掌を集中的に教えてもらってトレーニングをしました。思い出すだけでも大変だったわ(笑い)。私もトニーもけがをしたし……。トニーは腕を骨折したし、私は腰を痛めてしまって、1週間も寝ていなきゃいけなかったりと、最悪の経験もした。でもみんな回復しましたし、まだ生きているし(笑い)。この仕事を愛しているからやっぱり映画を作っていきたい。観客の方にもそんな私たちと同じくらい、作品を愛してもらえたらと思います。

 −−ルオメイの若いときから晩年までを演じています。表情やたたずまいなど年代によって繊細に演じ分けられていましたが、幅広い年代を演じるにあたって最も留意した点は?

 順撮りではなくて、時代をあっちこっち行き来しながら撮影していたから、演技プランとかはなかった。でも私が思うに、素晴らしい演技とは、演技しないことなんじゃないかな。演じるのではなく、ただ(そこに)存在する、ということね。そうすればキャラクターとして自然な感情がわいてきて、観客もそれをとらえてくれると思う。

 −−映像美で知られるウォン・カーウァイ監督がメガホンをとりました。カーウァイ監督について、言われた言葉、撮影中に印象に残ったエピソードを教えてください。

 監督は並外れた独創力を持った方。そして、作品の完成度を高めるために常に試行錯誤を重ねています。つまり……監督は自分自身を常に改善するんです。誰かに強制されたり、要請されるわけではなく、監督自身が作品をよりいいものにしようとする。そのため、たくさんの時間を費やし、撮り直しもする。それは監督が「もっとよくなるはずだ」と考えるからです。

 −−この映画は中国武術について描いていますが、ツィイーさん自身、これまで武術の世界にどう接していましたか? また、この映画の撮影前と撮影後で武術に対する考え方は変わりましたか?

 子供のころは男の子たちが“カンフーごっこ”をやっているのを見ていただけです。私はまったく興味がありませんでした。作品のために習っただけ。役柄上必要でしたからね。でも、出演2作目の「グリーン・デスティニー」以来、多くのアクション映画に出演したのでまったく未知ではありませんでした。まだまだ習うべきことが多いですが。

 −−この映画を見るのを楽しみにしている人たちに見どころとメッセージを。

 みんなに楽しんでもらえる傑作だと思うわ。カーウァイ監督のファンの期待を裏切らない作品だと思います。「2046」のときよりは短いけれど、3年をかけて作った映画だし、そこにはみんなの心や思いが役と作品に込められている。アクションはもちろん、衣装や美術をはじめとしたビジュアルの美しさも堪能してほしいですね。

 *映画「グランド・マスター」は、TOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開中。

 <プロフィル>

 章子怡。1979年生まれ、中国・北京出身。チャン・イーモウ監督に見いだされ、「初恋のきた道」(99年)に主演、19歳にして世界中の注目を集める。続くアン・リー監督の「グリーン・デスティニー」(00年)で数々の映画賞を受賞し、アジアのスターとしての名声を不動のものとする。2001年にはブレッド・ラトナー監督の「ラッシュアワー2」でハリウッドデビューを果たし、05年の「SAYURI」で、英アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、世界のトップ女優の地位に上りつめる。ウォン・カーウァイ監督作では、「2046」(04年)に出演。花王アジエンスなど多数のCMでも活躍。その他の出演作は、チョン・ウソンさんと共演した「MUSA─武士─」(01年)、チャン・イーモウ監督の「HERO」(02年)、「LOVERS」(04年)、「パープル・バタフライ」(03年)、鈴木清順監督の「オペレッタ狸御殿」(04年)、「女帝[エンペラー]」(06年)、チェン・カイコー監督の「花の生涯~梅蘭芳(メイランファン)~」(08年)、デニス・クエイド共演の「ホースメン」(08年)、製作も手掛けた「ソフィーの復讐」(09年)など。

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