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「いいかげんな正社員」が許せない派遣社員の憤り

井寄奈美・特定社会保険労務士
 
 

 A子さん(32)は、ある家電メーカーで派遣社員としてデータの入力業務を行っています。正社員から入力するよう指示されるデータに間違いが多く、そのたびに修正せざるを得ません。A子さんは「いいかげんな仕事を回されては困る」と憤りを感じていますが、会社に進言すべきか迷っています。

 A子さんに入力業務を指示するのは正社員のB子さん(36)です。A子さんは働き始めた頃、B子さんの指図通りにデータを入力していました。ところが、後でやり直しを命じられることがたびたびありました。原因はB子さんが作成したデータの誤りでした。

データの整合性に疑問

 データの誤りがA子さんの入力ミスと疑う社員もいました。それでもA子さんは、いちいち反論しませんでした。自分の入力ミスではないと確信していたからです。ただ、作業を再びやり直すことは時間の無駄で、できるだけ避けたいと考えていました。

 仕事に慣れるに従い、A子さんはB子さんから渡されるデータの整合性に疑問を感じるようになりました。B子さんが過去の年度を間違えたり、集計対象でないデータを入れていたりするケースがあったからです。

 B子さんは自分が作成したデータのチェックを事前にしていないと思われます。そんなB子さんの仕事ぶりにA子さんは不信感を抱かざるを得ません。でも派遣社員の立場で、データを事前にチェックするよう会社やB子さんに求めることができるのか疑問を感じています。

自分の持ち分を正確に

 職場で一つの業務に複数の社員が関わる場合、注意すべきことがあります。各自が責任をもって自分の持ち分を正確にこなし、次の人に渡すことです。

 事例のA子さんのように作業の川下にいる人が優秀な場合、その人に負担が集中してしまうことがあります。川上でデータを作成するB子さんのように「何かあれば、川下で発見してもらえるだろう」と考え、検証もせずに仕事を回してしまうのです。

 しかし…

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特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/