文化庁の文化審議会は16日、江戸時代の伊藤若冲の「動植綵絵(三十幅)」や、鎌倉時代の元寇を描いた「蒙古襲来絵詞(二巻)」など、かつて皇室が所有し、現在は国の財産として皇居にある三の丸尚蔵館が収蔵する5件(絵画4件、書跡1件)を国宝に指定するよう文部科学大臣に答申した。官報告示後に、美術工芸品の国宝は902件となる。
「動植綵絵」は若冲が40歳を過ぎたころから約10年かけて描いてきた作品で、京都・相国寺に寄進した大連作。「日本の花鳥画の到達点の一つ」で、若冲の代表作としても極めて高く評価されている。「蒙古襲来絵詞」は教科書にも取り上げられる貴重な軍記絵で、13世紀後半に起きた2度の元寇の様子をほぼ同時代に描いており、歴史的資料としても価値が高い。
そのほか、国宝指定されるのは、2頭の唐獅子が山あいを悠然と歩く安土桃山時代の狩野永徳が描いた「唐獅子図(一隻)」▽鎌倉時代の絵巻の最高峰「春日権現験記絵(二十巻)」▽書跡では、平安時代の能書家、小野道風の「書屏風土代(一巻)」--の3点。
三の丸尚蔵館の収蔵品はこれまで文化財指定の対象外として扱われており、今回が初の指定となった。文化庁は同館の収蔵品を指定していなかった理由について「宮内庁でしっかり管理されており、あえてする必要がなかった」と説明している。