平和守れるか　国連安全保障理事会

　日本（にっぽん）は今年（ことし）1月（がつ）から2年（ねん）間（かん）、国際連合（こくさいれんごう）（国連（こくれん））の重要（じゅうよう）な機関（きかん）である、安全保障理事会（あんぜんほしょうりじかい）（安保理（あんぽり））の非常任理事国（ひじょうにんりじこく）になりました。日本（にっぽん）の安保理（あんぽり）入（い）りは2016～17年（ねん）以来（いらい）、12回（かい）目（め）です。国連（こくれん）や安保理（あんぽり）には、どんな役割（やくわり）があるのでしょうか。【篠口（しのぐち）純子（じゅんこ）】

国連（こくれん）っていつできたの？

　第一次世界大戦（だいいちじせかいたいせん）後（ご）の1920年（ねん）、大規模（だいきぼ）な戦争（せんそう）を起（お）こしてしまった反省（はんせい）から、歴史（れきし）上（じょう）初（はじ）めて世界（せかい）の国々（くにぐに）の連合（れんごう）組織（そしき）、国際連盟（こくさいれんめい）が創設（そうせつ）されました。しかし、設立（せつりつ）を呼（よ）びかけたアメリカは参加（さんか）せず、日本（にっぽん）、イタリア、ドイツが脱退（だったい）。日本（にっぽん）が中国（ちゅうごく）を侵略（しんりゃく）するのを防（ふせ）ぐことができませんでした。第二次世界大戦（だいにじせかいたいせん）後（ご）の45年（ねん）10月（がつ）、国際連盟（こくさいれんめい）に代（か）わって国際連合（こくさいれんごう）が創設（そうせつ）されました。本部（ほんぶ）はアメリカ・ニューヨークに置（お）かれました。加盟国（かめいこく）は、当初（とうしょ）は51か国（こく）でしたが現在（げんざい）は193か国（こく）です。日本（にっぽん）は56年（ねん）に加盟（かめい）しました。

　国連（こくれん）の主（おも）な目的（もくてき）は、世界（せかい）の平和（へいわ）を守（まも）ることです。主（おも）な機関（きかん）は、全（ぜん）加盟（かめい）国（こく）によって構成（こうせい）され、各国（かっこく）が1票（ぴょう）の投票権（とうひょうけん）を持（も）つ総会（そうかい）▽平和（へいわ）と安全（あんぜん）の問題（もんだい）を話（はな）し合（あ）う安全保障理事会（あんぜんほしょうりじかい）▽経済社会理事会（けいざいしゃかいりじかい）▽信託統治理事会（しんたくとうちりじかい）（休止中（きゅうしちゅう））▽国際司法裁判所（こくさいしほうさいばんしょ）▽事務局（じむきょく）――の六（むっ）つです。

安全保障（あんぜんほしょう）理事会（りじかい）は何（なに）をするの？

　国連（こくれん）で特（とく）に中心（ちゅうしん）的（てき）な役割（やくわり）を担（にな）っているのが「安全保障理事会（あんぜんほしょうりじかい）」です。5か国（こく）の常任理事国（じょうにんりじこく）、10か国（こく）の非常任理事国（ひじょうにんりじこく）の合（あ）わせて15の理事国（りじこく）で構成（こうせい）されています。

　国連（こくれん）の憲法（けんぽう）ともいえる「国連憲章（こくれんけんしょう）」では、安保理（あんぽり）は加盟国（かめいこく）に代（か）わって「国際（こくさい）の平和（へいわ）及（およ）び安全（あんぜん）の維持（いじ）」に責任（せきにん）を負（お）うと定（さだ）められています。例（たと）えば、紛争（ふんそう）地域（ちいき）へのPKO（平和維持活動（へいわいじかつどう））部隊（ぶたい）の派遣（はけん）を決（き）めたり、多国籍軍（たこくせきぐん）による武力行使（ぶりょくこうし）を認（みと）めたり、平和（へいわ）を脅（おびや）かす国（くに）に対（たい）する制裁（せいさい）を決（き）めたりできます。国連総会（こくれんそうかい）の決議（けつぎ）には法的（ほうてき）な拘束（こうそく）力（りょく）はありません。全（すべ）ての加盟国（かめいこく）が従（したが）う義務（ぎむ）がある決議（けつぎ）を出（だ）せるのは、国連（こくれん）の機関（きかん）の中（なか）で安保理（あんぽり）だけです。

常任（じょうにん）理事国（りじこく）って？

　常任理事国（じょうにんりじこく）は、第二次世界大戦（だいにじせかいたいせん）の戦勝国（せんしょうこく）を中心（ちゅうしん）に、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア（ソ連（れん）から引（ひ）き継（つ）ぐ）、中国（ちゅうごく）の5か国（こく）で構成（こうせい）されています。各（かく）理事国（りじこく）は「拒否権（きょひけん）」という特別（とくべつ）な権利（けんり）を持（も）っています。5か国（こく）のうち1か国（こく）でも反対（はんたい）すると、決定（けってい）を阻止（そし）できます。

　戦後（せんご）は、アメリカを中心（ちゅうしん）とする西側（にしがわ）の資本主義陣営（しほんしゅぎじんえい）と、ソ連（れん）（ロシアなどの前身（ぜんしん））を中心（ちゅうしん）とする東側（ひがしがわ）の社会主義陣営（しゃかいしゅぎじんえい）が対立（たいりつ）し、「冷戦（れいせん）」と呼（よ）ばれる時代（じだい）が続（つづ）きました。アメリカやソ連（れん）が拒否権（きょひけん）を使（つか）い、安保理（あんぽり）がまとまらないことがしばしばありました。近（きん）年（ねん）はロシアと中国（ちゅうごく）が目立（めだ）ちます。拒否権（きょひけん）を使（つか）ったのは、2013年（ねん）以降（いこう）の10年（ねん）間（かん）で、ロシア23回（かい）▽中国（ちゅうごく）9回（かい）▽アメリカ3回（かい）――です。昨（さく）年（ねん）はウクライナ侵攻（しんこう）を巡（めぐ）る決議（けつぎ）などでロシアが単独（たんどく）で3回（かい）使（つか）いました。

非常任理事国（ひじょうにんりじこく）はどうやって決（き）まるの？

　非常任理事国（ひじょうにんりじこく）の任期（にんき）は2年（ねん）です。10か国（こく）のうち毎（まい）年（とし）半数（はんすう）の5か国（こく）が改選（かいせん）されます。非常任理事国（ひじょうにんりじこく）は拒否権（きょひけん）を持（も）ちません。

　国連総会（こくれんそうかい）で選出（せんしゅつ）され、3分（ぶん）の2以上（いじょう）の賛成（さんせい）で当選（とうせん）します。地域別（ちいきべつ）に割（わ）り当（あ）てられ、アフリカ3か国（こく）、アジア・太平洋（たいへいよう）2か国（こく）、東（ひがし）ヨーロッパ1か国（こく）、ラテンアメリカ・カリブ2か国（こく）、西（にし）ヨーロッパその他（ほか）2か国（こく）が選（えら）ばれます。アルバニア、ブラジル、ガボン、ガーナ、アラブ首長（しゅちょう）国（こく）連邦（れんぽう）の任期（にんき）は2023年（ねん）末（まつ）までです。日本（にっぽん）、スイス、マルタ、エクアドル、モザンビークの任期（にんき）は24年（ねん）末（まつ）までです。日本（にっぽん）が非常任理事国（ひじょうにんりじこく）に選（えら）ばれるのは12回（かい）目（め）で、加盟国（かめいこく）の中（なか）で最多（さいた）です。日本（にっぽん）は安保理（あんぽり）の見直（みなお）しを求（もと）め、常任理事国（じょうにんりじこく）に入（はい）ることを目指（めざ）しています。

安保理（あんぽり）の改革（かいかく）を求（もと）める声（こえ）もあるよ

　昨（さく）年（ねん）2月（がつ）、ロシアがウクライナに侵攻（しんこう）し、安保理（あんぽり）ではロシア軍（ぐん）の撤退（てったい）を求（もと）める決議（けつぎ）案（あん）や、一方（いっぽう）的（てき）な併合（へいごう）を非難（ひなん）する決議案（けつぎあん）を出（だ）しましたが、ロシアが拒否権（きょひけん）を使（つか）い、否決（ひけつ）されました。国際社会（こくさいしゃかい）の平和（へいわ）の維持（いじ）を担（にな）う安保理（あんぽり）がうまく機能（きのう）せず、国連総会（こくれんそうかい）では各国（かっこく）から改革（かいかく）を求（もと）める意見（いけん）が増（ふ）えました。

　安保理（あんぽり）改革（かいかく）は1965年（ねん）に一度（いちど）実現（じつげん）し、非常任理事国（ひじょうにんりじこく）が6か国（こく）から現在（げんざい）の10か国（こく）に増（ふ）えました。日本（にっぽん）、ドイツ、インド、ブラジルの4か国（こく）は、常任理事国（じょうにんりじこく）と非常任理事国（ひじょうにんりじこく）を増（ふ）やし、新（あたら）しい常任理事国（じょうにんりじこく）は15年（ねん）間（かん）は拒否権（きょひけん）を使（つか）わない案（あん）を出（だ）しています。韓国（かんこく）など12か国（こく）の案（あん）は非常任理事国（ひじょうにんりじこく）だけを増（ふ）やす、というものです。アメリカは日本（にっぽん）が常任理事国（じょうにんりじこく）になるのを支持（しじ）する一方（いっぽう）、中国（ちゅうごく）は非常（ひじょう）に警戒（けいかい）しています。安保理（あんぽり）改革（かいかく）には国連憲章（こくれんけんしょう）の改正（かいせい）が必要（ひつよう）で、国連総会（こくれんそうかい）で3分（ぶん）の2以上（いじょう）の賛成（さんせい）、全（ぜん）常任理事国（じょうにんりじこく）を含（ふく）む加盟国（かめいこく）の3分（ぶん）の2以上（いじょう）の批准（ひじゅん）（国（くに）としての最終（さいしゅう）的（てき）な同意（どうい））が必要（ひつよう）となります。