東日本大震災から11年　津波、避難は早く「より高く」

　2011年（ねん）3月（がつ）11日（にち）、東日本大震災（ひがしにほんだいしんさい）が発生（はっせい）しました。地震（じしん）の後（あと）の津波（つなみ）で家（いえ）が流（なが）され、多（おお）くの人（ひと）が亡（な）くなりました。過去（かこ）にも日本（にっぽん）は何度（なんど）も津波（つなみ）の被害（ひがい）に遭（あ）っています。津波（つなみ）とは、どんなものでしょうか。【篠口（しのぐち）純子（じゅんこ）】

どれくらい大（おお）きい地震（じしん）だったの？

　2011年（ねん）3月（がつ）11日（にち）午後（ごご）2時（じ）46分（ぷん）、三陸沖（さんりくおき）を震源（しんげん）にマグニチュード9・0の地震（じしん）が発生（はっせい）しました。これは日本（にっぽん）の観測史上（かんそくしじょう）最大（さいだい）の地震（じしん）でした。

　宮城県栗原市（みやぎけんくりはらし）で最大（さいだい）震度（しんど）7を記録（きろく）し、北海道（ほっかいどう）、東北地方（とうほくちほう）から関東地方（かんとうちほう）にかけての太平洋（たいへいよう）沿岸（えんがん）を津波（つなみ）が襲（おそ）いました。特（とく）に被害（ひがい）が大（おお）きかったのは、岩手県（いわてけん）・宮城県（みやぎけん）・福島県（ふくしまけん）です。高（たか）さ10メートルを超（こ）える大津波（おおつなみ）が襲（おそ）いました。災害関連死（さいがいかんれんし）を含（ふく）む死者（ししゃ）・行方不明（ゆくえふめい）者（しゃ）は約（やく）2万（まん）2200人（にん）（21年（ねん）3月（がつ）現在（げんざい））、約（やく）12万戸（まんこ）が全壊（ぜんかい）しました。阪神大震災（はんしんだいしんさい）（1995年（ねん））では犠牲者（ぎせいしゃ）のほとんどが建物（たてもの）の倒壊（とうかい）や家具（かぐ）の転倒（てんとう）による圧死（あっし）でしたが、東日本大震災（ひがしにほんだいしんさい）では約（やく）90％が津波（つなみ）による水死（すいし）でした。

津波（つなみ）はどうやって起（お）きるの？

　海底（かいてい）下（か）で大（おお）きな地震（じしん）が起（お）きると、海（うみ）の底（そこ）が沈（しず）んだり、盛（も）り上（あ）がったりします。そのため海水（かいすい）が大（おお）きく上下（じょうげ）し、巨大（きょだい）な波（なみ）となって周（まわ）りに広（ひろ）がっていきます。これが津波（つなみ）です。ふだんの波（なみ）とは違（ちが）い、海水（かいすい）全体（ぜんたい）が巨大（きょだい）な水（みず）のかたまりとなって押（お）し寄（よ）せてきます。「津波（つなみ）の前（まえ）には潮（しお）が引（ひ）く」という言（い）い伝（つた）えがありますが、必（かなら）ずしもそうではありません。また、弱（よわ）い地震（じしん）でもゆっくり長（なが）い時間（じかん）揺（ゆ）れると、大（おお）きな津波（つなみ）が起（お）きることもあります。さらに、いったん波（なみ）がひいても津波（つなみ）は繰（く）り返（かえ）し襲（おそ）い、第（だい）1波（ぱ）よりも第（だい）2波（は）、第（だい）3波（ぱ）の方（ほう）が高（たか）いこともあります。

　1月（がつ）に南太平洋（みなみたいへいよう）のトンガ沖（おき）で海底火山（かいていかざん）が噴火（ふんか）し、約（やく）8000キロメートルも離（はな）れた日本列島（にほんれっとう）に高（たか）さ1メートルを超（こ）す津波（つなみ）をもたらしました。その原因（げんいん）の一（ひと）つは、「衝撃波（しょうげきは）」だったと言（い）われています。爆発（ばくはつ）によって生（しょう）じた衝撃波（しょうげきは）が大気（たいき）を伝（つた）わり、海（うみ）の波（なみ）の伝（つた）わる速（はや）さと一致（いっち）する「共鳴（きょうめい）」を起（お）こし、日本（にっぽん）に津波（つなみ）を発生（はっせい）させた可能性（かのうせい）があります。

津波（つなみ）の威力（いりょく）はどれくらい？

　津波（つなみ）は、水深（すいしん）が深（ふか）いほど速（はや）くなる性質（せいしつ）があり、水深（すいしん）4000～5000メートルの沖合（おきあい）では時速（じそく）700～800キロメートルとジェット機（き）並（な）みの速（はや）さで伝（つた）わります。沿岸（えんがん）に近（ちか）づき水深（すいしん）が浅（あさ）くなるにつれ速度（そくど）は遅（おそ）くなりますが、後（あと）からくる津波（つなみ）が次々（つぎつぎ）と重（かさ）なるので急激（きゅうげき）に高（たか）さが増（ま）します。遅（おそ）くなるといっても時速（じそく）35キロメートルぐらいと自動車（じどうしゃ）並（な）みの速度（そくど）です。津波（つなみ）を見（み）てから避難（ひなん）するのでは、間（ま）に合（あ）いません。

　高（たか）さ0・2～0・3メートル（20～30センチメートル）程度（ていど）の津波（つなみ）で、人（ひと）は巻（ま）き込（こ）まれてしまうおそれがあります。ひざくらいの高（たか）さでも流（なが）れが速（はや）ければ非常（ひじょう）に危険（きけん）です。陸（りく）に押（お）し寄（よ）せた波（なみ）は海（うみ）に戻（もど）る時（とき）、建物（たてもの）や漂流物（ひょうりゅうぶつ）を沖合（おきあい）に引（ひ）きずり込（こ）みます。

どこへ避難（ひなん）すればいいの？

　気象庁（きしょうちょう）は地震（じしん）の発生（はっせい）から3分（ぷん）を目標（もくひょう）に、大津波警報（おおつなみけいほう）、津波警報（つなみけいほう）、津波注意報（つなみちゅういほう）を発表（はっぴょう）します。マグニチュード8を超（こ）えるような巨大地震（きょだいじしん）の場合（ばあい）、地震（じしん）の規模（きぼ）をすぐに求（もと）めることができないため、予想（よそう）される津波（つなみ）の高（たか）さを「巨大（きょだい）」や「高（たか）い」という言葉（ことば）で発表（はっぴょう）し、非常事態（ひじょうじたい）であることを伝（つた）えます。警報（けいほう）が発表（はっぴょう）されたら沿岸（えんがん）部（ぶ）や川（かわ）沿（ぞ）いにいる人（ひと）は、すぐに高台（たかだい）や避難（ひなん）ビルなどへ避難（ひなん）を始（はじ）めることが重要（じゅうよう）です。東日本大震災（ひがしにほんだいしんさい）では約（やく）30分（ぷん）後（ご）に津波（つなみ）が襲（おそ）いました。

　津波（つなみ）は、地形（ちけい）によって高（たか）くなることもあります。地形（ちけい）の特徴（とくちょう）を知（し）り、「より遠（とお）く」ではなく「より高（たか）い」ところを目指（めざ）して逃（に）げることが大切（たいせつ）です。ほとんどの自治体（じちたい）では、浸水（しんすい）が予想（よそう）される区域（くいき）や避難場所（ひなんばしょ）を示（しめ）したハザードマップを提供（ていきょう）しています。ハザードマップで、自宅（じたく）や学校（がっこう）の周辺（しゅうへん）などで津波（つなみ）に襲（おそ）われるおそれのある場所（ばしょ）を確認（かくにん）しておきましょう。避難場所（ひなんばしょ）や避難経路（ひなんけいろ）を確認（かくにん）しながら、実際（じっさい）に歩（ある）いてみましょう。一人（ひとり）でいる時（とき）に地震（じしん）が発生（はっせい）する場合（ばあい）もあります。家族（かぞく）と待（ま）ち合（あ）わせ場所（ばしょ）や非常時（ひじょうじ）の連絡（れんらく）方法（ほうほう）などについて話（はな）し合（あ）っておきましょう。

過去（かこ）にも津波（つなみ）の被害（ひがい）はあった？

　日本（にっぽん）は歴史（れきし）上（じょう）、何度（なんど）も津波（つなみ）に襲（おそ）われています。1896年（ねん）の明治三陸地震（めいじさんりくじしん）では、津波（つなみ）によって約（やく）2万（まん）2000人（にん）が亡（な）くなりました。1960年（ねん）のチリ地震（じしん）ではマグニチュード9・5の地震（じしん）が南（みなみ）アメリカのチリ近海（きんかい）で発生（はっせい）し、津波（つなみ）が1日（にち）かけて三陸海岸（さんりくかいがん）まで押（お）し寄（よ）せ、大（おお）きな被害（ひがい）が出（で）ました。

　83年（ねん）に秋田県（あきたけん）沖（おき）で発生（はっせい）した日本海中部地震（にほんかいちゅうぶじしん）では、男鹿市（おがし）の海岸（かいがん）に遠足（えんそく）に来（き）ていた小学生（しょうがくせい）13人（にん）が津波（つなみ）で亡（な）くなりました。93年（ねん）の北海道南西沖地震（ほっかいどうなんせいおきじしん）では、震源地（しんげんち）に近（ちか）い奥尻島（おくしりとう）に地震（じしん）発生（はっせい）から2～3分（ぷん）後（ご）に津波（つなみ）が押（お）し寄（よ）せたとみられます。

　海外（かいがい）では、2004年（ねん）にインドネシア・スマトラ島（とう）アチェ州（しゅう）沖（おき）でマグニチュード9・1の大地震（おおじしん）が発生（はっせい）し、インド洋（よう）沿岸（えんがん）に津波（つなみ）が押（お）し寄（よ）せました。死者（ししゃ）・行方不明（ゆくえふめい）者（しゃ）は計（けい）約（やく）23万人（まんにん）に上（のぼ）ります。＜え・内山大助＞