元スキージャンプ日本代表・原田雅彦さん　挫折が人を育てる

　１９９８年（ねん）の長野（ながの）冬季（とうき）オリンピック（五輪（ごりん））のスキージャンプ団体（だんたい）で、日本（にっぽん）は金（きん）メダルを獲得（かくとく）しました。この時（とき）に日本代表（にっぽんだいひょう）を支（ささ）えたテストジャンパーの姿（すがた）を描（えが）く映画（えいが）「ヒノマルソウル～舞台裏（ぶたいうら）の英雄（えいゆう）たち～」の全国（ぜんこく）公開（こうかい）が予定（よてい）されています。日本代表（にっぽんだいひょう）の一人（ひとり）だった原田雅彦（はらだまさひこ）さんに話（はなし）を聞（き）きました。【長岡（ながおか）平助（へいすけ）】

　Ｑ　映画（えいが）の主人公（しゅじんこう）は、原田（はらだ）さんのライバル・西方（にしかた）仁也（じんや）さんです。

　原田（はらだ）さん　私（わたし）と西方（にしかた）は子（こ）どものころからの付（つ）き合（あ）いで、長（なが）く競技（きょうぎ）をともにしてきました。映画（えいが）では西方（にしかた）の実家（じっか）の民宿（みんしゅく）が、そのまま撮影（さつえい）に使（つか）われていておもしろかったです。合宿（がっしゅく）などで私（わたし）たちもお世話（せわ）になった場所（ばしょ）で、とてもなつかしかったです。

　Ｑ　原田（はらだ）さんも映画（えいが）の中（なか）で描（えが）かれています。

　原田（はらだ）さん　照（て）れくさかったけれど、当時（とうじ）の自分（じぶん）の気持（きも）ちが表現（ひょうげん）されていて、うれしかったですね。

　Ｑ　迫力（はくりょく）あるジャンプシーンが印象的（いんしょうてき）です。

　原田（はらだ）さん　スキーを翼（つばさ）に見立（みた）て、人（ひと）が１００メートル以上（いじょう）も飛（と）ぶのがジャンプです。その迫力（はくりょく）や快感（かいかん）がよく描（えが）かれてます。現役（げんえき）を引退（いんたい）して１５年（ねん）ほどたちますが、長野（ながの）のころを思（おも）い出（だ）しました。

　Ｑ　ジャンプ競技（きょうぎ）を始（はじ）めた時（とき）、怖（こわ）くありませんでしたか。

　原田（はらだ）さん　初（はじ）めて飛（と）んだのは１０歳（さい）の時（とき）でした。好奇心（こうきしん）からです。最初（さいしょ）はもちろん怖（こわ）かったです。けれど１回（かい）飛（と）ぶと楽（たの）しさが勝（まさ）りました。もちろん当時（とうじ）は五輪（ごりん）に出（で）るなど思（おも）ってもみません。もっと長（なが）く、もっと遠（とお）くへという思（おも）いだけでした。現役（げんえき）が終（お）わるまで、その思（おも）いが強（つよ）かったですね。

　Ｑ　映画（えいが）の見（み）どころの一（ひと）つに、代表（だいひょう）の座（ざ）をめぐる感情（かんじょう）の揺（ゆ）れがあります。

　原田（はらだ）さん　選手（せんしゅ）たちは仲間（なかま）でありライバルです。負（ま）けたくない、自分（じぶん）が一番（いちばん）になりたいという思（おも）いがないと競技（きょうぎ）は続（つづ）きません。そんな選手（せんしゅ）が集（あつ）まったからこそ、チームが強（つよ）くなったのだと思（おも）います。

　Ｑ　長野五輪（ながのごりん）では、悪天候（あくてんこう）により１回（かい）目（め）のジャンプで原田（はらだ）さんが失速（しっそく）してメダルが危（あや）ぶまれました。

　原田（はらだ）さん　２回（かい）目（め）で取（と）り返（かえ）すしかないと思（おも）いました。でも取（と）り返（かえ）しがつかないくらいの飛距離（ひきょり）だったので動揺（どうよう）しました。その時（とき）に支（ささ）えてくれたのがチームのメンバーであり、テストジャンパーたちでした。だから金（きん）メダルが決（き）まった後（あと）に「おれじゃないよ、みんななんだ」と声（こえ）がもれました。

　Ｑ　小学生（しょうがくせい）にメッセージをお願（ねが）いします。

　原田（はらだ）さん　挫折（ざせつ）は人（ひと）それぞれあります。それを糧（かて）に次（つぎ）の段階（だんかい）に上（あ）がっていくことが素晴（すば）らしいと私（わたし）は思（おも）います。人間（にんげん）はそうやって成長（せいちょう）していくものです。負（ま）けなければ道（みち）は必（かなら）ずできます。

プロフィル

　１９６８年（ねん）生（う）まれ、北海道出身（ほっかいどうしゅっしん）。９４年（ねん）のリレハンメル冬季（とうき）五輪（ごりん）のスキージャンプ団体（だんたい）で銀（ぎん）メダル、９８年（ねん）の長野（ながの）冬季（とうき）五輪（ごりん）のラージヒルで銅（どう）メダル、団体（だんたい）で金（きん）メダル。現在（げんざい）は雪印（ゆきじるし）メグミルクスキー部（ぶ）の総監督（そうかんとく）。