中国・北京で1989年に民主化を求めた学生らが武力によって弾圧された「天安門事件」が起きてから、4日で30年を迎えました。情報が厳しく統制されている中国で事件が語られることはほとんどありませんが、台湾や海外では中国の民主化を目指す運動が続いています。
中国の国内では、天安門事件について学校やメディアは取り上げず、犠牲者の遺族も高齢化が進み、記憶の風化が心配されています。若い世代が事件の情報にふれる機会はほぼありません。一部はインターネットの検閲(公権力が表現の内容をチェックすること)を避けるソフトを使い、当時の報道などに接していますが、「話題にすることはない」(北京の大学生)。犠牲者を追悼する言葉や行動は、監視や取り締まりの対象となっています。
中国では日本との戦争の後、共産党が政権をにぎり、1949年に中華人民共和国が成立。台湾に逃れた国民党が中華民国を移しました。中国の政治は共産党の一党独裁で進められ、共産党の方針に反することは認められません。共産党は弾圧が正しかったとする態度を崩しておらず、参加者の名誉回復や真相の公表を求める声に応じる気配はありません。
台湾や海外から運動
イギリスの植民地だった香港は97年に中国へ返還されましたが、民主化を目指す運動が続いてきました。しかし、民主派や反中国派への圧力が強まり、活動が難しくなっています。
台湾・台北市では5月21日、天安門事件で男性が戦車の前に立ちはだかった場面を巨大な風船で再現した作品がお目見えしました。民主化運動のシンボル「民主の女神」像の複製や当時の新聞記事などの展示も始まり、開幕式に元学生リーダーらが出席しました。事件で戦車に両足を踏みつぶされた方政さん(52)=アメリカ在住=は車いす姿で登場し、「台湾が放つ民主主義の光が、ついには中国を輝かせることを願っている」と訴えました。
天安門事件の元学生リーダーらは多くがアメリカなどに亡命しました。海外から中国の民主化を目指す運動を続けている人たちもいます。