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「失われた30年」と言われるニッポン。社会に横たわる難題はなぜ解決されないのか。毎日新聞の調査報道がその本質に深く迫ります。

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水遊び、内科検診…園児の裸画像、ポルノ流用横行、AI用データにも

園児の画像がポルノサイトなどに無断転載されたり、ネット掲示板で情報共有されたりしている
園児の画像がポルノサイトなどに無断転載されたり、ネット掲示板で情報共有されたりしている

 検索履歴に残る「子ども 裸」の文字――。保育園や幼稚園が水遊びなどで撮影し、インターネット上で公開した園児の画像がポルノサイトに転載されたり、人工知能(AI)の学習用データに取り込まれたりしている。園側が削除しても、次々と複製・転載されて対応が追いつかない。ネット空間で子どもの画像が標的にされる実態を追った。

「まさか…」取材に驚く保育園

 「未就学児の裸なら幼稚園のブログにある」

 「お気に入りの画像はアーカイブ(保存)して」

 小児性愛者らが集まるネット掲示板で、匿名の投稿者らが絶え間なく情報交換している。

 書き込まれたURLを記者が確認すると、保育園のブログに水遊びをしている裸の子どもたちの写真が載っており、顔も判別できる状態だった。

 2023年9月、記者が取材を申し込むと、園長は電話口で絶句した。「(掲示板の記載は)把握していなかった。今初めて聞いた」。記者の指摘を受け、保育園は裸の画像を載せたページを削除し、園児の保護者に連絡して状況を説明した。

 だが、それで問題が解消したわけではない。何者かによって、他のサイトに画像が転載されていたのだ。

 保育園は、児童ポルノなどの有害情報の排除に取り組む一般社団法人「セーファーインターネット協会」に相談。同協会がプロバイダーに要請し、転載された画像は削除された。

 さらにブログの一部は、ウェブページを複製・保存する「ウェイバックマシン」という外部サイトにも保存されていた。保育園が元のページを削除した後でも、URLさえ分かれば複製されたページを閲覧できる仕組みだ。

 保育園がウェイバックマシンの運営者に英文のメールで削除を求めたところ、2日後には「削除した」との返信が届いた。園が保護者に対応が完了したことを報告すると、安心した様子だったという。

 だが、一度ネット上で公開された画像がどこまで拡散しているか、完全に把握するのは難しい。匿名性の高いネット交流サービス(SNS)や、一般にはアクセスが難しい「ダークウェブ」などで流通している可能性もあるからだ。

 園長によると、ブログに画像を載せた職員は「(裸での水遊びは)子どもらしい姿だから」と考えたという。撮影や掲載について保護者の了解を得ていたものの、裸の画像であることは説明していなかった。

 「ここまでリスクがあるとは知らなかった。園児や保護者に申し訳ない」。園長は言葉を詰まらせた。

被害の実態、全国調査の結果は

 毎日新聞が市民団体「子どもを児童ポルノから守る会」(守る会)の協力を得て、ネット上で画像を検索するなどして調査した…

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