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センバツ高校野球2024

第96回選抜高校野球大会(春の甲子園)。全試合ワンプレー速報、スコアブック掲載。出場校別ニュースも。

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春にかがやく―2024センバツ

星稜 壁越え続ける「野球小僧」 夏は帰省返上、神宮制す /石川

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困難を乗り越えて昨秋の明治神宮野球大会を制し、マウンドに集まって喜ぶ星稜の選手たち=神宮球場で2023年11月20日、北山夏帆撮影 拡大
困難を乗り越えて昨秋の明治神宮野球大会を制し、マウンドに集まって喜ぶ星稜の選手たち=神宮球場で2023年11月20日、北山夏帆撮影

 昨秋の明治神宮大会を32年ぶりに制し、今春センバツには優勝候補の一番手として臨む星稜(石川)。就任1年目の山下智将監督(42)は「神宮で優勝できるなんて思っていなかった。県大会初戦も大丈夫かな、と思うくらい」と率直に振り返る。「ただ……」と付け加えて語り始めた光景に、指揮官も驚く強さの源があった。

 昨年の8月10日。2年連続出場した甲子園初戦の2回戦で創成館(長崎)に敗れた。11日は星稜への移動日で、お盆期間に入り県外出身の選手もいるため、山下監督は4日間の練習オフ日を設けると選手に伝えた。

 自主練習をするのは自由だったため、山下監督は12日、グラウンドに顔を出した。すると、大阪出身の芦硲晃太主将(2年)や甲子園で登板したエース左腕の佐宗翼投手(同)ら2年生全員が集まり、練習を始めたのだ。

 「誰一人帰省していなかった。毎年1人2人はいるが、この学年は野球小僧ばかり。これは強くなるんやろうなと思った」と山下監督。竹下史紘副主将(2年)は「2年連続で甲子園の初戦で負けた。全国で勝つためには練習しかないという思いを皆が持っていた」と強調する。前チームより非力な選手が多いが、強い向上心こそが現チームの魅力だ。

 迎えた昨秋の公式戦。「野球小僧」たちは野球漫画のように困難を乗り越え、一戦ごとに成長を遂げた。

 石川県大会を制して出場した10月の北信越大会は、佐宗投手や芦硲主将ら複数の主力が体調不良で準々決勝までの2試合を欠場。だが、背番号11の1年生右腕・道本想投手が好投した。本職は内野手ながら外野手で出場した中島幹大選手(2年)は先発した2試合で計7打数3安打2打点と打線の穴を埋め、敦賀気比(福井)との決勝では延長十回に代打でサヨナラ打も放った。「結果的にチーム力を底上げできた」と山下監督。「けがの功名」と言える新戦力の台頭だった。

 明治神宮大会では1回戦で優勝候補の広陵(広島)との打撃戦を7―6で制して勢いに乗り、作新学院(栃木)などの難敵を次々と降して秋の日本一に輝いた。山下監督は「県大会初戦と神宮の決勝とでは見違えるくらいのチームに成長した。決勝後、もう1試合やりたいなと思ったくらい」と目を細める。神宮大会決勝で1失点完投し、自己最速を143キロに更新した佐宗投手は「1点を取られた悔しい気持ちの方が大きかった」。優勝してもなお、反省。だから進歩が止まらない。

 元日に石川県で発生した能登半島地震。地元の金沢市でも震度5強を記録し、野球部の始動は当初予定の4日から11日に遅れた。さらに、新型コロナウイルスの部内での流行や大雪により、1月中は全体練習がほとんどできなかった。

 困難続きだ。それでも、芦硲主将は「勇気と元気を与えられるかは分からないが、甲子園で一生懸命プレーする姿を見せられれば」。野球ができることに感謝し、悲願の甲子園初優勝へと歩み続ける。【大東祐紀】

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