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藤井聡太

2016年に将棋棋士としてデビューし、21歳2カ月でついに史上初8冠の偉業達成――。「天才」藤井聡太名人の歩みをクローズアップ。

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渡辺名人、悲観の先に幻の好手 名人戦第2局観戦記

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浮月楼「明輝館」の前で記念撮影に臨む挑戦者の藤井聡太王将(左)と渡辺明名人=静岡市葵区で2023年4月26日午後5時2分、手塚耕一郎撮影
浮月楼「明輝館」の前で記念撮影に臨む挑戦者の藤井聡太王将(左)と渡辺明名人=静岡市葵区で2023年4月26日午後5時2分、手塚耕一郎撮影

 藤井聡太王将が第1局を制した約3週間後の4月27、28の両日に静岡市の浮月楼で指された第81期名人戦七番勝負の第2局。終盤で香車を取り損ねて形勢を悲観した渡辺明名人は、直後に潜んでいた好手に気付かず、惜しい星を落とした。名人戦で記録係を務めたことがあるという藤本裕行さんの観戦記で、両者の膨大な読みの一端を披露する。

第1譜(1―8)

▲2六歩  △3四歩1 ▲7六歩 △4四歩1

▲2五歩  △3三角  ▲4八銀  △9四歩(第1図)

(持ち時間各9時間 消費▲0分△2分)

浮月楼での名人戦

 渡辺明名人に藤井聡太王将が挑戦する七番勝負は、藤井の先勝で第2局を迎えた。舞台は静岡市の浮月楼である。

 浮月楼と聞いて、ピンときた方はかなりの将棋ファンと言えるだろう。第76期から毎年、A級順位戦最終9回戦が行われている。

 将棋界の一番長い日とは別に、「名人戦七番勝負第0局」のフレーズを掲げたこともある。そこに、関係者の熱意を感じるのだ。

 今年はこの名人戦第2局と、囲碁の本因坊戦第1局も開催されることになった。囲碁と将棋を愛好していた徳川家康が取り持つ縁でもある。

 対局前日に開かれた前夜祭は盛大で、関係者やファンが120人ほど集まった。

 藤井は「タイトル戦に初めて出たのが2020年。このような前夜祭を開催していただく機会が今までなかったので、今日は緊張しています」とあいさつ。

 「緊張しています」で笑いを誘うところに、藤井のおちゃめな部分を見たような気がした。

 翌4月27日の午前9時。立会人の青野照市九段の合図で対局が始まった。藤井は引き締まった表情で、当然ながら前日とは違う。

 盤上は後手の渡辺が4手目に角道を止めて、穏やかな出だしとなった。

第2譜(9―16)

▲9六歩7 △3二銀1 ▲3六歩  △8四歩

▲7七角2 △8五歩2 ▲8八銀3 △5四歩3(第2図)

(持ち時間各9時間 消費▲12分△8分)

戦型予想

 前夜祭の話を続ける。

 渡辺は…

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