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なんだか変だなあ……怖いなあ……嫌だなあ……。
怪談家・稲川淳二さんの語りはゾクッとするほど恐ろしいのに、どこか優しさを感じさせる。御年75歳で、恒例の全国ツアーは31年目に突入した。長年にわたる活動の原動力には、亡き次男の存在がある。
「怪談って、心を伝えてるんですよ。『こんな(恐ろしげな)しゃべり方をしないと』って勘違いしてる人がいるけど、大切なのは気持ち。自分が夢中になって、お客さんと楽しむのが一番なんですね」。熱っぽく、語り手の極意を口にする。
工業デザイナーとして活動していた1970年代半ば、深夜ラジオのパーソナリティーに抜てきされ、タレントとして人気に火がついた。93年から「怪談ナイト」と銘打った全国ツアーを毎年開催し、今年で1000公演を超える。独特の擬音や言葉の緩急を操った小気味よい語りは、聞き手をつかんで離さない。
「優しい怪談」に込められた思い
稲川怪談は恐怖だけでなく、優しさや生きることへの希望が込められる作品が多い。
例えば、名作とされる「紫色のワンピース」には、亡き恋人を思い続ける男性と、彼の人生をそっと後押しする恋人の霊が登場する。
怪談とは…
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