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岸家の代替わり秘話 一族の葛藤と決断 消えた安倍家/1

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衆院本会議に臨み、開会前に実弟の自民党の岸信夫氏(右)と言葉を交わす安倍晋三首相(当時)=国会内で2015年4月21日、藤井太郎撮影
衆院本会議に臨み、開会前に実弟の自民党の岸信夫氏(右)と言葉を交わす安倍晋三首相(当時)=国会内で2015年4月21日、藤井太郎撮影

 2022年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件を受け、政界から「安倍家」の名前が消える。水面下では、同族の岸家から安倍氏後継を迎える案も模索されていた。運命に翻弄(ほんろう)された一族の葛藤と決断を追う。 

 連載「消えた安倍家」は、全3回です。
 このほかのラインアップは次の通りです。
第2回 昭恵さんの打診 安倍か岸か…揺れた後継
第3回 前哨戦は林系が制す 巻き返し誓う安倍系

 「2区から出たい。おやじの跡を継ぎます」

 師走らしい寒い日だった。2022年12月中旬、東京・富ケ谷にある安倍晋三邸のリビング。安倍氏の母・洋子さん(94)に対し、孫の岸信千世氏(31)は静かに告げ、病身の父に代わって衆院山口2区(岩国市など)から立候補する意思を伝えた。洋子さんは岸信介元首相の娘で「政界のゴッドマザー」と呼ばれることもある。信千世氏の隣には、洋子さんの三男で父の岸信夫前防衛相(63)も座り、3人でテーブルを囲んでいた。

 安倍氏死去に伴う翌23年4月の衆院山口4区(下関市、長門市)補選をめぐり、自民党の公認候補選びが難航していた。安倍後援会では、2区の信夫氏の長男・信千世氏を、安倍氏の後継として4区に迎えたいという意見が強かった。「なんとか『安倍』の名前を残すため、信千世さんが養子に入り、安倍姓を名乗って安倍さんの政治信条を引き継いでほしい」という声もあった。

 たしかに、信千世氏が信夫氏の跡を継いで2区から立候補すれば、安倍・岸一族からの4区補選の…

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