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被告は「親方」、取り込まれた刑務官 塀の中の「癒着」の実態

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収容中の被告への金品提供で刑務官が懲戒処分を受けたさいたま拘置支所=さいたま市浦和区高砂3で2022年1月11日、遠藤浩二撮影
収容中の被告への金品提供で刑務官が懲戒処分を受けたさいたま拘置支所=さいたま市浦和区高砂3で2022年1月11日、遠藤浩二撮影

 さいたま拘置支所(さいたま市)の刑務官が2021年11月、収容中の被告に金品を渡したなどとして、停職6カ月の懲戒処分を受け、依願退職した。当事者への取材で証言を集めると、1枚の切手を渡したことから、刑務官が被告に取り込まれていった状況が浮かんだ。収容者と刑務官という特殊な関係が招いた「癒着」の実態を追った。

 取材のきっかけは、同拘置支所を管轄する川越少年刑務所が公表した懲戒処分の発表資料だ。それによると、副看守長だった男性刑務官(50)は19年2~6月、収容中の被告の求めに応じ、切手や封筒、シャンプーなどの日用品の他に、刑務官の氏名と階級が載った名簿を被告に渡した。さらに偽名を使って現金5万円を外部から差し入れた。逆に、刑務官は被告から指輪や腕時計を受け取った。

 刑務官は国家公務員のため、金品を受け取った見返りに収容者に便宜を図れば収賄罪に問われる可能性がある。同刑務所によると、指輪や腕時計を鑑定した結果、無価値と結論付けられ、収賄罪は成立しないと判断したという。刑務官は調査に「他の職員に反抗的な被告が、自分には反抗せず、面倒をみてあげたい気持ちになった」などと説明した。被告が自主申告したことから発覚し、上司5人も管理責任を問われ厳重注意などの処分を受けた。

 刑務官が被告に金品を差し入れる理由は通常ない。状況が不自然と考えた記者は、依願退職した元刑務官やその周辺の取材を進めることにした。

被告「快適に暮らしたかった」

 発表資料に元刑務官や被告の氏名は記載されていなかったが、記者と親交がある村木一郎弁護士(埼玉弁護士会)が被告の弁護人を務めていた。村木弁護士によると、被告は覚醒剤取締法違反に問われた男性(55)。さいたま地裁で21年3月に懲役2年6月の実刑判決を受け、控訴して東京拘置所に収容されていた。村木弁護士は1審で弁護人を外れたが、問題の便宜供与は1審段階で起きていた。

 面会を依頼する手紙を被告に送ると、「話してもよい」との返信があった。…

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