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(藤原書店・4840円)
「地球は平ら」反近代 生涯かけ主張
わたくし事から始める不躾(ぶしつけ)をお許し戴(いただ)くことにして、若い頃、日本に西欧科学が導入される過程を主題にした小さな本を書いたことがある。その話の筋道に忽然(こつぜん)と立ちはだかった一人の人物がいた。本書の主人公佐田介石(さたかいせき)であった。いくらか史料も集めたが、立ち入った解析は、心を残しながらできなかった。図らずも本書に出会って、心満たされる思いがした。
余り馴染(なじ)みのある人物ではないので、人物像のスケッチをしておこう。十九世紀をほぼ丸々生きた仏教徒で、滔々(とうとう)たる西欧化・文明化の嵐のなかで、仏教の須弥山(しゅみせん)説擁護の観点からの「地球」観や「地動」観の否定、あるいはランプ導入の拒否に至る様々な論点で、自らの理論をひっさげて、西欧近代に立ち向かった人物ということになる。須弥山説とはインドに発する仏教的宇宙論の一つであった。
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