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行定勲監督が考える劇場映画の未来 配信とどのように共存させるか?

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インタビューに答える映画監督の行定勲さん=東京都港区で2020年12月22日、宮武祐希撮影
インタビューに答える映画監督の行定勲さん=東京都港区で2020年12月22日、宮武祐希撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「巣ごもり」需要の高まりで、インターネットの動画配信サービスが台頭している。劇場映画はどうあるべきか。コロナ禍での新たな製作様式を模索する映画監督の行定勲さんに話を聞いた。【聞き手・岩壁峻】

 ――1回目の緊急事態宣言を受け映画の製作がストップした2020年4~5月、オンライン会議システム「Zoom(ズーム)」を使って製作した新作2本を無料公開しましたね。

 ◆2作品とも、脚本を作り始めてから2週間ほどで公開にこぎ着けた。きっかけになったのは、シンガー・ソングライターの星野源さんが20年4月に公式インスタグラムで公開した楽曲「うちで踊ろう」だ。彼が何も語らなくても、曲を通して「音楽で『おうち時間』を楽しんで」という思いが伝わってきた。同じようなことをなぜ映画人ができないのか、と悔しくなった。「俺たちにもできるはずだ」と、有志の俳優たちと企画を立てた。高良健吾さん、柄本佑さん、中井貴一さん、二階堂ふみさんら第一線の俳優が参加してくれた。みんなボランティアで、メークに衣装、小道具も自前で用意してもらった。「ビールを飲みたい人は飲んでね」というように、演技もある程度任せた。私たち製作側がすべてお膳立てするのではなく、俳優も自主的にアイデアを持ち寄って作った今回の映像を通じて、これからの映画作りの一端が見えてきた気がする。

 ズームを使った作品をすぐ公開したもう一つの目的は、コロナ禍をリアルタイムに映し出したかったからだ。高良さんや柄本さんが出演した作品は、それぞれの部屋でズームを通して飲み会をする場面がメインだ。「ズームを使って酒を飲んだ」という人々の共通の経験も、映画という形に残せば記録になる。これは2020年という時代でなければできないことだ。即時性と同時代性を強調したかった。

 ――20年9月には、有村架純さん主演のショートムービーも製作しました。

 ◆コロナ禍での本格的な映像製作は、この作品が初めてだった。スタッフは通常のショートムービー製作の人員の半分ほどの15人で、ソーシャルディスタンスも意識した。コロナ禍で恋人同士が久々に再会するという設定で、有村さんは劇中でもマスクをしている。主演の顔のほとんどが隠れた作品はなかなかないだろう。これまでとまるで違う世界にいる感覚だったが、制約がある中での撮影を経験しておくのは必要なことだと思った。一般的に、映画撮影は非常に派手な作業だ。撮影の際、「周囲に迷惑になっていないか」「静かにしよう」という意識はこれまでも持っていたが、今回のショートムービーを通してより考えるようになった。映画は社会に必要なものだと分かってもらうためにも、感染者を出さないという姿勢は常に持つべきだと考えている。

 野外での撮影は約1年ぶりだったが、ロケ地の東京・井の頭公園の木々がとてもきれいに感じ、空気もとても澄んでいるように思えた。当たり前だった日常の風景に気持ちを揺さぶられるくらい、閉塞(へいそく)した日常を過ごしてきたのだと気づかされた。

 ――コロナ禍で公開延期になった監督作品「劇場」は、映画館での公開と同時に配信サービスの「アマゾン・プライム・ビデオ」で配信しましたね。

 ◆「劇場」を含めた商業映画は、かけた製作費をどう回収するかが重要だ。当初、公開を予定していた20年4月は、コロナで社会が疲弊しており先が見えなかった。コロナの実態がよく分からない中で上映を巡る決断を迫られたが、健康被害を懸念する映画ファンに安心して見てもらう方法として配信は有用だった。映画館で公開するにしても観客が作品を見る手段を選択できる状況を作らなければ、製作者のエゴになってしまうとも考えた。

 作品は、20年7月に映画館での公開と同時にアマゾンで世界配信された。事前に「思っているより…

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