片岡鶴太郎・68歳「風貌もいい感じに変わってきたし…僕の俳優人生はこれから」 振り返る「男女7人夏物語」での大ブレイク

磯部 正和 磯部 正和

 お笑いタレント、俳優、画家、書家、ヨガ実践家とさまざまな肩書を持つ片岡鶴太郎。なかでも1980年代後半、『男女7人』シリーズや、『季節外れの海岸物語』シリーズ、『金田一耕助』シリーズなど、数々のヒット作に出演し、俳優としての地位を確固たるものにした。そんな片岡は「僕の俳優人生はこれから」と笑顔をのぞかせる。

 片岡の名が広く知れ渡ったのは、『俺たちひょうきん族』ら人気バラエティ番組での活躍だ。自身の冠バラエティなども持つなど、お笑いタレントとしてブレイクした。

 それでも本人は「実は僕は高校演劇出身なんです。ウジェーヌ・イヨネスコや別役実さんなんかをやっていた演劇青年だった。一方で、子供のころから寄席が好きだったこともあり、この世界に入るときも、役者に行くか、お笑いに行くか悩みました。そんななかバラエティに進んだのですが、どこかで俳優には……という思いは持っていたんです」と語る。

 バラエティでは“陽”は表現できるが、自身の内にある“陰”の部分はなかなか出せない。「シリアスな部分も表現したいなと思ったとき、それは芝居という世界しかなかった」と徐々に方向転換を試みる。30代に入ると明石家さんまと大竹しのぶが恋模様を演じて大ヒットし、昭和を代表するドラマになった『男女7人夏物語』で、誰にでも優しい広い心を持つ男性・大沢貞九郎を演じ、人気を博す。

 どんな傷つくようなひどいことをされても広い心で相手を包み込む貞九郎は“不死身の貞”と呼ばれ、大人気キャラになった。「『男女7人』シリーズは大きな反響がありましたね。そこから本格的にドラマに呼んでいただくようになり、『季節外れの海岸物語』シリーズや『金田一耕助』シリーズなど、とても素敵な作品に出会うことができました」。

 近年ではさらに役柄の幅を広げている。8月25日公開の最新作映画『春に散る』では、貞九郎や『季節外れの海岸物語』の圭介を思わせるような、人に寄り添い優しいキャラクターを演じたかと思えば、2020年放送の大河ドラマ『麒麟がくる』では、室町幕府政所執事・摂津晴門を演じ、非常に癖のあるキャラクターで、作品に大きなインパクトを与えた。

 「40代、50代というのが、ちょっと自分的には中途半端な時代だなと感じていたんです。でもいま68歳なのですが、この年になって、優しい役から、ちょっと狂気的なエキセントリックな役など、面白い役をいただけるようになってきています。風貌もいい感じに変わってきたし、これまでいろいろなことをやってきたからこそ、さまざまな表現が出せるのかなと感じています」

 目前に迫った70歳。片岡は「これから僕が役者としていろいろなものが出せる時期」と笑顔を見せる。「言わずとも語らずとも、その場にいるだけで存在感を出せる。そういう役者でありたい。それにはやっぱり年齢もそうですが、どう生きてきたかが重要。その意味で、実生活を充実して歩んでいかないと、絶対そういうものは出せないと思うんです」。

 たくさんの肩書を持つ片岡だからこそ、重みのある言葉だ。『春に散る』で片岡が演じた佐瀬健三は、自身のボクシングの経験が役にしみこんでいる。陰と陽を合わせ持つ片岡だからこその表現で、さらなる俳優道にまい進する。

◇映画『春に散る』は8月25日より全国ロードショー

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