声帯の不調でライブ活動終了を発表した川嶋あい「ベストな状態で歌えない自分が許せなかった」 デビューからの20年と今の思いを赤裸々に語る

黒川 裕生 黒川 裕生

シンガー・ソングライターの川嶋あいさんが、母の命日である8月20日に毎年開催してきた恒例のワンマンライブを今年で最後にすると5月に発表し、大きな反響を呼んだ。5、6年前から声帯に不調を感じるようになり、昨年手術してリハビリを重ねてきたが、思うように回復しなかったのが理由という。このほど単独インタビューに応じた川嶋さんは「苦しい決断でしたが、お金を払って来てくださるファンの皆さんにベストの状態で歌声を届けられないことが自分で許せなかった」と明かしつつ、「でもネガティブな雰囲気にしたくない。思い切り楽しんでいただけるようなライブにします」と力を込めた。

川嶋さんは2003年2月14日、 I WiSHのヴォーカルとしてデビューし、「明日への扉」が大ヒット。フジテレビ系列の恋愛観察バラエティ番組「あいのり」の主題歌として絶大な人気を博した。また「旅立ちの日に・・・」は、令和の今も卒業式の定番として世代を超えて歌い継がれている。デビュー20周年に当たる今年は2月にI WiSHの新曲を15年ぶりにリリース。6月には川嶋あい名義の原点回帰的なミニアルバム「Document」を発表するなど、精力的な活動を展開している。

苦しい選択だった「最後」のライブ

川嶋さんに「最後」となる8月20日のライブへの意気込みなどを聞いた。

「声帯の不調については、言葉ではなかなか表現しづらいんです。『この音が出ない』のような単純なことではないので。ただ、自分が思っていることが表現できなくなった…それに尽きます。そんなもどかしさを抱えながらの数年は、最初はスタッフにも相談せずに独りで抱えていたので、本当にしんどかったですね」

「少しでも良くなるなら、と手術に踏み切りましたが、残念ながら元には戻りませんでした。ずっと大切にしてきた8月20日のライブをこの状態で続けるのはファンの皆さんにも一緒にやってきたスタッフたちにも申し訳なくて。でもやっぱり、『最後にする』のはとても苦しい決断でした」

幼い頃に実母と死別した川嶋さんは、児童養護施設で育った。その後、養父母に引き取られたが、養父は10歳のときに、養母はデビュー直前の16歳のときに他界したという。養母の命日である8月20日に毎年実施してきたワンマンライブは、自身にとってもファンにとっても大切な場だ。

デビュー前から路上ライブを重ねるなど、人前で歌うことを活動の主軸に置いてきた川嶋さん。その「天使の歌声」を届ける“現場”が失われるのは、20年に及ぶキャリアにとっても極めて大きな出来事であることは想像に難くない。

「8月20日は終わりにしますが、ライブ活動自体を全て止めるわけではありません。10月には藤巻亮太さん(元レミオロメン)がオーガナイザーを務める野外フェス『Mt.FUJIMAKI』に呼んでいただいています。その後は、おそらく自分と向き合いながら、そして悩みながら活動していくことになると思いますが、まだハッキリしたことは言えなくて…すみません。新しい音源制作についても白紙の状態です。とりあえず今は8月20日とフェスに全力を尽くそうと思っています」

「これまでのライブ活動を振り返ってみると、印象深いのはやっぱり8月20日です。今まで18回開催してきたのですが、そのひとつひとつが大切で、とても特別な空間だったと思います。毎回コンセプトを決めてから、それに合ったセットリストを考えるのが恒例で。今年はいつものようにファンの皆さんに喜んでいただけるようなサプライズを交えつつ、川嶋あいの20年の歴史を総括するようなライブにしたいです」

不調を隠して歌うという選択肢はなかった

最後に、野暮を承知で、声帯の不調を明かさないまま一時的に活動休止するという選択肢はなかったのかを尋ねてみた。

「8月20日のライブでは、自分がどうしても歌いたい曲があるんです。それを完璧な状態で披露できないということを悟ったとき、これはもう続けるのは難しいかもしれない、と覚悟しました。もちろん『いや、まだ望みはあるかもしれない』『このままなにも言わずに公演をこなせるかもしれない』と希望をつないだ日々もありましたが、手術後のリハビリをこなし、思い切り歌ったときに、『やっぱり乗り越えられない』と感じました」

「そういう場合、私は即決断したいタイプです。不調を隠して『820やります』という自分はいませんでした。いつもこのライブを楽しみにしてくださっていた皆さんと、そしてスタッフのみんなとも、最高のものを共有したかった。それができない自分ならこれで最後にしたい、と決めました」

「誠実、というのとはちょっと違うかも。もし自分がファンの立場だったら、と考えると、あの歌を聴きたい、あの声で歌ってほしい、という気持ちがすごくよくわかるんです。ベストなパフォーマンスを見せられない自分が、そんなお客さまの前に立つのは、どうしても納得できません。自分の頑固さが出ちゃったのかな。私、そういう変な職人気質なところがあるんですよ(笑)」

◇  ◇

ワンマンライブ「Ai Kawashima20th Anniversary~820~」は8月20日17時半から、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開催。開場は16時半。一般7500円。詳細は公式サイトなどで。

【川嶋あい公式サイト】 https://kawashimaai.com/

20周年記念のベストアルバムも8月20日に発売

なおこの8月20日には、20周年を記念したベストアルバム「My Own Pieces〜The Best Selection of Ai Kawashima〜」も発売。全30曲入りの3枚組で、シングルだけでなく、アルバムからも川嶋さん自身が選曲している。コンサートだけで披露していた幻の名曲である「ゴール」がついに解禁されるほか、6月に配信リリースした最新ミニアルバムも全曲収録するなど、ボリューム満点なベストアルバムに仕上がっているという。

【通常版】3800円(税別)

【初回限定版】4800円(税別)JK写特別ver仕様、DVD付き

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