まちの紹介
2020.06.12

今、注目のまち Vol.4 川越市[埼玉県]

今、注目のまち - Vol.4 川越市[埼玉県]

歴史情緒あふれる小江戸、川越の魅力

東京副都心の池袋駅まで東武東上線で約30分。それでいて古い町並みが残り、観光要素も持ち合わせているのが埼玉県川越市です。その魅力をさまざまな観点から検証してみました。

川越駅東口
川越駅東口

川越市の魅力とは

川越市は交通の利便性という点をはじめ、蔵造りの町並みが楽しめる観光地としても注目されています。その魅力を探ると、以下のような理由が考えられます。

  • 交通網…JR川越線「川越駅」(JR埼京線直通)、東武東上線「川越駅」、西武新宿線「本川越駅」がまちの中心にある。
  • 新旧ベッドタウンの混在…昭和40年代あたりから都心へのベッドタウンとして開発された地域(霞ケ関地区および高階地区)がある。現在はJR川越線南古谷駅徒歩8分の距離にある大型ショッピングセンター(ウニクス南古谷)周辺の人気も高く、人口は微増を続け35万人台を維持している。
  • 古い町並み…大きな空襲の影響が少なかったため、蔵造りの町並みや川越城本丸御殿など、歴史的な建造物が残されている。
  • 妊娠・育児サポート制度が充実…子育て情報誌『こえどちゃん』の配布や、子育て応援サイト「ママフレ」の開設等。
蔵造りの町並み
蔵造りの町並み

川越ブランドを支える歴史と文化

首都圏にベッドタウンと呼ばれるまちが数多くあるなか、川越市が他のまちと異なるのは、通勤の便利さに加え、歴史と文化のまちである点です。その象徴ともいえるのが「蔵造りの町並み」や「川越城本丸御殿」「川越大師喜多院」「川越氷川神社」「川越まつり」などです。中でも蔵造りの建物が軒を連ねるエリアは、川越の重要な観光ブランドとして人気が高く、平日・休日を問わず、多くの観光客でにぎわっています。また、毎年10月第3土・日曜日に開催される川越まつりでは、精巧な人形を乗せた絢爛豪華な山車が、小江戸川越の象徴である蔵造りのまちを中心に巡行します。2005年には「川越氷川祭の山車行事」として 国の重要無形民俗文化財に指定され、2016年には「山・鉾・屋台行事」がユネスコ無形文化遺産に登録されて、観光客増大の理由の1つになっています。2019年のデータによると、年間の観光客数は約775万7,000人にのぼり、「住みたい」と「訪れたい」が両立しているまちであることがうかがえます。もちろん、市ではそのための政策も進めています。

蔵造りの町並み周辺を「重要伝統的建造物群保存地区」として、歴史的風致を維持し、周辺環境と合わせて保持することを目的にした制度で守っていることもその一環です。訪れる観光客が増加するなか、市民の暮らしやすさを守るため、交通政策課が主体となって、この地区の車道のあり方(交通規制や一方通行化など)について市民と対話を進め模索が繰り返されています。

もう1つ、「川越らしさを活かした交流とにぎわいのあるまちづくり」を目指した「川越市中心市街地活性化基本計画」が2009年に策定され、現在はその第2弾が進められています。

計画区域は川越駅周辺から蔵造りの町並み周辺を含む約255ヘクタール。回遊性の向上と商業・サービス業の活性化を目標とし、旧川越織物市場保存整備事業や本川越駅西口開設事業、中央通りまちなみ整備、テナントミックス事業などを主要事業として掲げています。

川越城本丸御殿
川越城本丸御殿
川越大師喜多院
川越大師喜多院
川越氷川神社
川越氷川神社
川越まつりの山車の競演
川越まつりの山車の競演
クレアモール川越
クレアモール川越。中心市街地の南部地域は、川越駅や本川越駅、クレアモール川越等に商業施設等が集積し、中心商業地を形成している

全国の自治体が苦悩する空き家対策

2018年の総務省の住宅・土地統計調査によると、国内の住宅総数に占める空き家の割合(全国平均)が13.6%なのに対し、埼玉県は10.2%と低く抑えられています。中でも川越市が9.18%とさらに低いのは、周辺に複数の大学があり、毎年人の入れ替わりがあることが要因と考えられています。

川越市は「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行される前(2014年)から「空き家等の適正管理に関する条例」を施行しており、市の防犯・交通安全課が担当してきた経緯があります。ちなみに市に寄せられる空き家の相談件数は、毎年100件ほど。うち、庭木や雑草、老朽家屋に関する相談が多くを占め、解決率は70%弱とのデータがあります。

2016年度には市が空き家等実態調査を行い、一次調査が各自治体による現地調査で、二次調査は一次調査(1,930件)を元にした水道の閉栓データなどからリストアップしました。その後のアンケート回答で、実際の空き家を2,060件と割り出しました。アンケートで「建物を利用しない理由」は、「売却・賃貸することを考えているため」とした回答が約20%で最も多い状況でした(図表1)。これらの結果を受け、2019年に空き家対策計画を策定し、計画的な空き家対策を進めるべく、同年5月より「川越市空き家バンク」を始めています。全日本不動産協会埼玉県本部県央東支部も「川越市空き家バンクにおける空き家の媒介等に関する協定」の媒介協定締結者に名を連ねており、空き家所有者や賃借・購入希望者からの相談を受け付けています。

図表1 「建物を利用しない理由」の回答結果(空き家所有者へのアンケート調査)

図表1 「建物を利用しない理由」の回答結果(空き家所有者へのアンケート調査)
出典:「川越市空き家等実態調査」より抜粋・編集

全日会員の感じる空き家の実情

市の空き家バンクについて、地元不動産業者である株式会社大進不動産流通センターの小久保進氏に話を伺うと、「まだ始まったばかりの制度なので相談件数は少ない状況ですが、もともと埼玉県では2014年より始まった『空き家対策連絡会議』が定期的に開かれているうえ、近年は県の『相続おしかけ講座』(図表2)が各地で開かれているので、今後は空き家バンクの周知や活用を広げていくことが課題」とのことです。

図表2 埼玉県で実施している「相続おしかけ講座」の宣伝チラシ

図表2 埼玉県で実施している「相続おしかけ講座」の宣伝チラシ
出典:埼玉県ウェブサイト

小久保氏の会社でも独自に「空き家・空き地巡回サービス」などを行っており、空き家所有者の方々には、解体や売買、用途変更、賃貸など、解決策を提示しています。「中でも固定資産税等の問題から、空き家を取り壊して更地にすることを希望しない空き家所有者の方も多いのですが、実績を積み上げるなかで、さまざまな事例を提示できるようになれば、空き家減少の一助になるのではないかと活動を続けている」と言います。

諸外国へのアピール

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は開催延期となりましたが、川越市はゴルフ競技の会場(霞ヶ関カンツリー倶楽部)として選ばれています。これにより都心から気軽に行くことのできる日本らしい観光地として、外国人観光客へのアピールがさらに進むことも予想されています。

都心から近すぎて観光客の90%以上は日帰りしてしまうものの、2010年には4万2,000人だった外国人観光客が、2019年には31万3,000人に増えていることからも、その注目度の高さは折り紙付きといえるでしょう。

霞ヶ関カンツリー倶楽部「East Courses No18」

霞ヶ関カンツリー倶楽部「East Courses No18」
Photo by Koji Aoki/AFLO

取材協力・写真提供:川越市

Interview

地方本部長からひとこと

長島 友伸氏

埼玉県本部長

長島 友伸氏

埼玉に対する親しみや愛着を高めることを目的に選定された埼玉県の愛称「彩の国」。農業では、里芋や小松菜、米作りが盛んで、深谷ねぎ、狭山茶は全国に知られています。また越谷のイオンレイクタウン、三井アウトレットパーク入間、ららぽーと新三郷など大型ショッピングモールが充実しています。さらに川越や長瀞、秩父等を訪れる観光客をはじめ、さいたまスーパーアリーナ等でのコンサートやイベントには多くの人々が集まり、昨年は映画「翔んで埼玉」で注目を浴びました。魅力ある「彩の国」へぜひお越しください。

川越市に詳しい方にうかがいました

都心のベッドタウンとして人気あるまち

小久保 進氏

株式会社大進不動産流通センター
代表取締役

小久保 進氏

株式会社大進不動産流通センター
埼玉県川越市松江町1-4-2
TEL:049-222-8171 FAX:049-222-8424
営業時間:9:00~18:00 定休日:なし

弊社は川越市内の地元業者として、不動産の売買・賃貸、建物の管理、建築を30年近くにわたり営業しています。私自身も江戸時代から続く生粋の川越市民ですので、扱い物件の80%は市内にあります。賃貸の社有物件は現在100戸を超え、管理戸数は300戸余りとなっています。また、今まで培った建物管理のノウハウを生かし、売買や賃貸でお客様を募集しているのと同レベルでの空き家管理もしています。

川越市のよいところは、やはり都心に出やすいことで、駅前には近代的なビルもあれば、蔵造りの町並みなど、歴史と文化のまちとして豊かな気持ちで暮らせる点にあると思います。不動産の流動性は高く、都心に通う社会人、都心や周辺の大学等に通う学生さんなど、毎年2月、3月は大変多くのご相談をいただいています。

株式会社大進不動産流通センター
株式会社大進不動産流通センター

川越市の行政情報

■支援制度

子育て支援

先輩ママのボランティアが自宅を訪問し、子育てしているママをサポートする「家庭訪問型子育て支援事業」をはじめ、第3子以降の子どもが生まれた世帯に対しては各種子育て支援サービスに利用できる「川越市3キュー子育てチケット」を配布しています。これは埼玉県が配布するチケットに川越市が3万円を上乗せしたものです。そのほか、子育て支援施設は市内に31カ所ほど設置されています。

住宅改修補助金制度

市内の施工業者により住居をリフォームする場合、改修工事費用(税抜)の5%(限度額6万円)を補助します。

■川越市の概要

都心から30㎞圏内にあり、埼玉県南西部地域における産業、経済、文化、観光などの中核都市として発展してきました。市制が施行されたのは1922年と古く、その後1955年に周辺の9村を合併し、現在の川越市になっています。

川越市Data面積:約109.13k㎡
人口:35万3,456人
(2020年4月1日現在)