かわいくてミステリアス!ナマケモノの驚きの生態を紹介

by 佐藤華奈子 2022.09.02

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いつも笑顔に見えるお顔に、ゆっくりした動作で見ているだけで癒されるナマケモノ。風貌も動きもユニークですが、野生でどんな生活をしているのか、その生態はあまり知られていません。そんなナマケモノの謎に包まれた生態を「ナマケモノ・ミステリー」と題して紹介します。

ナマケモノ・ミステリー【1】 そもそもナマケモノって・・・?

ナマケモノは有毛目ナマケモノ亜目のどうぶつで、大きく「ミユビナマケモノ科」と「フタユビナマケモノ科」の2つのグループにわけられます。ミユビナマケモノ科の仲間は指の数が3本でしっぽがあります。フタユビナマケモノ科の仲間は後足の指は3本ですが前足の指が2本で、しっぽは退化してありません。どちらも中央アメリカから南アメリカの熱帯雨林に生息し、一生のほとんどを樹上で過ごします。名前の由来の通りほとんど動くことはなく、動いてもとてもゆっくりです。基本的に草食で木の葉や新芽、果実を食べるほか、幼虫や鳥の卵を食べることもあります。


国内の動物園などで見かける機会が多いのはフタユビナマケモノ科のフタユビナマケモノです。体長は60~70cmほどありますが、体重は4~8㎏で飼い猫と同程度です。頭は丸く、耳は外から見えません。7㎝ほどのかぎ爪を持ち、この爪をフックのように木の枝にひっかけてぶら下がっています。ナマケモノの中では気性が荒く、比較的活発に動きます。動物園でナマケモノを見て「意外とよく動く」と思ったら、それはフタユビナマケモノかもしれません。

ナマケモノ・ミステリー【2】 哺乳類なのに変温動物

ナマケモノはほかの哺乳類と異なり、外気温の影響を受けて体温が上下する変温動物です。体温は低めで24~33度の間を行き来しています。あまり動かないナマケモノは一般的な哺乳類と比べて筋肉の量がかなり少ないので、寒い夜間や雨の日でも、震えて熱を生み出すことができません。日中は木の上で日なたと日陰を移動して体温を調整しています。

ナマケモノ・ミステリー【3】 体に藻が生える

ナマケモノ

野生のナマケモノの毛は緑色になっています。これは毛に藻が生えているためです。あまりに動かなすぎてついに藻まで生えてしまったのですが、これはナマケモノにとって好都合なこと。この緑色が保護色となり、天敵に見つかりにくくしてくれます。さらにその藻を食べる蛾も住んでいて、蛾の排泄物は藻の肥料となります。ナマケモノと藻と蛾はお互いになくてはならない共生関係にあります。ちなみに、ナマケモノ自身もお腹が空いたら自分の体から藻をとって食べることもあるそうです。まさに自給自足ですね。

ナマケモノ・ミステリー【4】危険が迫ると爪で抵抗する

ナマケモノはおとなしいイメージで、実際ほとんど動きませんが、危険が迫ったときはちがいます。天敵に攻撃を受けると、長いかぎ爪で抵抗して難を逃れることもあります。また、体の動きと違って傷の治りは早く、深い傷を負っても傷口が感染することは少なく自然に回復するそうです。

ナマケモノ・ミステリー【5】命がけでトイレに行く

ナマケモノは一生のほとんどを木の上で過ごし、眠ることも食べることも、さらには交尾と出産までも木の上で完結してしまいます。そんなナマケモノが地上に降りるのは、木を引越しするときかトイレに行くときです。


ナマケモノは食べたものを消化するのもゆっくりで、口に入れた葉が出てくるまでに1ヶ月ほどかかることも。食べる量が少なく消化ペースも遅いため、うんちをするのは週に1度程度です。この排泄の際はたいてい木の下に降りて、少し移動して用を足します。後足の筋肉はほとんど発達していないので、ナマケモノは地上で歩くことはできません。木から降りると、前足で体を引きずりながら進むことになります。木の上でなるべく動かないことで天敵から身を隠していたナマケモノにとって、この行動は命がけ。実際に野生のナマケモノの死因の半数が排泄で地上に降りたときに天敵に捕まったため、という調査結果もあります。


ほかのことは徹底して木にぶら下がって行うのに、なぜトイレのためにここまで危険をおかすのでしょうか。それは穴を掘って排泄物を埋めることで木の肥料にして、自分が住む木を育てるためと言われています。アマゾンの土は栄養豊富なイメージですが、実はすぐに栄養が分解されてしまうため、土壌はやせています。うんちを木の上から落としただけでは、バクテリアにすぐに分解されて木の栄養になりません。排泄物の栄養を木の根へ届けるには、穴を掘って埋めるしかないのです。ナマケモノは自分が暮らす環境を守るために命をかけていたんですね。


さらに、ナマケモノが地上に降りてうんちをしたとき、体表に住む蛾が舞い降りて卵を産みつけます。その卵からかえった幼虫はそのまま地上で育ち、成虫になるとまた飛び立ってナマケモノの体に住みつくそうです。ここにも命の循環がありました。

ナマケモノ・ミステリー【6】泳ぐこともできる!

意外なことに、ナマケモノは泳げます。木の枝から川へダイブして泳ぐこともあります。しかも泳ぐことが得意。木にぶら下がるため筋肉が集中している前足を使って水をかき、地上の倍のスピードで水中を進むことができます。水に入って泳ぐ目的は引越しやパートナーを見つけるためです。

ナマケモノは家で飼える?

ナマケモノ

ここまでナマケモノの驚きに満ちた生態を紹介しました。意外な一面を知ってさらにナマケモノに惹かれた方もいるのでは? ナマケモノは国内での飼育は禁止されておらず、届出なども必要ありません。ですがペットとしては大変珍しく、そもそもナマケモノと出会うことが困難です。もし出会えたとしても、一般家庭で飼育環境を整えることも、診てもらえる動物病院を探すことも難しいため、飼育はおすすめできません。

まとめ

ナマケモノの驚きの生態を6つ紹介しました。結論として、ナマケモノと呼ばれていても、実はナマケていない!ちょっと極端なところもありますが、独自の生きる戦略を突き詰めて進化した結果、今のペースとなりました。ほかの生き物との共生や住環境への配慮を極めたサステナブルな生き方は、私たちも見習いたいですね。

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コメント12

ぎーさん

初めて知ることばかりでとても勉強になりました。命懸けで自分の住む環境を守る…ナマケモノって、本当に愛おしい生き物ですね。

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faiya-さん

いやー...とても可愛らしいですね

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yuunaさん

グット

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あさん

とてもいい情報でした

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