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中村ゆりかの武器は“声”にあり 『ギルティ』『女子高生の無駄づかい』など漫画原作にハマる理由

リアルサウンド

20/7/30(木) 6:00

 現在放送中の『ギルティ~この恋は罪ですか~』(読売テレビ・日本テレビ系、以下『ギルティ』)が第8話から最終章に突入し、物語もいよいよ佳境を迎えている。

参考:『ギルティ』の中村ゆりかから目が離せない 松本まりか、菜々緒ら、ドラマで成功する“悪女”の条件

 丘上あいの漫画『ギルティ ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~』を原作に、出版社での仕事と私生活に恵まれ幸せに暮らしていたヒロイン・荻野爽が、次々と発覚する周囲の裏切りによって苦境に陥る様を描いた本作。主演を務める新川優愛をはじめとし、『中学聖日記』(TBS系)で有村架純の婚約者役を好演した劇団EXILEの町田啓太や、『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)や『奪い愛、夏』(AbemaTV)での怪演が話題となった小池徹平など、豪華俳優陣による過激なラブサスペンスが展開されているが、中でも異彩を放っているのが女優・中村ゆりかだ。

 第1話にて爽を慕う飲み友達として登場した彼女だったが、早々に爽の旦那である一真(小池徹平)と不倫していることが発覚。人懐こい笑顔が途端に人生を狂わせる魔女の笑みに変わり、「さやかさぁん。そんなんだから、旦那さんが外に女つくるんですよ~」と開き直る姿は視聴者を凍りつかせた。しかし、あまりにもあっさりと瑠衣が旦那との不貞行為を認めたことで、この出来事は今後爽が巻き込まれていく裏切り劇の発端に過ぎない――そう思わせたが、実はすべての裏切りに関与していることが徐々に明らかとなる。

 幸せな家庭を壊すことに飽き足らず、一真を恨んでいる睦月(神尾楓珠)を遣い、敏腕編集者として活躍していた爽の会社での居場所をも奪った瑠衣。その正体は、爽にとって忘れがたい高校時代の元彼・秋山(町田啓太)の義妹。彼女の目的は一真を手に入れることではなく、母親の虐待で傷ついた心を救ってくれた秋山の愛情を一身に受けること、そしてそれを横取りした爽を貶めることだった。

 機能不全家族の下で育ちながらも、懸命に生き正論を貫く“正義”の爽と、人間を恨み、自分の目的のためなら手段を選ばない“悪”の瑠衣。もちろん物語は“正義”の側から描かれることが多く、本作も美しくまっすぐなヒロイン・爽の目線で描かれている。けれど、『ギルティ』は回を追うごとに、爽が立ち向かうサスペンスでありながら、悪役である瑠衣の哀しみを描いた人間ドラマにも見えるのだ。それは、彼女を演じている中村ゆりかの圧倒的な存在感に依るところが大きいのではないだろうか。

 2015年に放送された土屋太鳳主演のNHK連続テレビ小説『まれ』横浜編に出演し、知名度を上げた中村ゆりか。彼女の洗練された美しさは視聴者を虜にし、『週刊プレイボーイ』の“スゴカワ2017”企画では、映画『思い、思われ、ふり、ふられ』で主演を務める福本莉子らと共に注目の女優として紹介された。

 今回の怪演をきっかけに、2018年のドラマ『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)にて、可愛らしい容姿と無邪気な仕草で他人の夫を翻弄し、計算ずくで奪おうとする井筒里奈役で話題となった松本まりかと比較されやすい中村だが、2人はどちらもその「声」が印象的だ。パッチリとした二重に、ナチュラルだが色気のあるヘアスタイルとメイク……容姿もさることながら、2人が持つ少し掠れた艶やかな声は、たとえ画面を観ていない時でも耳に残る。役柄に合わせて男性に媚びるように発せられる甘い声だが、けっして嫌味はない。松本は持ち前の声を活かし、アニメの声優やナレーターとしても活動。ロボットアニメ『蒼穹のファフナー』の遠見真矢役や、『ファイナルファンタジーX』のリュック役など、諏訪部順一や木村良平、諸星すみれら豪華声優陣と声を並べても違和感がないほど、演じるキャラクターに声がマッチしている。

 一方、中村は声優経験こそないものの、2018年に放送開始15周年を迎えたアニメ『プリキュアシリーズ』とコラボしたドラマ『声ガール』(テレビ朝日系)に出演。プロの声優から本格的なレッスンを受け、期待の新人声優・栗山麻美役に挑戦した。中村の声は今回のような“あざとい”役柄だけではなく、漫画・アニメ原作の作品にも活かされている。

 例えば、映画化もされた『賭ケグルイ』シリーズの五十嵐清華や『左ききのエレン』(MBS系)の加藤さゆり役でクールな美女を熱演。漫画原作のドラマや映画は原作が人気であればあるほど、抱えるプレッシャーも大きいだろうが、その中でも中村は原作ファンの支持をしっかりと獲得してきた。

 特に今年1月に放送された『女子高生の無駄づかい』(テレビ朝日系)は前年のアニメ化も好評だったが、ドラマ版を観た視聴者からは感情が“死んでいる”ロボこと鷺宮しおり役を務めた中村に関して、「ハマり役」「ロボにそっくり!」とSNS上で話題に。アニメや漫画のキャラクターの実写版としての起用がこれほどまでに相次ぐ理由には、透明感あふれる美しさに加え、彼女の武器の一つである「声」が関係しているに違いない。

 『ギルティ』も累計発行部数150万部の大人気漫画を原作とした作品であり、主人公を追い詰める悪役だけにこれまで以上の難しさもあっただろう。しかし、観れば観るほど、声を武器に周囲を惑わしていく彼女の魅力にこちらも翻弄されていく。物語も終盤に差し掛かり、中村が演じる瑠衣は数々の裏切りにより成長した爽の反撃を受けているが、母親(矢田亜希子)の虐待により傷つき、時折寂しそうな表情を浮かべる彼女の行く末も気になるところ。果たして、瑠衣は復讐の末に欲しいものを手に入れ、“悪役”を全うするのか。それとも、その傷が癒され、本当の笑顔を見せるのか。(苫とり子)

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