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賀来賢人が大切にしている仕事のポリシー「ワクワクすることしかやらない」

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賀来賢人 (撮影:映美)

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鬱々としたコロナ禍の空気の中で、コツコツと積み上げていたものが今、芽吹くときなのかもしれない。2月15日よりNetflixで世界独占配信がスタートする「忍びの家」もそんな作品だ。

主演兼原案=賀来賢人。自身で企画を持ち込み、クリエイティブ面にもがっつりと携わった今作は現代日本で忍びが暗躍していたら、という物語。忍びであることを捨てた最後の忍びの一族・俵(たわら)家が国家を揺るがす史上最大の危機に対峙していくというストーリー。
賀来自身の熱い想い、さらにデイヴ・ボイル監督という才能に出会い、物語は拡大していった。

役者として、作り手のひとりとして今作にかけた思い、こだわりを賀来賢人に聞いた。

「熱狂させるカルチャーがあるのに、日本は活かしきれていない」

――今回の作品は賀来さんご自身が企画を持ち込まれたとのことなんですが、どういったところから着想を得たのでしょうか。

コロナ禍で仕事がストップしてしまったときに、待つだけが仕事じゃないな、じゃあ自分で作ってみよう、という思いがスタートでした。夜な夜なZoomして。当時、してませんでした? Zoom呑み。

――してましたね(笑)。

そういうのがきっかけで。何を作るかな、となったとき、原案の村尾(嘉昭)さんと今井(隆文)さんと話をしていくうちに、忍者がやりたいって僕が言ったんです。

――なぜまた忍者を。

たまたま家族で忍者村に行ったんです(笑)。キラキラした顔でうちの子どもが楽しんでたんですよね。
と、同時に、海外からの観光客の方が一番楽しんでいるんです。ここまで熱狂させるカルチャーがあるのに、日本は活かしきれていないな、というのは正直感じていて。素晴らしい日本の武器をこの現代に出してもいいんじゃないかな、と思ったんです。
それとは別で、もともと家族の話が作りたかったので、忍者と組み合わせたらどうか、というところがきっかけですね。

――ある程度の枠組みができるまでに、悩まれたところはありました?

やっぱり現代に忍者がいるとなると、スパイものになっちゃうんですよ。でも、忍者はスパイではない。ガジェットを新しくして、だとかやっていると忍者の良さがどんどん消えていってしまうんですよね。だから、忍者らしく、あるべき姿はなんだろう、ということを常に模索していましたし、撮影しながらも忍者は忍者、スパイはスパイ、ということも常に確認しながらやっていた記憶があります。

――かなり忍者についても勉強されたんですね。

そうですね。それに、一緒にデイヴが僕たちの誰よりも忍者には詳しかったので、それが大きいですね。

――デイヴ・ボイル監督と忍者感が違ったりということはなく?

彼が今回、フォーカスした忍者感の一番の面白さは我慢だとか忍耐、忍ぶということ。
本当に史実にもあるんですけど、お酒を飲んではいけない、肉を食べてはいけない、セックスをしてはいけない。そういう縛りの中でずっと生きてきて、彼らはヒーローではなく、常に陰に隠れて、誰かのために誰かに仕えていた。例えばお庭番だったり、歴史の中で、歴史に残らない動きをしていたんですよね。仕えている人が悪なのか正義なのかも知る由もない、というちょっと悲しい存在ではあるんですよ。デイヴはそこをピックアップしていたんですけど、その観点が僕にはなかったので、すごくおもしろいな、と思いました。

――お互いにアイディアを出したり、ディスカッションをする場面も?

全然しましたよ。でも基本的に趣味がすごく合ったので、どちらかというと、お互いが言ったアイディアがどんどん、どんどん2人で膨らむことの方が多かったですね。

デイヴ・ボイル監督との出会いが物語を拡大させた

――企画から持ち込んで、実現させるということもすごいことだと思います。それも大作。持ち込んだ時点では、企画書はどれぐらいのボリュームだったんですか?

僕たちが作ったのは20ページぐらいですね。ストーリーラインとキャラクターラインが書いてあったんですけど、Netflixに預けてしばらくして返ってきたのが全部英語の120ページぐらいの膨大な企画書でした。それを書いたのが監督のデイヴです。僕たちの作品を基に、ストーリーの世界観を広げたものを作ってくれて、それが今に繋がっています。
僕が提案したところもあるし、変わっているところももちろんあるし、広げ方はデイヴの素晴らしいセンスが入っていますね。僕たちには絶対に思いつかなかったところです。

――デイヴ・ボイル監督に決まったのはその企画書がきっかけに?

彼の作る脚本の構成やセリフ運びが……言い方は難しいんですけど、僕が見たことがない作りのレベルだったんです。この人じゃなきゃ作れないストーリーだな、と思ったし、この脚本を作った人じゃないと撮れない話だな、と思ってデイヴに監督をオーダーしました。

――後半に行くにしたがって話が拡大していき、どんどん引きこまれていきます。物語の拡大ぶりは想定内だったんですか。

想定以上ですね。だけど、構成だったり、時間の都合もあって、やりたいことを削らなきゃいけない場面も結構多くて。だから100%やりたいことを詰め込めたわけではないんですよね。それは悪い意味じゃなくて、今回はこれがベストだと思うし。でも、もし続編をやるときはまた入れたいね、というアイディアはたくさんあります。

――アイディアを出していく中で、おもしろい、と感じると同時にこれまでの経験から実現に不安を抱くことはなかったのでしょうか。

台本を作って、「これおもしろいね」ってなったんですけど、ふと我に返って、「これ、できるの?」とも思いました。すべてに対して。
それは多分、まず忍者という設定、現代という設定と、事件も壮大になってくるし、まず、俵家の家をどうしようって。ロケハンしてても、説得力のあるものがないんですよ。
でもそれを美術の方がセットを作ってくださったので、それは大きかったかもしれないですね。 今回は美術、撮影、照明、衣装、メイク、全ての部署に本当に日本一の方々が集まってくださったので、助けられっぱなしでした。それと同時に日本のクリエイターたちは、本当にすごい才能を持っているな、というのも感じましたね。

こだわった俵家という家族の空気

――賀来さんが演じた晴(ハル)についてもお聞かせください。

過去のトラウマを引きずってずっと溜め込んで、人に言えない。彼は心優しいから、ずっと葛藤しているんですけど、彼は常に受けの立場なんですよね。常に誰かに引っ張られるというアクションだったので、今回はとことん引いて演じるという表現でしたね。もう何もしない美学をとことん貫こう、ということは、考えていました。
僕の中ではすごく難しくて。晴はセリフもわざと少なくしたんですよ。でもそれで通用したらおもしろい魅力的な主役にはなるだろうな、ということは思っていました。自分で作っといて難しい役になっちゃったんですけど(笑)。でもやりがいはある役でしたね。

――主人公である晴が次男というのも絶妙だな、と。家族構成のバランスは賀来さんの提案なんですか?

あの家族構成を最終的に着地させたのはデイヴですね。
俵家っていなそうだけどいそうなんですよね。僕たちもいそうな家族を目指したし。
機能不全の家族という関係性をどこまでリアルに描こうか、という話も、ただ喋らないというのが機能不全ではない。「早くこの人から離れたい」という意味を含めてあえて会話をするシチュエーションもあるじゃないですか。

そういう「自分だったらどうする?」という世間話を家族のキャストと始めました。江口(洋介)さんもアイディアを出してくれて、いろんなシーンを膨らましてくれました。
宮本信子さんに言われて大きかったのは、「この本はよくできているからこそ、ちゃんと私達は家族じゃないといけないよ」ということ。まさにそうだなと思って。そこは最初から最後まですごい丁寧にやりましたね。

――家族で、ということで事前に俵家の面々で何かしたり、ということはあったんですか?

撮影のときはコロナの第2波でめちゃめちゃ厳しい時だったんですよ。食事は行けないし。だけど、撮影中にみんなでずっと居間にいましたね。控え室に絶対に帰らずにみんなでゴロゴロしてました。

――まさに家族のような。

ずっとお喋りしてました。それがなんだかすごく良かったんですよね。

――家族を描く点では、ほかに気をつけられた点というのはあったんですか?

やっぱり空気感みたいなものはあまり嘘はつきたくなかったということと……なるべく説明を減らすこと。
今回、説明ゼリフがあんまりないんです。あえて削ったんですけど、その意図としては空気で出したかったんですよね。意地でも。
だから、もしかすると1回見た後にまたもう通しで見たら、この人たちの関係性の緻密さじゃないですけど、そういうのがより見えるんじゃないかな、と僕個人は思っています。

この作品に愛があるし、この作品にベストを尽くしたという自負がある

――主演兼原案、そしてco-producerということでどういった役割を果たされたのでしょうか。

僕とデイヴが入っているんですけど、クリエイティブの方を統括する形ですね。本の内容だったり、編集でどうするかだとか。
キャスティングは関わったところと関わっていないところがあります。直接僕が連絡した方もいらっしゃいますし。

――まさに制作側のプロデューサーのようなところもやられていたイメージなんですね。

準備段階ではそうですね。
ただ現場入っちゃうと、やっぱり僕も準備しなきゃいけないし、パフォーマンス落とせないので。
最初の方は、自分の出番がない現場にも毎日行くつもりだったんですけど、途中でちょっとずつペースを変えていきました。でも裏で台本直したりということはしていましたね。

――今回、クリエイティブ面に参加されて改めておもしろいな、と思われたのはどういうところですか?

今までは俳優として自分のキャラクター、役、自分のシーンしかディスカッションする場がなくて。結局、それも僕はあくまで役者だったので監督がこうしてほしいんだったらこう、プロデューサーこうしてほしいんだったら変えない、というふうに多少なりとも折れてきた部分もあるし、そうやって納得した部分もありました。でも、今回は一応物語を作る側にいたので、そこは自分で責任を持って、「いや、これがおもしろいです」と言い切る。今までと逆の立場ですよね。俺は絶対こうなんですっていう提示の仕方をしなきゃいけなかった。それが大変だったんですけど、すごくおもしろかったですね。

――たくさんあるとは思うんですけど、制作過程で刺激になったコミュニケーションはありましたか?

やっぱりチームとして助け合いって必要だと思いましたね。本当に助けられたし。今回、題材がチャレンジングだったので、何がベストなのか分からないじゃないですか。
でもその中でもたくさん提案をしてくれたり、1人の意見が違うこともあるし。でもそれを最後までちゃんと話し合う場が設けられたことで、いろんな方に助けられました。編集もそうですけど、バックオフィスの方も。役者だけやっていたら、絶対に触れ合わなかった人たちだから。やっぱりいい体験をさせてもらいましたね。

――編集にも携わられたんですよね。

おもしろかったですね。音楽ひとつ、編集ひとつ、カットひとつでこうも変わるんだ、って。構成を逆にしただけで一気にシーンが変わるんですよ。例えば1話に持ってきたかったものを2話に持ってくるだけでも変わるのですごいですね。

――コロナ禍にZoomで話していたことが世界に向かって発信されるということはすごく夢があることだな、と思うんですが、改めて完成したものを観たときはいかがでしたか?

制作陣だけで試写をしたんですよ。その顔を見て、すごくほっとしたというか。それまではどう感じるのか分からなかったんですけど、一緒に作った人たちが1話を見終わった後に、拍手してくれたんです。それで全て報われたというか。あとは自信を持って宣伝して、自信を持って世界に届けよう、と。
やるからにはやっぱりみんなで勝ちたい。僕はこの作品に愛があるし、この作品にベストを尽くしたという自負があるんだな、と全て終わってから思いました。

――クリエイティブ面に関わられたことで、今後、影響がありそうな点ってありますか?

唯一あるのが、衣装合わせにはちゃんとした気持ちで、誠意を持って行こうってすごく反省しました(笑)。

――今までは違ったんですか……?

もちろん今までも誠意を持って行ってたんですけど(笑)。「この人たちにはこういう思いがあるんだ」という気持ちがあれば、もっと協力的になれる気がすると思って。役者のエゴだけじゃなくて、いろんなものを汲み取れればもっといいなっていうのは感じましたね。

ワクワクすることしかやらない

――今回の作品ではそれぞれがポリシーを持って動いてるキャラクターという印象を受けたんですけど、賀来さんご自身はお仕事に対してどういったポリシーをお持ちですか。

ワクワクですね。それは独立してから決めたんですけど、ワクワクすることしかやらないです。

――まさに今回はすごくワクワクして取り組まれた感じ?

……だし、今やっている仕事もそうですけど、常にやったことのない新しいことにチャレンジして、何かひとつでもワクワク要素があればやる、という感じですね、今は。

――これまでいろんな役を重ねていかれる中で、ワクワクの気持ちを保つモチベーションはどのように保たれているんですか。

僕も何かあるかなとか思ってたんですけど、やっぱりまだいっぱいありました。今は配信も増えていますし。簡単に世界に届けられるっていうワクワクもあるし、まだまだ僕自身もやってない役柄だったジャンルはいっぱいあるので。

――最後に。クリエイティブ面において今後の展望を教えてください。

次にやってみたいのは本当に自分が出ないプロデュース作品ですね。それは、やりたいです。
構想は何となくあります。

――楽しみにしています!

頑張ります。成立できるように。

取材・文:ふくだりょうこ 撮影:映美 スタイリスト:小林新/UM ヘアメイク:西岡達也/leinwand

<作品情報>
Netflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」

Netflixにて独占配信中

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