日本での報道の自由がなくなっている

司会:みなさん、こんにちは。本日はたいへん多くの方にお参加くださりありがとうございます。今日も非常に関心の高いトピックでございます、刺激的な話が聞ければいいなというふうに思っておりますけれども。

「ジャーナリズムが世界の暗い角をつっついていく」というふうにも思われているわけですけれども、そのようなことも含め、今日もいろんな話を聞けることになると思います。

日本において、最近国際社会から、報道の自由がなくなっていることについての懸念が示されています。なぜかということを2月に話をされましたけれども、これは総務省の高市大臣のコメントが起因しております。

(注:【全文】高市早苗氏「電波の停止がないとは断言できない」放送局への行政指導の可能性を示唆

「政治的公平性を欠く放送は電波を停止する可能性がある」という発言があったからです。このような発言がありまして、いろんなことが連続的に起きたわけですけれども、高市大臣は既知の事実を読み上げたまでだ、ということになっています。

また、憲法改正の話もございます。やはり世界の報道の自由度についても、ランキングが非常に急激に下がっています。これもまた「誇張である」というふうに言われています。

アジアのほかの地域に比べますと、日本の報道の自由というのはまだまだ確保されているというふうに言われているわけですけれども。

このような議論を本日行うにあたり、国連の特別報告者であります、デビッド・ケイ氏をお迎えしております。意見および表現の自由に対する権利の促進と保護に関する報告をしてくれます。

昨年の12月に外務省の招待を受けて来日する予定になっておりましたけれども、それが急遽日本政府からキャンセルがあったということです。それはいささか困惑する事実でありましたけども、招待した側からキャンセルをするということが昨年末起きました。

そして、ついに今年の4月に来日が果たされたわけですけれども。デビッド・ケイさんからさっそくお話を聞きたいと思います。

幅広い情報源から学ぶことができた

デビッド・ケイ氏:ありがとうございます。そして、本日はみなさま来てくださり、誠にありがとうございます。

まず最初に申し上げたいことがございます。それは国連の組織を代表いたしまして、先週の日本における地震災害のお見舞いを申し上げたいと思います。

私もロサンゼルスから来ておりますので、地震による脅威は非常に共感するところであります。このような時期におけるみなさんのご不安な気持ち、心より共感いたします。ですので、あらためて、この度の震災により被災されたみなさまに、心よりお見舞いを申し上げたいと思います。

それから、外務省のみなさま方、私を今回、本日調査において招待してくださり、ありがとうございます。

さまざまな会議を行ってまいりました。政府の関係省庁とも会議をいたしました。非常に今回のトピックにおける重要な省庁、それからその他のミーティングも行うことができました。これは外務省のみなさまのお力なくては実現することではありませんでした。

また、市民団体のみなさまにもお礼を申し上げたいと思います。外務省のみなさんが私たちの訪日をアレンジしてくださったわけですけれども。

それと同時に、さまざまな市民団体のみなさまに会えるように、つまり弁護士、ジャーナリスト、活動家のみなさま、それから学術界のみなさまを含め、多くの方々と会えるように調整をしてくださった市民団体のみなさんにも心からお礼を申し上げたいと思います。

このようなみなさまのお力によって幅広い情報源から学ぶことができました。政府内外の関係者からお話を聞くことができたわけです。

ですから、今回プレスリリースが出ておりますけれども、みなさまお受け取りいただいているはずでございます。そちらに書いてありますとおり、さまざまな関係者と話をし、多様な情報源からお話をうかがうことができました。

政府がネットの検閲をしていないことは非常に良い

一般論から入りたいと思います。それから具体論にいくつか入りたいというふうに思っております。表現の自由に関する話ですね。これはかなりの時間を、過去1週間に渡って割いてきたトピックであります。

まず申し上げたいことですが、非常に明らかである事実があります。それは日本社会において表現の自由、それから意見の自由に対するコミットメントは非常に高いということであります。

これは日本国憲法第21条に書かれております。「集会、結社及び言論、出版、その他一切の表現の自由はこれを保障する。検閲は禁止である」というふうに書かれております。

ですから、市民的および政治的権利に関する国際規約に書いてあるとおり、日本はあらゆる情報をを伝える権利を有するということを徹底しようとしています。

とりわけオンラインについては、グローバル・リーダーとしての立ち位置を確立されています。インターネットにおける自由度、日本社会における表現の自由・意見の自由、そして政府がオンラインの内容を検閲していないということについて、非常に良い状態であるということを確認しております。

また、メインストリームのメディア、主要なメディア、それからとくに時事のメディアにおいては、今非常に大きな波を感じています。

つまり、急激にメディアの独立性に関する問題が出てきているというふうに考えるわけですけれども、その中でいくつかのトレンドを取り上げたいと思います。とくに私は懸念を示したいところがあるわけですが、いくつかハイライトしたいと思います。

メディアの独立性に関する問題

今日はいただいている時間、本日FCJに来ておりますけれども、私に割り当てられた時間は限られていますので、「報道の自由」というところに大部分の時間を割きたいというふうに思っております。

ということで、これは報道・出版、両方の自由についても確認をしていきたいと思います。それから特定秘密保護法についても話をしたいと思います。他のトピックもカバーし、そしてみなさんからの質問をお受けしたいと思います。

では、1点目の報道・出版の自由についてなんですけれども。日本におけるメディアを今フォローしていらっしゃるみなさんは、それが日本のメディアであれ、海外のメディアであれ、それを見ていらっしゃるみなさんは気づいていらっしゃると思います。それはメディアの独立性に関する問題です。

今週ジャーナリストのみなさまから話を聞きまして。そのジャーナリストというのはさまざま企業に所属するジャーナリスト。放送局、それから出版社のジャーナリストのみなさんとお会いしたわけですけれども、独立性を持ってレポートをすることが難しいと。

とくに、政府に関するデリケートな内容については、非常に独立性を持った状態で報道することが難しいという声を聞きました。

この懸念のハイライトなポイントは、まずは多くのジャーナリストが冒頭から「匿名です」というふうにおっしゃるわけです。私に情報を与えるにあたり、「まずは匿名でお願いします」ということをおっしゃるんですね。

もちろんジャーナリストとしては、みなさまのキャリアもありますし、立場、メディアのエコシステムにおける立ち位置というのは確保されているのに、「まずは匿名で」とおっしゃるというのは異例のことであるというふうに考えます。

報道、それから出版のメディアについて分けて話すべきなんですけれども、あとでまとめて話をしたいと思います。

まず、報道のメディアのほうですけれども、基本的にこれは合法であるということ。メディアの能力、メディアの意欲として、権力のある者から法律的に非常に曖昧な部分があるということです。

放送法そのものが政府の規制を許容している

とくに放送法に関連するところなんですが、放送法4条なんですけれども、そこに書かれてあることは、やはり「政治的公平性が必要である」というふうに書いてあります。これについて、これは確かに法律上は「合法の義務である」というふうに書かれています。そういうふうに書かれているというふうに解釈できるということなんです。

ですから、放送法の174条を考えますと、放送法4条の法律違反があれば、放送法174条に従って政府がなんらかの意見を示すことがあるということです。

停波の可能性もあるということを含め、これは非常に大きな懸念であるというふうに考えます。放送法そのものが政府の規制を許容しているということを示しているからです。

もちろんこれに対する反対意見もあると思います。それなりの正当性のある反対意見もありまして。先ほど申しました放送法の4条と、放送法の174条における実際の刑罰についても、それぞれの関係について議論することもできますが、やはりそもそも「停波することができる」と書かれていること自体が問題であるということ。

そして、さまざまな放送メディアのみなさんからの話を聞いたところ、ジャーナリストのみなさまがおっしゃるには、過去に、例えばある条項が実施されなかったことがあったとしても、一切それによって罰がくだされたことはなかったという事実があったとしても、やはり脅威である、と。

それがあることによって、強い意見でもって、メディアの力を行使することができなくなる。弱体化するということをおっしゃっていました。

ですから、やはりこの放送法は一部改正する必要があるというふうに考えております。例えば、4条そのものを取り消すということです。

政治的公平性を判断するということは非常にオープンな議論を要求するものであります。公平なのか・公平ではないのかというのは本当に大きな議論を要するところであって、それを政府がコントロールするということであってはならないというふうに考えています。

また、メディアは、そもそも独立性のあるサードパーティによって規制を設けるべきであります。もちろんそのサードパーティというのは、政府が指定するサードパーティであってもいいわけですけれども、政府そのものが規制を放送に及ぼすことはあってはならないというふうに考えます。

もちろん放送メディアについては、Q&Aにおいて、さらに話をしたいと考えていますけれども、とりあえず放送はここでおきまして、出版の話をしたいと思います。

メディアと政府の間に緊張感があることは健全

この出版についてもやはり同じようなプレッシャーがありました。圧力を感じているとジャーナリストがおっしゃっていました。出版ジャーナリストのみなさんですね。

どんな圧力か、そして出版社の経営者が非常に曖昧なコミュニケーションを出そうと。つまり、デリケートな記事はそもそも書かないようにしようと、あるいは少なくともジャーナリストが、政府に対して厳しい立場に追いやられるものを出版することはやめようというような圧力があったという声は散見されました。

ここで1つ思うのは、普通は、このようなメディアに対する攻撃というのは起きるわけです。民主主義におけるメディアに対する攻撃というのは起きます。これは普通であります。そこに緊張感があるということも正常であり、むしろ健全であるというふうに考えています。

メディアと政府の間の緊張感は健全であります。メディアのみなさんはそもそもそういった状況の中で、独立してオペレーションを行うということが求められているのだと思います。

ただし、ジャーリズムのシステム、メディアのシステム、その構造そのものが、日本においては、どうやらジャーリストに独立性、あるいは政府対してプッシュバックをすることを必ずにも許容しないようなことが書かれてあります。

つまり、例えばですけれども、記者クラブのシステムについても勉強いたしました。また、独立メディアのトップの経営幹部が政府の幹部と会っていると。こんな話を何度も何度も今週聞くことになりました。

ですから、ジャーナリストのみなさまに奨励したいのは、みなさまがよりプロフェッショナルな組織となるべく、メディア横断の組織を設立し、あるいはあるとしたら、それを強化し、メディアを包括する団結力・結束力みたいなものを体現する組織を作られるということを強く奨励したいと思います。

例えば、報道委員会(Press Council)ですとか、報道理事会ですとか、そういったものを作りまして、プロのジャーナリズムのメディアという1つの集団として、各会社横断で組織として団結・結束するということによって、政府に対する独立性をさらに強化するということを奨励したいと思います。

もう少し例をお示ししたいと思います。あまり長くするつもりはありませんが、これは明らかに表現の自由に関連することです。また、それだけではなく、メディアに対する暗雲のようにかかるプレッシャーについてです。

まずは特定秘密保護法についてなんですけれども、これについては非常に強力な議論を政府のみなさんと行うことができまして。この特定秘密保護法の解釈は必ずしもそんなに解釈することが容易ではありません。

でも、これをどう解釈するかということについては、かなりの時間を要して政府のみなさんと話をいたしました。2つポイントをハイライトしたいと思います。

もっとも国民の関心が高い部分が規制されうる

1つ目の懸念なんですけれども、それはジャーナリストが持っている保護なんですけれども。つまり非常にデリケートな、例えば日本の安全保障政策に関する何か記事を書くですとか、震災に対する準備、あるいは原発に関する政策とか、こういった非常にセンシティブなことをジャーナリズムが記事にするときには、ジャーナリストは保護されているわけです。

でも、こういった関心事は、日本の国民のみなさんにとって、もっとも関心の高いトピックだと思うんですね。にも関わらず、ここがまさに、この特定秘密保護法のもとで機密であるということで、情報の開示を規制されうるホットトピックでもあるということ。

偶然なのかわかりませんが、どうももっとも国民の関心が高い部分が規制されうるというところです。

ですから、ジャーリズムのみなさんに対して厳しい罰はないということ。そんな話を解釈をしながら言うのではなくて、やはり法律を変えるというところから根本的に手を打つことがよいというふうに考えております。

内部告発した人を守る力が弱い

もう1つは、公益通報者保護法についてですけれども。これは内部告発に対する保護の法律でありますけれども。やはり一般社会に対して情報を届けようとするジャーナリストのみなさんに対して、内部告発に関する、守ろうという力が非常に弱いというふうに考えております。

それは特定秘密保護法も含めてですけれども、公益通報者保護法もやはり実態としての力は弱いというふうなことを懸念と考えております。

結局のところ、内部告発をした人は良心から行ったことによって罰せられる、ということが起きる可能性がまだまだあるということなんです。それ自体問題ですけれども、さらにもっと問題であるのは、日本の国民のみなさんが情報にアクセスすることができないということであります。

そのほかにもいくつか問題を出してまいりました。私は予備的なレポートを出しましたので、英語の比較的長い文章がありまして、この和訳も出る予定がございます。

ですから、まだ英語のほうしかご覧になってないかもしれませんけど、あるいはプレスリリースをご覧になって、表現の自由、意見の自由についてのみなさんのご質問をお受けしたいと思います。

すでに私10分超えてしまったと思いますので、ここでいったん止めたいと思います。皆さんの質問をお受けしたいと思います。