〝江川式〟擬洋風建築
──江川三郎八がつくった岡山・福島の風景

幕末生まれの元堂宮大工・江川三郎八が、故郷の福島と赴任先の岡山で手がけた擬洋風建築の数々。公共から商業建築まで幅広く、両県に西洋の風をもたらしたそれらは、岡山ではいつしか「江川式」と呼ばれていた。
その真骨頂は福島で出会った洋式の橋梁構造にヒントを得た独自の「江川式小屋組み」。映画「ALWAYS 三丁目の夕日」の舞台となった「遷喬尋常小学校本館」（1907、岡山、国重文）の講堂が好例で、圧巻の大空間を創造した。これを筆頭に、いくつか共通する江川好みの意匠や技、また日本建築の寸法体系など元大工ならではの癖もまた江川式建築に独特のリズムと印象を与え、愛着が湧く。
本書では現存の神社を含む江川式擬洋風建築9作品を個々の特徴を捉えた撮り下ろし写真で、またかつてあった作品は豊富な古写真で案内する。知る人ぞ知る江川式建築の魅力を解き明かす初めての一冊。建築探訪ガイドとしても楽しめる。

■目次

「近代の風景」をつくった江川式建築

現存する主な江川式建築 いざ岡山へ！　江川式建築の魅力に出会う
金光中学講堂／遷喬尋常小学校本館／旭東尋常小学校附属幼稚園舎／倉敷幼稚園舎／総社警察署／土居銀行津山支店／矢掛中学校明治記念館／木山神社拝殿および善覚稲荷神社

ダイジェスト版『生ひ立ち之記』

次は福島へ！　江川式建築の源流を知る
亀岡家住宅

12のディティール
略年譜

「木割」の洋風建築──〝江川式〟建築の根底にあるもの　清水重敦
江川三郎八研究会よもやま三題噺──江川・僕・旧遷喬尋常小学校　森俊弘
福島の江川式建築を探る　齋藤隆夫

特別付録 江川式建築カードコレクション