中山明日香の作品は、室内と自然をモチーフに、ひとつの画面にイメージを幾重にも重ねた真昼のように明るい色調が印象的な油絵です。
「edible garden」では、明るいピンク、グリーン、ブルーの色彩が踊る庭に、落ち葉の上で焼かれるクリスマス・チキン、壁紙模様の塀や地面に置かれたテーブルウエアといった室内の風景が重ねられています。反転する色遣いやぺたりと平面的なマチエールが、だまし絵的な非現実感を強調し、日差しは明るいのにどこか怖い物語を見るものに想像させます。
中山の実家の庭をもとに描かれたこの作品には、父のつくったベンチやブランコ、落ち葉焚き、死んだペットを埋葬した同じ庭でバーベキューパーティをするという体験も含めて、動物をペットと食糧に分ける人間の基準を一方的だと感じた思い出も込められています。
祖母の死をきっかけに、人工的につくられる電照菊とお葬式のイメージを重ねた「ceremony for flower」や、家の中にいるように快適なアウトドア用品の矛盾から生まれた「Living with nature」など、いずれも作家自身が実際に体験した日常の不条理、違和感、不可思議が、明朗で清々しい色彩のうちに焙り出されるように表現された作品です。