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CULTURE NAVI「今月の人」

【上野樹里さんインタビュー】見たことのない“情報”よりも、目の前にいる人を大切にしたい

2023.11.29

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カルチャーナビ : 今月の人・今月の情報

見たことのない“情報”よりも、目の前にいる人を大切にしたい

上野樹里さん

上野樹里さん
ワンピース¥64900・シャツ¥53900/ショールーム セッション(サヤカ デイヴィス)その他/スタイリスト私物

上野樹里さんは人から「器用だね」と言われることがあるといいます。ところがその内実は、本人いわく「めちゃくちゃ不器用(笑)」。例えば、出演する作品は本当に納得できるものでなければ参加することができないそう。というより、納得できる作品に持っていくために、何度でも何時間でも、諦めずに製作陣とディスカッションを重ねます。7年ぶりの主演映画『隣人X -疑惑の彼女-』で演じたのは、人間に擬態化した謎の存在“惑星難民X”ではないかと疑惑を向けられる、平凡な暮らしを送る柏木良子役。かなり特殊な設定です。

「初期段階の脚本では、感情が読めない人物だったんです。なぜ涙を流しているかわからないような……もう少し不器用で控えめで、話してみると優しくて丁寧という、人間味が感じられる女性にしたかった。細かいところにまでこだわったので、映画にもちゃんと良子の心情が映っていると思います。私が共感できるということは、きっと皆さんにも共感してもらえると信じています」

能動的に作品にかかわるようになったのは、30歳を過ぎてから。結婚したことが大きく影響していました。

「なんでもそうですけど、リフレッシュした後に取り組むと効率が上がるじゃないですか。私は結婚後2年くらいお仕事を休んだので、その後からより丁寧に作品と向き合いたいと思うようになったんです。夫が0から1を作るミュージシャンなので、クリエイティブな空気を日々浴びていたことも影響したのかもしれません。もちろん脚本に多少わからない部分があっても『やってみよう!』と体現できる方もいるんです。でも私は理解できないとセリフが覚えられなくて(笑)。核となる脚本は、かなり話し合うようにしています」

その言葉どおり、良子を演じる上野さんの些細なしぐさや言葉にどきりとさせられ、「もしや?」と深読みしてしまう、ひねりのきいた極上のミステリー。そして驚くのは物語のラスト。世間からXの疑惑をかけられた彼女がある人物に下す決断は、強さと優しさに満ちています。

「世の中がどう騒ぎ立てようが、良子は自分の目に見えている世界が平和だったら幸せだという考え方をする人。スケールは小さいけれど、心の充実度は高いと思うんです」

その考えは上野さんも一緒。たくさんの情報があふれる中、ブレずに自分らしくいるコツがあります。

「毎日本当にいろんなニュースを目にしますが、情報のほとんどは自分で見たことがないものばかりなんですよね。世の中を動かしているのは私たち庶民の一人一人。まずは隣の人と心の目で向き合って、自分の気持ちを大切にすること。そして不快だと思ったことは飲み込まず、変えていこうとみんなが小さな一歩を踏み出せば、オセロがひっくり返るように世の中も変わる気がします」

判断を人任せにせず、自分で思考し、咀嚼し、行動に移す。その生き方は日常生活にも表れています。

「仕事の現場にはスープを作って持っていったり、お味噌汁を全員分持っていくこともあります。世の中にはいい顔をしている魅力的なパッケージがたくさんあるし(笑)、便利なデリバリーもあるけど、原材料や製造過程まで見ないと、本当にいいものかわからないじゃないですか。体に入れるものを選ぶことも、自分を大切にする第一歩だと思います」

Profile

うえの・じゅり●1986年5月25日生まれ、兵庫県出身。2003年に『ジョゼと虎と魚たち』で映画デビュー。映画『スウィングガールズ』『虹の女神 Rainbow Song』『のだめカンタービレ』シリーズ、NHK大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』、ドラマ『監察医 朝顔』シリーズ、ミュージカル『のだめカンタービレ』などに出演。
Instagram:_juri_art_
X:juri_wada

『隣人X -疑惑の彼女-』

『隣人X -疑惑の彼女-』
©2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 ©パリュスあや子/講談社

惑星Xで紛争が起き、日本は助けを求めてきた難民を“惑星難民X”として受け入れた。誰もが謎の存在Xに不安と恐怖を感じるなか、週刊東都の駆け出し記者である笹(林遣都)は、X疑惑のかかる柏木良子(上野樹里)に近づき正体をつかもうと画策。接触することに成功した笹は良子をデートに誘い、2人は少しずつ距離を縮めていくことに。12月1日より全国ロードショー。

Staff Credit

撮影/木村 敦 ヘア/SHOTARO(SENSE OF HUMOUR) メイク/SADA ITO for NARS Cosmetics(SENSE OF HUMOUR) スタイリスト/古田千晶 取材・文/松山 梢
こちらは2023年LEE12月号(11/7発売)『カルチャーナビ』に掲載の記事です。

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