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ジャンル:フォアグリップ

フォアグリップの有名所「8種」をまとめてレビュー

執筆時期:2021年7月

※フォアグリップに関するレビューは、使用する銃器や使用者の体格、戦闘スタイルによって大きく左右されることがございます。このレビューは参考程度に留めておくことを推奨します。


ライフルやショットガンと言ったいわゆる長物銃器に、フォアエンドという部位やパーツがある(別名ハンドガード被筒)。銃身を覆うように設計されたフォアエンドは、サポートハンド(要するに引き金を引く方とは逆の手)に、長くてフロントヘビーな長物銃をしっかりと保持して支えるというお仕事を与え、それと同時に射撃の度に加熱していく銃身からサポートハンドを守る役目もある。

近年、20mmピカティニーレール等の普及により、フォアエンドは様々なオプション機器を取り付けるプラットフォームとしての役割もある。まるで5才児がレゴで遊ぶかのように、銃器にやれダットサイトだのウェポンライトだの、レーザーポインターだのとゴテゴテと余計なものを取り付けて文鎮制作に勤しんだ経験がある者はさぞ多いことだろう。

そして、フォアエンド下部には、多くの人がフォアグリップというオプションパーツを取り付けている。フォアグリップは、元々はサブマシンガン等の連射を前提とした一部の小火器に、連続射撃時の安定性を増すためのパーツとして取り付けられていた。昨今ではそれ以外にも疲労軽減や、複数のターゲットに対する速射性の向上等の理由で、小銃や散弾銃にも取り付けられるようになり、様々なメーカーが多種多様な形状のフォアグリップを販売している。

今回は、そんなフォアグリップの中でも有名所をチョイスし、クセモノタクティカル会員数名の所感を踏まえながらレビューしていきたい。

皆さんも、これを機会に様々なフォアグリップを試していただき、新たな発展や気付きにつなげていってもらいたい。

KISS │ シンプルイズベスト


まずは余計なものを一切付けていない素の状態から。

人間工学を考えて設計されている銃器なら、この状態でも特に問題はなく使用できるだろう。Keep It Sinple Stupid!シンプルなものほど使いやすいという理論も実によくわかる。

また、所属している組織や部隊によっては許可なくオプションパーツの装着を禁止しているとこもあり、仕方なくデフォルトの状態で使っているという人もいるだろう。

 

以降のレビューにも関わってくるので、ここでちょっと一般的なフォアエンドの握り方に関して紹介しよう。今回はあくまでフォアグリップのレビューなので、詳しい説明に関してはまた別の機会でということで割愛させていただく。


基本的には、上2枚の写真のような握り方が一般的だ。

親指を除く4指はフォアエンドの横から、手のひらはフォアエンドの真下に持っていき、下からスッと包み込むように握る。

この際、握る力に関しては余計な力が加わらず、ブレを抑えるためにもあまり力を入れて握らないほうが良いというのがポピュラーな考えである。添える程度の力で良いという人も多い。


こちらはサムブレイクポジション(サムブレイクグリップとも)。先程の握り方から、親指だけフォアエンドや銃身と平行にピシッと添わせる手法だ。

親指と銃口が同じ向きなので、指差しの要領でターゲットに向けやすく、銃を左右に振り回した際にもコントロールしやすく、動かした際のブレを早期に抑えやすいという利点がある。


こちらは握らず、サポートハンドをまるで台座のようにして銃を保持する手法。

握ることによって発生する余計な振動を極力排除したい人が好んで使用する。

もちろんただ手に載せているだけなので、グリップ力は大きく低下するし、反動抑制や複数のターゲットに対する速射、素早く移動するような動きを伴う射撃には向かない。


最後にCクランプグリップ。元々は射撃競技界から生まれ、昨今のCQB(近接戦闘)人気により流行っている握り方。

フォアエンドを横から「C」を描くように掴むことからその名が付けられている。ただ横から握っているだけでなく、後方に引くことでストック(銃床)と肩をより密着させやすくなる。

サムブレイクポジションよりも、反動抑制や複数のターゲットに対する動きがより効果的に行うことができ、フォアグリップとの親和性も高いことから人気である。

また、銃と体をターゲットに対して正対させやすいので、ボディーアーマー等の防弾装備を効果的に使用しやすい利点もある。

弱点としては長い時間構えることが難しく、力の加減や肘の伸ばし方によっては弾着がサポートハンド側に引っ張られやすい傾向が出てしまう。また、その姿勢によってはサポートハンド側の視界を少し妨げることにもなる。

以上の基本(+アルファ)の構え方を踏まえた上で、各種フォアグリップのレビューに移ろう。

市販されているフォアグリップは星の数ほどあるが、種類は大雑把に大きくわけると3種類ある。

バーティカルフォアグリップ(Vertical foregrip):フォアエンドや銃身に対して直角に装着されるグリップ。

アングルドフォアグリップ(Angled foregrip):フォアエンドや銃身に対して斜めの位置に装着されるグリップ。

ハンドストップ(Hand stop):上記2つと違い、正確にはフォアグリップではなくただの突起物。握ることはできないが、何もグリップ類を付けていない状態と比べて、サポートハンドを後方にロックすることができる。

Magpul – RVG、MVG


検証人数:4人

検証銃器(いずれも実銃):M4A1系、M16A2系、AK101系、Type89、Type64、G3系、MP5系、Scorpion EVO 3系

マグプル社の代表的なバーティカルフォアグリップ。20mmレールに装着されるタイプはRVG(Rail Vertical Grip)、MOEハンドガードやM-LOKタイプのハンドガード用はMVGと呼ばれる。

それまでバーティカルフォアグリップの代名詞と言えばナイツアーマメント社のForward Pistol Gripだったが、より人間工学に基づいたデザイン、9cm弱に抑えられた全長、20ドル前後と1/3ほどの低価格により、大ヒットとなったバーティカルフォアグリップ。

直方体と楕円形の中間のような形状で、どの部位も角を落としており、グリップ部に滑り止めのテクスチャを施している。

ナイツアーマメント社や他社製品のように、グリップ内部に小物を収納できる機構にはなっていない。


バーティカルフォアグリップの代表的な持ち方も何種類かある。それも若干踏まえてこいつのレビューをしよう。

まずは近年悪く言われがちなこの握り方。テニスグリップブルームスティック(ほうき)グリップとも呼ばれている。

左右へのブレが場合によって、何も付けずフォアエンドを普通に保持した状態よりも大きくなってしまう。そのことにより、射撃の反動でサポートハンド側に銃が持っていかれやすくもなってしまう。

これらを軽減するには、グリップの前後位置の最適化、握る位置を上に、握る力の加減、後方肩付けへの最適な引き込みが重要になってくる。まぁまた別の機会で話そう。

ただ、あまり力を入れなければ、腕が疲れにくい持ち方でもあるので、私はこの保持方法が一概に悪いとは言わない。疲労が溜まった際や、射撃中以外での使用も良いだろう。要は使い分けだ。

RVG・MVGはポピュラーなバーティカルフォアグリップと比べて少しだけ短めなので、この保持方法も視野に入れている人は手の大きさによっては少し短いと感じるとのこと。私のような小さめの手だとちょうどよい長さだ。

基部に近いところまで持てるので、ナイツアーマメント社のForward Pistol Grip等のポピュラーな長めのグリップと比べて安定感とハンドリングのしやすさがあると感じる人が多かった。反動の大きな銃器での射撃でも、ブレを抑えやすい。


このフォアグリップはサムブレイクポジションに最適化するように設計されており、上面のくびれ部分に指をかけやすくなっている。

RVGは基部を20mレールに装着するために必要なネジを付けなければいけないので、若干基部が出っ張ってはいるが、この手の製品のなかでは抑えられており、基部にいたるまで角がうまく丸められているのでグリップへの阻害になりにくい。


Cクランプグリップにもハンドストップの役割として使いやすい。フォアグリップの基本はバーティカルフォアグリップから始まると言われている。テニスグリップ、サムブレイクポジション、Cクランプ等の様々な保持方法が可能なので、ここから自分のスタイルや銃によって何が足りない、どうしたいのかを模索することができる。

左右へのハンドリングも手を引っ掛けれるスペースが大きく、力を入れやすいので、遠心力によって生じやすいグリップと手との隙間はあまり感じない。


実は私を含めて3名が、バーティカルフォアグリップに始まり、紆余曲折様々なフォアグリップを試しての試行錯誤をしながらも、結局はバーティカルフォアグリップに戻ってきている。様々な保持のやり方ができる柔軟性の高さが良いからだ。

基本的に軍事系にしろ警察系組織にしろ、銃は構えたり射撃をしたりする時間よりも、ただ持って歩いているだけの時間の方が圧倒的に長い。バーティカルフォアグリップを用いると、疲労に合わせて保持方法を変えて、疲労軽減を行うことができる。

特に私は、最初に購入したフォアグリップがこのRVGであり、いろいろと試した末にこのRVGに戻った。小さめながら、手に優しく持ちやすいデザインが良い。

現在私はこのRVGを用いて、写真のように親指をハンドガードに回し込むのではなく、伸ばし気味のCクランプとサムブレイクポジションの中間のような構えが好みだ。

BCM – Gunfighter Vertical Grip


検証人数:2人

検証銃器:Type89、HK416D(エアソフトガン)、M4A1系(エアソフトガン)

カスタムガンパーツメーカーであるBCM(Bravo Company USA:ブラヴォーカンパニー)が開発した、5度の浅い角度が付けられたバーティカルフォアグリップ。写真の全長11.6cmのロングバージョンと、全長7.6cmのショートバージョンがある。ショートバージョンには20mmピカティニーレールだけでなく、Key-Mod版も用意されている。

さらに改良廉価版としてGunfighter Vertical Grip Mod3があり、こちらはショートバージョンをベースに若干のサイズ見直しが図られ、レールへの取り付け用のボルトベース部を小型化しているのが特徴だ。

普通のバーティカルフォアグリップではダメ、かと言ってアングルドフォアグリップでは角度が付きすぎているし使いづらい…という人の需要をうまく取り入れている。

グリップ底部には防水パッキンが付いた小物入れがある。


このフォアグリップの最大の特徴は、傾斜を前方に持っていくか後方に持っていくかで、その人の銃器や射撃スタイルに合わせることができる点だ。写真は傾斜を後方にした場合。

通常のバーティカルフォアグリップに若干の傾斜をつけたことで、ガンハンドリングのコントロール性を高めたとのこと。だが、私のように手が小さい者だとレールと接続しているボルト基部の太さがあるので、特に写真のようなCクランプで構えた場合は手が窮屈に感じる。サムブレイクポジションの場合も基部の太さの違和感を感じる。要するに私の場合は手に合っていないので、このグリップで連続射撃やガンハンドリングを行った際、Cクランプであろうと、サムブレイクポジションであろうと、反動抑制性能はテニスグリップをした際とほぼ変わらなかった。

手が比較的大きめの成人男性に試してもらった場合はそこまでの大きな違和感を感じないとの意見だが、フィット感はやはりマグプル RVGのほうが良いとのこと。

コンセプトは良いのだが、基部やグリップ上部をもう少しダイエットさせ、エルゴノミクスデザインを再設計してほしい。そういう意味では、未検証ではあるがMod3が良いのかもしれない。


今度は傾斜を前方に配置した場合。写真ではCクランプをしているが、本来はテニスグリップをした際に手首の角度が自然になり、前腕部に力を入れやすくする特性があるとのこと。

この状態は、小銃よりも重くて連射が前提で、反動の大きい機関銃で効果を発揮するようだ。基点を指ではなく、腕で振り回すため、このグリップだと力を入れやすくなる。

これで写真のように小銃に取り付け、Cクランプやサムブレイクポジションでガンハンドリングをした際は傾斜を後方に持っていった時よりも若干違和感が増したので却下となった。

 

後編(アングルドフォアグリップ、ハンドストップ編)はこちらへ ↓ ↓

【レビュー】 フォアグリップ 有名所各種レビュー(後編)