『おひつ』って便利だ。

「江戸時代では炊き立てのご飯を一日に一回しか食べられなかったそう」

僕は、その話を初めて聞いた時「ってことは、冷めた美味しくないご飯ばかり食べていたのか」と思ってしまった。でも昔は今よりも遥かにお米中心の食事をしていたはず。そんな時代に、冷めた美味しくないご飯を好んで食べるだろうか。

こんな事を考えていると、ふと『先人の知恵』という言葉が頭に思い浮かんだ。先人たちは炊飯器や冷蔵庫、それどころか電気すら無かった時代に、どうやって水分量が多くて腐りやすいご飯を保存していたのだろう。調べてみると、暮らしの道具『おひつ』の存在に辿り着く。

今回は昔の人の知恵にならい、現代でもおおいに生活の助けとなってくれる『おひつ』についての記事を書いていこうと思う。

炊き立てのご飯はすぐ『おひつ』へ

先人は炊飯後すぐに、ご飯をおひつに移す。

わざわざおひつに移す理由に関しては、食卓にごはんを運ぶためといった理由も考えられるけど、実際はご飯を鍋に放置するよりも、おひつに移した方がより美味しく保存できるから。

ご飯は水分量が多く乾きやすい。だから少しの間机の上に放置したり、炊飯器の保温機能をつかうと、炊き立てのご飯の美味しさはどんどん損なわれていく。多くの人は、ご飯を炊いたあと保温機能を使って炊飯器に放置していたり、そうじゃなくてもプラスチック製のタッパーに移して冷蔵庫に入れていることが多いとと思う。でも、ご飯を美味しく保存する上でもっとも重要なのは、保存している間の”調湿”に目を向けること。

では、どうやって上手に”調湿”するのか。答えは前述したように、ご飯を炊き終わったらすぐに調湿性の優れたおひつに移すこと。そして、その調湿性の面で最も優れているのが木製のおひつだ。実際、普段から木製のおひつを使っている僕からすると、この作業はとても大切に感じられるし、おひつにお米を移すまでが”炊飯”と言えるくらい。

木製の『おひつ』を使うメリット

ご飯を美味しく保存するための道具『木製のおひつ』。これを実際の生活で使うと、どんなメリットがあるのだろう。

いつでも”おいしいご飯”を

木製おひつを生活に取り入れることで生まれるメリットはたくさんある。炊いたばかりのご飯をおひつに移すと、お米の余分な水分をとることができ、普段食べているご飯がより美味しくなったり、少しお水を多く入れてしまっても1度おひつに入れれば、いつも通りの美味しさを取り戻してくれたりもする。

木製のおひつは、陶器(セラミック)やプラスチック製のものに比べ、とにかく調湿性に優れているので、炊き立てご飯の仕上げ工程の役割まで担ってくれる。この工程により、いつも安定した美味しいご飯を食べることができる (ご飯の水分量をついつい細かく気にしてしまう自分にとっては、多少の水量の違いは気にしなくても、しっかり美味しいご飯を食べられるのはとても便利)。

優れた調湿性で、おいしさを閉じ込める

『おひつ』は美味しさを引き出すだけじゃなく、その美味しさをしっかりと保ってくれる優れた道具。

朝に1度だけ炊飯をし、それをおひつに移す。季節を問わずまる一日くらいは、温め直しなしで十分に美味しいご飯が食べられる。それでも暖かいご飯を食べたいときもある。そんな時はおひつに入った’冷やご飯’を電子レンジで温め直す。余計な水分を持たないよう調節されたご飯は、ビシャビシャした食感にならずに、ふっくらモチモチの美味しさを取り戻してくれる。

ちょっと小腹が空いた時に

みんなはちょっと小腹がすいた時、何を食べているだろうか。

僕の家ではそんな時、おひつに入ったご飯を食べるようにしている。以前までは、冷蔵・冷凍保存しているご飯をレンジで温め直すことすら億劫に感じて、ついついお菓子を食べたり…。でも、お菓子を少しばかり食べただけじゃ結局すぐにお腹は空くし、体にもよくない。

おひつを生活に取り入れてからは、無駄なモノを食べずにもっと気軽に美味しいご飯を食べられる。買い物に行った際に、ついでにお菓子を買うこともほとんどなくなった(育ち盛りのお子さんがいる家庭では、本当に大活躍すると思う)。

「小腹がすいたら茶碗にご飯、経済面でも健康面でも役に立つ暮らしの道具」

「おひつ」の日々のお手入れ

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天然木をふんだんに使うことで作られる『おひつ』。

「素材が繊細そうで、お手入れが面倒くさそう」と思う人も多いと思う。

でも実際のお手入れはとても簡単なもの。

  1. 使用後、水に当てながら木目に沿って、たわしで優しく擦るようにして洗う(洗剤は不要)。
  2. たわしでお米を落としたら布巾などで軽く水気をとり、日が当たらない風通しの良いところでしっかり乾燥させる…だけ。

僕の家では、朝にご飯を炊いてそれをおひつに移す。夜になったら余ったご飯は冷凍保存。その後おひつを洗い、朝までしっかり乾燥させるようにしている。

「お手入れは本当に簡単なので、それを心配する必要は全くなし」

僕が愛用している『おひつ』

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おひつにも高級品と言われるものがあって、それらの多くは伝統工芸品としての魅力もった良品。

でも暮らしの道具として使うには、少し勇気のいる価格。とくに初めて木製のおひつを買う人にとってはなかなかにハードルの高い価格帯のものもある。

「毎日使うものだから! 」といきなり高級品を買うのも良いと思う。でも個人的には自分の暮らし方に「おひつ」がどんなふうに役立ってくれるのか、をしっかりと把握してから少し良いモノを買うのもまた1つの手だと思う。

ここで僕が実際につかっている「おひつ」をご紹介したい。

僕が使っているおひつは、木曽工芸がつくる『江戸型のおひつ』(かぶせ蓋の江戸型おひつの他に、のせ蓋の関西型おひつもある)。

価格は3合用で約14000円と、『おひつ』を全く使ったことがない方は少し高く感じる価格かもしれない。とは言え、おひつは高いもので5万円を裕に超えてくるもの。その事を考慮すると、このおひつは価格と機能性、仕上げの丁寧さの3つの観点からみてバランスの取れた商品。

素材には、天然の木曽さわらが使われている。さわらの特徴は、優れた耐久性と吸湿性、殺菌作用を持ち合わせているところ。それと個人的には、ヒノキやスギのものに比べ”木”そのものの香りが弱いので、ご飯に余計な匂いがつきづらいところも嬉しいところ。

作りの面では、タガ(銅の輪っか部分)が外れないのがとても実用的。我が家では、風呂桶も天然木のものを使っているけど、乾燥した状態が長く続くとタガ(桶を束ねている銅の部分)がよく外れることがあった。でも、この『おひつ』はタガが外れづらいよう、木部にはめ込むような仕様になっているので、タガが外れるという心配をする必要がない。

おひつのある暮らし。ーまとめー

食卓を彩るおひつ

おひつの存在は知ってても、自分の暮らしでどのくらい使えるものなのかは、使ってみなければわからないことこれまではおひつの優れた機能面について長々と語ってきたが、おひつがもたらすメリットは機能面だけに収まるものではない。

食卓の真ん中におひつ。

いつもと変わらないメニューが並んでいるはずなのに、少しだけ豪勢な食事をしている気分に。

これは『おひつ』を導入してから気づいたこと。小さいことかもしれないけど、食卓の上の雰囲気がよくなると、毎日の料理も少しだけ楽しくなる。

『おひつ』のような暮らしの道具には忙しい毎日をおくる僕たち現在人に、改めて生活の楽しさを教えてくれる力がある。この記事を読んで「おひつのある暮らし」をおくってみたい!と思える人が少しでも増えてくれたらとても嬉しく思う。

2022-09-13|
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