粟穂稗穂(読み)アワボヒエボ

デジタル大辞泉 「粟穂稗穂」の意味・読み・例文・類語

あわぼ‐ひえぼ〔あはぼ‐〕【×粟穂×稗穂】

小正月行事の作り物の一。ヌルデの短い棒を削りかけにして粟穂に、そのままのものを稗穂に見立て、割り竹などに刺して門口・庭・畑などに飾り、豊作を祈るもの。

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精選版 日本国語大辞典 「粟穂稗穂」の意味・読み・例文・類語

あわぼ‐ひえぼ あはぼ‥【粟穂稗穂】

〘名〙 関東東北をはじめ広く行なわれる小正月の作り物の一つ多くはヌルデ、ニワトコなどの木を一〇センチメートル程に切り、削りかけにしたものを粟穂、皮つきのままのを稗穂とし、割り竹につけて豊作を予祝する。

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改訂新版 世界大百科事典 「粟穂稗穂」の意味・わかりやすい解説

粟穂稗穂 (あわぼひえぼ)

その年の作物豊穣を予祝する小正月の呪術一種で,アワヒエの豊熟したさまを表す作り物。東日本に多い。材料にはヌルデなどの枝を用い,形状は10cmくらいに切った枝を穂に見たて細い割竹の先にさして穂垂れにしたものや,30cmくらいの枝を十数本束ねたものなどがあり,神棚に供えたり,庭先堆肥の上に立てたりした。また,枝の表皮をはいだ方を粟穂,皮つきのものを稗穂と呼び分ける所もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「粟穂稗穂」の意味・わかりやすい解説

粟穂稗穂
あわぼひえぼ

小正月の豊作祈願の一形式で、アワやヒエの豊熟したさまを表す作り物。ヌルデなどの枝を10センチメートルぐらいに切り、割り竹の先に刺して穂垂れの形にしたものや、20センチメートルぐらいの枝を十数本束ねたもの、小餅(もち)、団子を枝につけたものなどがあり、神棚に供えたり、屋外に飾りつける。枝の表皮を剥(は)いだのを粟穂、皮付きの稗穂と区別する所もある。広く分布していたが、アワ、ヒエ栽培の衰退とともに、ほとんどみられなくなった。

田中宣一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「粟穂稗穂」の意味・わかりやすい解説

粟穂稗穂
あわぼひえぼ

アボヘボともいう。小正月にヌルデの木を6本ずつ束ね,前庭や堆肥の上に立てて,豊作を祈る呪法。東北地方に多い。

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世界大百科事典(旧版)内の粟穂稗穂の言及

【削掛け】より

…小正月に神棚や戸口,神社などに飾るが,花が開き,穂が垂れた形には一年の豊作を予祝する意味がこめられている。小正月の〈祝棒(いわいぼう)〉にも削掛けをほどこしたものが多く,ヌルデなどを削掛けにしたものをアワの穂に見たて,〈粟穂稗穂(あわぼひえぼ)〉といって実りを予祝する習俗は東日本に分布している。アイヌのイナウ(イラスト)も削掛けの一つであるし,山形県の笹野一刀彫などの民芸にもこの技法が残されている。…

【農耕儀礼】より

…西日本の一部では,1月20日を〈麦正月〉といって,麦飯ととろろ汁を食べて麦畑に出かけ,そこに蓑(みの)を敷いて麦の実が満ちた状態の所作を行った。東日本では,1月20日は〈粟穂(あわぼ)・稗穂(ひえぼ)〉といって,ヌルデの木を10cmくらいに切り,皮をむいて白くしたものを粟穂,皮つきのものを稗穂にみたてて,割竹の先にさしたり,藁(わら)で結んだりして庭前に立てる。いずれも麦やアワ,ヒエの豊作を祈願した行事である。…

※「粟穂稗穂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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