【処遇改善加算】算定対象期間と賃金改善実施期間の関係

社会保険や労務のお話

8月末で、処遇改善加算ベースアップ等支援加算計画書の提出が一通り終わりましたー。
処遇改善加算に関わったみなさま、お疲れさまでした。

処遇改善加算に関する届け出は、加算を取得しようとする月の前々月の末日までに提出することになっています。

10月から新たに創設されたベースアップ等支援加算を取得するためには、8月31日までに計画書を提出する必要があり、てんやわんやでした。

処遇改善加算の移り変わり

介護、保育、看護、幼児教育、障害福祉等の分野で働く労働者の平均給与は、他の業界よりも少ないという統計が出ています。
そのため厚生労働省は、他業種との賃金格差を縮め、雇用の場としてさらに成長していけるよう、介護職員の処遇の改善に取り組む事業所へ資金の交付を行うという名目で助成金を創設しました。
それが現在の「処遇改善加算」の基礎となっています。

その後、助成金という形ではなく、介護サービスの報酬に組み込ませることとし、
さらに現行の処遇改善加算とは別建てとして、経験・技能のある介護職員に対して、さらなる賃金向上を行う「特定処遇改善加算」が創設され、待遇改善が図られることになりました。

令和4年度には、2月から「処遇改善支援補助金」が始まり、それをベースに10月からは「ベースアップ等支援加算」に移行します。

と、今回はほぼ同じような仕組みを引き継ぐのに、改めて8/31までに計画届を提出しなければならなかったのですよね。

算定対象期間と賃金改善実施期間

処遇改善加算は、1年ごとに計画を立てて動きます。
これを算定対象期間と言い、毎年4月~翌年3月の1年間です。
(年度途中に加算を始める場合は、その月~翌年3月までの期間。)

4月サービスの介護報酬に加算される処遇改善加算から、職員の賃金改善を行っていくわけですが、
じゃあ、いつの給与から分配を開始するのか、というのが賃金改善実施期間(下図の赤枠のところ)です。
計画書に記載して提出しているはずです。

この賃金改善実施期間を「4月~3月」として計画書を提出している事業所を見かけます。
(きちんと理解した上でこう計画している場合はもちろん何の問題もありません。)

改善実施の基準月は、実際に賃金を支払った月とされていますので、
これは「4月払の給与から、職員に加算を分配し始めます」という意味です。←ここが要注意!!

賃金改善実施期間は原則としては4月~3月ですが、事業所が下記4パターンから任意に決めてよいとされています。

賃金改善実施期間は4パターンから選択

 

  • パターン①:4月~3月 サービス提供期間と同時期(←これが原則ではある)
  • パターン②:5月~4月 国保連からの通知と同時期
  • パターン③:6月~5月 国保連からの入金と同時期(←お勧めするとしたらこれ)
  • パターン④:7月~6月 国保連からの入金後
サービス提供から入金までの流れ

4月に利用者さんにサービスを行った場合、
5/10までに国保連に介護報酬を請求することになり、5月中に国保連から「加算額のお知らせ」という通知書が届きます。
そして実際に国保連から事業所に加算が入金されるのが6月。

なので、4月サービスの加算金を、4月払の給与として職員に支給するということは、
つまりまだ入金されていない加算金を、一時的に事業所が立て替えるということです。
サービスの実施状況や、5月に届く通知書から、だいたいの金額を予想することは可能ではありますが。

パターン①・②は事業所の立て替え期間が生じる

私はこの賃金改善実施期間の開始時期を4月にするメリットがわからず、
先日とある処遇改善加算のセミナーに参加した際、講師の社労士の先生に質問してみたところ
事業所側のメリットはあまりないだろうということでした。

以前は、この賃金改善実施期間のパターン例として原則の「4月~3月」が公表されていたそうなので、おそらくそれを見た事業所がそのまま採用して今に至るケースが多いのではないかと。

資金力がある事業所であれば、1ヶ月でも早く職員に還元してあげたいという思いから、最短の4月から分配を開始すると計画し実行することは素晴らしいと思います。

が多くの場合、加算額が未確定のまま、最大2ヶ月分を立て替えておくのはなかなか難しいのではないでしょうか。
自社の資金繰りを考慮し、賃金改善実施期間については、慎重に検討された方がよいと思います。

パターン③・④は加算の入金後に分配することができる

例えば15日締・当月末払の会社の場合、
賃金改善実施期間をパターン③(6月~5月)と設定すると
月中旬に入金された4月サービス加算分を、6月末払の給与にて払い出すことが可能です。

月末締・翌月10日払の会社の場合は、
賃金改善実施期間をパターン④(7月~6月)と設定すると
4月サービス加算分が6月中旬に入金された後、7/10払の給与として支給することが可能となります。

なお、指定権者(提出先の都道府県や市町村)により、パターン④はちょっと…と言われることがありましたので、必ず事前に確認をして下さいね。

まとめ

これから加算を受けるのであれば、賃金改善実施期間の意味をきちんと理解した上で選択をしてください。

また、年度途中で変更することはできませんので、年度切替のタイミング(毎年原則2月に計画書を提出する際)に、変更を検討しましょう。
(変更する場合、前年度や今年度に支給される賃金改善実施期間と重複することは不可ですが、後倒しすることは可能とされています。)

どれを選択したらよいかわからない場合などは、お気軽にご相談ください。

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