可児市文化創造センターは創設にあたって、1996年、公募による35人の市民委員に可児市の文化センター建造のための基本構想を委嘱し、その答申を受けて翌年基本計画が策定されている。その後、それまでの協議が反映できるように設計方針や考え方の提案を募るプロポーザル方式を採用した結果、(有)環境造形研究所(現在の香山壽夫建築研究所)に設計が決まった。香山はペンシルベニア大学でルイス・カーンに師事し、様々なコミュニケーションの場として特徴づける公共建築の設計を学んだ後、彩の国さいたま芸術劇場(日本建築学会賞、村野藤吾賞受賞)や長久手町文化の家を完成させていた。基本設計着手と並行して、市民活動研究会における設計ワークショップを反映させることで実施設計を作り上げていった。2000年着工、2002年開館。その施設の愛称「ala」はイタリア語で「翼」を意味し、文化施設内にある大小さまざまなホールや各スペースのためにできる高低差をおおらかに覆う大きな屋根を表すと同時に、文化創造の場として21世紀にはばたくことを示している。

可児市文化創造センターでは2008年度より毎年大型市民参加プロジェクトを実施しており、3年周期で、ミュージカル、コンテンポラリーダンス、演劇を交代で開催している。このプロジェクトには毎回100名程の市民が参加しており、キャストだけでなく小道具や衣装の制作など多岐にわたってかかわっている。ここでいう市民参加は、いわゆる貸し館になるのではなく、日本を代表するプロのスタッフやキャストを招聘して共演・協働制作することで、市民の創作意識を高めることを目指している。ミュージカルがこのプロジェクトの第1回目を飾り、「あいと地球と競売人」を公演、その3年後の第2回目以降は「スタンド・バイ・ミー」をモチーフにして瀬戸口郁作・作詞、上田亨作曲・音楽監督、黒田百合演出で可児オリジナルミュージカル「君といた夏」を上演してきた。コンテンポラリーダンスでは古谷誠一指揮による可児交響楽団の演奏で年ごとに曲目と振付家を変え「オーケストラで踊ろう!」を公開してきた。演劇では岸田國士戯曲賞を受賞した柴幸男や文学座からの客演をむかえ、ソートン・ワイルダーの名作「わが町」を原作に、可児のまちに暮らす普通の人々のかけがえのない人生を描いてきた。

また、可児市文化創造センターでのレジデンス事業として、「ala Collectionシリーズ」がある。過去の優れた戯曲をもとにプロのキャスト・スタッフが1か月半可児に滞在して舞台制作を行っている。新作ばかりを重視して戯曲が消費され続ける状況があるのに対して、過去の優れた戯曲を活用して作品を再評価している。滞在制作事業として、第一線で活躍する俳優・スタッフを招聘することで、可児市から全国に質の高い作品を発信している。さらに、市民サポーターがケータリングや小道具づくりなど、舞台の製作をサポートすることで、市民に第一線の舞台制作を間近で体験できる機会を作り出している。

可児市文化創造センターでは、舞台芸術に限らず、必要であれば館を出て市民と芸術活動をする「alaまち元気プロジェクト」や、など、「市民参加プロジェクト」に加えて独自の活動をおこない、文化庁の「平成25年度劇場・音楽堂等活性化事業(特別支援施設)」に採択され、5年間の事業補助を受けている。

https://www.kpac.or.jp/ala/shiminsanka/