2024.03.13

「地域交流拠点」から広がる、まちづくり。小さな変化の出発点に。

「地域交流拠点」がまちづくりの出発点に

黄金町ロックカクで実施された「のきさきアートフェア」の様子。

京急沿線地域で、「地域交流拠点」と呼ばれるひろばの活用が広がっています。”ひろば”と言っても、駅前の再開発予定地や駅と駅をつなぐ高架下など、その実態はさまざま。コンセプトや活用方法も地域によって異なります。

これらの地域交流拠点は、行政や地域事業者、大学などの教育機関など「地域」主体で活動の場として利用しており、地域住民も巻き込んで、まちの課題解決や魅力の向上、地域交通の導入に取り組んでいます。今回は、各地の地域交流拠点の魅力的な取り組みとそこから発生したまちの変化についてレポートします。

地域交流拠点の取り組み事例

地域交流拠点では、そのまちにしかない独自の文化や住民の特色を生かしたまちづくりに取り組んでいるほか、エリアによっては地域のニーズや課題を吸い上げる実証実験の場としても活用されています。各地域交流拠点でどのような取り組みを行い、どのような成果を出しているのか、5つのケースを見ていきましょう。

①「平和島駅前地域交流拠点」

地域事業者による音楽ライブの様子。

2022年8月、平和島駅前にオープンしたのが駅隣接の「平和島駅前地域交流拠点」。人々の出会いや交流の機会を創出することを目的に、地域の人が気軽にイベント開催や交流ができる「えきまえリビング」や、さまざまな働き方に応えるレンタルスペース「タイニーハウス」などが実験的に設置されたほか、産学連携イベントや移動式子ども食堂などが開催され、地域住民のニーズを吸い上げる場として利用されています。

こうした実証実験の結果は、2026年開業予定の駅前複合施設開発や大田区との公民連携によるまちづくりに活かされており、地域に必要な機能や課題を実証する場としても活躍しています。

たとえば、ひろば内に設置したシェアサイクルポートは、大田区内のポートの中でもトップクラスの利用者数を記録していることがわかっています。このことから想定されるのは平和島駅からJR方面への接続ニーズの高さや大田区臨海部方面への通勤手段としての需要、周辺公園へのアクセス手段としてのニーズの高さです。こうした分析は地域住民の移動課題の顕在化に役立ち、交通結節点として駅を強化する必要があるとわかりました。

一方で、当初予想したニーズと異なる使われ方をしているのがレンタルスペース「タイニーハウス」です。設置当初は、リモートワークやオンライン会議の場としてのシェアオフィス機能での活用が想定されていましたが、実際に運用するとシェアオフィスとしての利用率は低く、地域の住民の方のちょっとした集いや飲食をしながら談笑するレンタルスペースとしての利用が多いということが分かりました。また、短時間での利用を見込んでいましたが、長時間での利用が多いこともわかり、滞在拠点の重要性が見えてきています。

「自分たちにとって何が必要で、何が必要ではないのか」。地元の事業者や地域住民自らが実証実験を繰り返し、「本当に必要な機能」を吸い上げていくことで、まちの価値最大化を目指す、エリアマネジメントがまちづくりを先導するかたちを具現化しています。

「チョーク落書き」ができるゾーンは地域の保育園のお散歩コースに。子ども達のにぎやかな声で、駅前に活気が生まれています。

平和島駅隣接地域交流拠点
所在地:所在地:東京都大田区大森北6丁目95番1
施設詳細:平和島駅前地域交流拠点 – newcal – 京急沿線おでかけサービス

②「Park Line 870」

東海道と京急線が交差する場所に位置する「Park Line 870」。

2023年4月、京急線八丁畷駅前にオープンしたのが、『Park Line 870』(パークラインはっちょう)。「Park Line」という言葉には、「道路だった場所を公園のように活用し、皆が憩う空間にする」という意味が込められており、「870」(はっちょう)は川崎宿から隣の市場村(いちばむら)までの田畑の中をまっすぐに通る道が約870m(八丁)であったことからつけられているとのこと。 また、東海道と京急線が交差する場所に位置するため、施設内には、旧東海道川崎宿起立400年を記念した旧東海道の案内も設置しています。

「地域の歴史をつなぎ、人をつなぐ交流拠点」となるように、との願いを込め、川崎市と地域の事業者、神奈川大学が産学連携で運営。これまでイベントスペースやフードトラック、シェアモビリティステーションとして活用されてきました。なお、これらの機能の整備は神奈川大学と連携しているとのこと。本施設のオープン以来、駅前には新たなにぎわいが生まれています。


2023年8月には、地域のクラフトビール提供事業者が連携して開催した「かわさきビール祭り」が開催され、期間中は約3000名が来場するなど、まちの人流への変化も少しずつ現れているところです。

春の盛盛親子フェスタの様子。周辺にお住まいのお子様連れが多く来場し、駅前のいこいの場として親しまれています。

Park Line 870
所在地:神奈川県川崎市川崎区池田1-16(京急線八丁畷駅徒歩1分)
施設詳細:Park Line 870 – newcal – 京急沿線おでかけサービス

③「よりみちガーデン」

イベント時には地域の人々でにぎわいます。

2022年12月、金沢文庫駅から徒歩8分、金沢区総合庁舎前にオープンした『よりみちガーデン』は、“暮らしをつくる場所”をテーマにひと・もの・商いが集まるシェアスペース。京急沿線でキッチンカーを展開する事業者や地域事務者、コミュニティマネージャーなどの地域に関わるメンバーが共同で運営を行い、地域のコミュニティを形成しています。

スペース内では、カフェやダイニングなどの飲食店営業、食品を扱うワークショップや料理教室に利用できる「シェアキッチン」や、サロンや小規模の教室、打ち合わせスペースとして活用できる「小商いブース」などを設置。さまざまな趣味やスキルを持つ人が、やりたいことを実現できる場所として開かれており、地域の人々や訪れる人との交流によってまち全体に活動が広がっていくことを目指しています。

室内はもちろん屋外スペースも充実しています

よりみちガーデン
所在地:神奈川県横浜市金沢区泥亀1丁目25番11号
施設詳細:横浜市金沢区のシェアキッチン付帯型コミュニティ施設「よりみちガーデン」 – newcal – 京急沿線おでかけサービス

④「黄金町ロックカク」

“アートによるまちづくりの拠点”として高架下に誕生しました。

2020年8月、”地域とつながり、地域とともに発展する地域交流拠点”として京急線日出町駅〜黄金町駅の高架下に誕生したのが『黄金町ロックカク』。遊休地となっていた、高架下スペース「黄金町第6区画」を活用し、地域住民の声を反映した実証実験の場として、まちづくりに活用されています。

これまで、地域のアーティストやクリエイターが手がけた作品が並ぶ「のきさきアートフェア」や、黄金町のローカルマルシェ「はつこひ市場」など、さまざまなイベントやショップを実施。
地元の人がアートと出会う場としてにぎわっています。また、事業者やアーティストにとっても、地域とつながり、新しいチャレンジを始める舞台として開かれていることから、まちづくりのさらなる発展が期待できます。

幻想的なあかりが灯される「ヨルノヨ」の様子。

黄金町ロックカク
所在地:神奈川県横浜市中区黄金町2-69先 (京急線黄金町駅徒歩5分)
施設詳細:黄金町ロックカク イベントスペース募集 – newcal – 京急沿線おでかけサービス

◼️地域交流拠点が生んだ、まちの小さな変化

今回ご紹介したうだる各地域交流拠点はすべて、自治体や地域事業者、教育機関や住民など、地域に関わる人々が主体となって運営していました。地域で働く人や暮らす人が積極的に意見やアイデアを交わすことで、地域交流拠点はたんなる交流の場でなく、まちづくりの出発地点として機能し、まち全体に小さな変化を起こしています。

“アートによるまちづくり”の拠点として京急線日ノ出駅〜黄金町駅の高架下に誕生した『黄金町ロックカク』の存在は、まち全体でアートを楽しむイベントの実施や、アートに関連したショップ・施設のオープンにつながっており、地域交流拠点を飛び出した自然発生的なまちづくりに貢献しています。

横浜市金沢区の『よりみちガーデン』は、まちの魅力認知を目的とした「まちあるきツアー」の拠点として利用されました。その結果、地元の小さなお店や隠れたスポットにスポットライトを当てることに成功し、まち全体を活気づけています。

住民目線で課題を見つけるまちづくり

「まちづくり」というと一般的に、「まちの魅力をどのように引き出すのか」ということや、その経済効果などに着目しがちです。一方で、少子高齢化や子育ての課題が大きくなった今、これからのまちづくりにおいてより重要なのはまず、まちの課題を抽出し、ニーズを吸い上げ、そのまちにとって本当に必要な機能が何かを知ることではないでしょうか。もちろん、地域課題や住民のニーズはエリアによって異なり、どんな地域課題も解決できる“万能なまちづくり”は存在しません。だからこそ、そのまちを知る人、そのまちに住む人が自ら動き、「今、このまちに何が必要か」を考える必要があるのです。

京急沿線地域では、各エリアの自治体や事業者、教育機関、住民らが連携し、地元の課題やニーズを吸い上げるために地域交流拠点を活用しています。実証実験を繰り返し、地域の真のニーズを探る場の存在は、まちづくりを自分ゴトとして捉えて自発的に参加できる“まちづくり人材”を育み、自然発生的なまちづくりを加速させるでしょう。

京急沿線地域では、今後ますます地域交流拠点を活用したまちづくりが活発化していきそうです。住民に加えて、まちづくりに取り組んでみたい自治体、事業者、教育機関などが連携して地域交流拠点の運営やイベントを開催する京急沿線の動きに今後も期待です。