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女芸人・黒沢かずこらが自分自身を演じ、
リアルな悩みを切なくコミカルに綴ったラブ・コメディ
『クロサワ映画2011 ~笑いにできない恋がある~』
黒沢かずこ&渡辺琢監督インタビュー

 2010年の第2回沖縄国際映画祭で2冠を達成した『クロサワ映画』の好評を受けて制作された『クロサワ映画2011 ~笑いにできない恋がある~』が、11月26日(土)より梅田ブルク7ほかにて公開される。お笑い界のトップを走る“独身”女芸人の黒沢かずこ(森三中)、椿鬼奴、オアシズの光浦靖子と大久保佳代子が本人役で登場し、結婚できない女たちの悲哀と葛藤をリアルに描く。本作での、黒沢かずこの恋の相手にはコン・テユ演じる韓国人青年のパク。恋に奥手な黒沢と積極的なパクの恋の行方が、女性目線で痛いほど切なく綴られる。本作の公開にあたり、主演の黒沢かずこと、『クロサワ映画』に引き続いて監督を務めた、フジテレビのディレクター、渡辺琢監督が来阪した。

 

 『クロサワ映画』に引き続いて黒沢かずこ本人を演じた黒沢。実生活では、全く色恋ごとはないとテレビなどで言われている黒沢だが、映画の中では自分から連絡先を聞けなくて悩んだり、デートに誘われてあたふたしたりと、2作連続で恋に落ちたている。映画の中とはいえ、そんな風に恋に落ちた黒沢の心境は?

 

黒沢:恥ずかしいですね。プライベートで恋愛している姿を、オアシズさんや鬼奴はもちろん、地元の友だちにもあまり見せたことがないので。地元のメンバーには、「こんなかず(黒沢)の姿見たことないから、こっちが恥ずかしい」って言われてます(笑)。自分で見ても恥ずかしいと思うんですが、映画の中でオアシズさんや鬼奴と話す時と、パクさん役のコン・テユさんと話す時の声の高さが違ったんですよ。自分でも気づかなかったんだけど、こいつ男の前で良く思われようと思ってる、男を意識してると思って、恥ずかしくなりました(笑)。

 

 では、そんな恋愛に奥手すぎる黒沢を主人公にした映画を2本連続で撮っている渡辺監督は、普段からバラエティ番組でともに仕事をしている黒沢を、映画で女性として描くにあたって、どのようなことを意識していたのだろうか。

 

監督:実際の黒沢さんはこの映画の何倍も奥手で、人の目を見て、ましてや男性となんて話せない方なんです。ちょっと一般の方とはずれすぎた黒沢さんを、多少でも一般のちゃんとした女性に近づけないと、皆さんが感情移入してくれないんじゃないかと思ったので、映画の中ではかなり奥手のように見えて、黒沢さんの中では相当積極的なんです。だから、この映画の中の黒沢さんは、実は現実離れした黒沢さんなんです(笑)。そこは、すごく意識しました。それと、黒沢かずこさんを最高に可愛く撮ることが、この企画の最初のポイントで、そうじゃないと映画にならないし、物語にならないと思ったんです。そんな可愛く撮る作戦の中でも、実行していて一番はまったのが、マフラーぐるぐる巻き作戦です(笑)。

 

黒沢:1作目に比べて、ちょっと太っちゃったんですよね(笑)。

 

監督:首にぐるぐるにマフラーを巻いて、ニット帽をかぶったら、顔面で映るところは顔の中心部分しかないんですよ。

 

黒沢:そんなことないでしょう!

 

監督:いやいや(笑)。黒沢さんは、顔立ちは美しいので、照明も美術もここだけを映すことに集中してましたね。この映画はやっぱり女性目線の物語なんですが、見てる僕たちが彼女に恋をしないといけないと思ったんです。元々僕がバラエティの仕事をしている時から思っていたことなんですが、黒沢さんってテレビに映ってる姿と違って、実際はほんとに可愛らしくてキュートな方なんですよ。それをそのまま映画に出せたら、このラブコメは面白いんじゃないかというところから始まったので。実際に僕の心の中で見えている黒沢さんは、あんな感じなんです。

クロサワ_photo.jpg

 たしかに、『クロサワ映画』での黒沢はとても愛らしく、恋をしている姿もとてもキュートで、恋に悩む彼女に感情移入することはもちろん、いつしか友だちのような感覚になって応援してしまうはず。それは、前作とも共通しているが、本作ではその悩みがよりリアルに胸に迫ってくるのだ。

 

監督:1作目の時は女芸人という職業を浮き彫りにしたかったんです。こんな商売を選択した女の人が世の中にいるんだよって。女芸人という過酷な職業を選んだ女性を描いたんですが、2作目はOLさんでも女芸人でも、女としての悩みは一緒なんじゃないかと思って、女としてぶち当たる仕事か恋かという悩みを女芸人の目線をとおして描けたらな、とおっさんなりに考えました(笑)。

 

黒沢:プライベートでは異性に近づくことがあまりないので、役柄とはいえ映画の中で男性に恋をして、1作目で異性にこういう風に近づくんだということを勉強して、2作目ではちょっと積極的にいくところもあったりして、1作目と2作目でちょっと男慣れしました(笑)。監督や周りの人が嫁に出してくれる準備をしてくれた感覚です(笑)。

 

 監督が自虐的に“おっさん”と語るように、実は監督は40代で、もちろん男性だ。にもかかわらず、「いやー、ハートマークは重いかなぁ?もう1個いっちゃう!?」や「女はみんな…白馬に乗った王子様がやってくるのを待っている」など、リアリティたっぷりの女目線の台詞がいくつもいくつも本作には登場する。それは、まるで女芸人版『ブリジット・ジョーンズの日記』のようで、まさか監督も脚本もともに男性が手掛けているとは思えない。

 

監督:1作目が終わって、連日のようにみんなで飲んだり騒いだりしてたんですけど、飲んでいる時に必ず、今回の映画の中に出てきたような「自分ひとりのために生きるのは限界だよ」とか、4人がぽろぽろもらすんですよ(笑)。あんなのおっさんには書けないですよ。そんなことばっかり言っているのに、全然幸せにならないので、映画の中ではつかの間の幸せを感じてもらおうという思いもありました(笑)。でも、映画の入口だけは現実から入りたいと思っているので、2作目を撮り終えた時に3作目も作りたいから、「誰かひとりぐらい幸せになってくれ」って言ったんです。でも、誰も幸せにならない(笑)。何ひとつ浮いた話もなく、撮影が終わって1年間何も変わらなかったね。

 

黒沢:そうですね。髪型さえも変わらなかったです(笑)。

 

監督:ほんと成長のない4人なんですよ。次回作の機会があれば、脚本作りのために誰かスキャンダルでもおこしてくれれば、それをネタに作るのに、1作目から何も変わってないんですよ(笑)。

 

 1作目から何も変わっていないと断言する監督だが、本作では実際に恋もし、ちゃんと相手に思われているシチュエーションも数多く登場する。その最たるものが“韓流サプライズ”と呼ばれる、サプライズが好きな韓国人ならではの愛情表現。劇中とはいえ、それを経験した黒沢は、実際のサプライズ演出にはどのような反応をするのだろうか。

 

黒沢 :けっこう色んなドッキリをさせられてきたので、多少のことではびっくりしないかもしれないし、そういう演出をされても、どこかでカメラ回ってるんじゃないのか? って思っちゃったりして、素直に喜べないかもしれないです。この人、裏に何かあるのかとか、疑いしかないですね。そんなに優しくされたこともないですし。

 

監督:悲しい商売だね~(笑)。

 

 と、少し切ないコメントが返ってきたが、劇中で黒沢が抱き合いもすれば手も繋いでいたコン・テユとは、撮影中に仲良くなったのだろうか?

 

黒沢:私は人見知りもするし、相手は異性だし、彼が私よりも若いこともあって、あんまり話せなかったですね。撮影していた頃は、K-POPとか韓流も見たこともなかったんです。だけど「美男ですね」を見出したらはまってしまって(笑)。だから、この前10月に会った時は、色々話しかけて聞いちゃいました。そしたら、コン・テユさんが「黒沢さんってそんな人でした?」ってびっくりしてました(笑)。

 

監督:撮影中は、テユくんだってラブコメだから、なんとか普段から黒沢さんに近づいて心を通わせようとしてるんですよ。でも、黒沢さんは全然受け付けないんです。目も合わさないし、近づいたらす~って離れていくし、最低の主演女優ですよ(笑)。僕は毎回、共演者と付き合っちゃえばいいと思ってるんですけどね。1作目ではキスもしてますしね。

 

黒沢:女性もそうなんですけど、特に異性とどう話していいのかわからないんです(笑)。

 

 恋愛にはまだまだ奥手な黒沢だが、本作で恋と仕事、結婚と仕事という女性にとっては究極とも思えることで悩む姿を披露している。そんな黒沢の理想の結婚とは?

 

黒沢 :やっぱり身内がほしいとは思います。病気の時に近くにいてくれたり、何かあった時に助けてくれたり、見守ってくれる人がほしいです。私がひとりっ子で、兄弟がいないから喪主をやるとしたら私しかいないんですよ。でも、そういう分野の常識が全然ないので、お金のことなんか全くわからないから、そういう時に「俺がやるから。何も考えなくていいよ。おまえはそこにいるだけでいいから。何も心配しなくていいから」って言ってくれるような旦那さんがいいですね。

 

監督:理想の結婚って聞かれたら、普通こういう家に住んでとか、ウェディングドレスはこういうので、とかでしょ。喪主がどうのとか言わないでしょ!?

 

黒沢:私はひとりっ子だから、両親がいなくなったら誰も私の面倒みてくれないし。子どももほしいし、違う幸せも見てみたいんですが、結婚となると難しいですね~。

 

監督:次回作のネタ、いただきですよ(笑)。不憫でならないですよ。こんな職業選んじゃってね(笑)。

 

 と、最後まで恋愛ベタで奥手な黒沢のコメントを聞きながら、「いつもこうなんですよ」と、監督が笑いをかみ殺している姿が印象的だった。しかし、そのように黒沢ら4人の悩む姿を日常的に見ている監督だからこそ、作ることができた本作は、恋や結婚、仕事に悩む女性なら誰しもが感じたことのあるリアルな迷いを切ないながらもコミカルに、そしてリアリティたっぷりに描いた、恋や仕事に悩む女性の圧倒的な共感を呼ぶラブストーリーだ。




(2011年11月25日更新)


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Movie Data



(C)吉本興業/フジテレビジョン

『クロサワ映画2011 ~笑いにできない恋がある~』

●11月26日(土)より、梅田ブルク7ほかにて公開

【公式サイト】
http://misskurosawafilm.com/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/157461/


Event Data

森三中の黒沢かずこ、村上知子、大島美幸が来場する舞台挨拶が決定!

【日時】11月27日(日) 17:30の回上映前
【会場】梅田ブルク7
【ゲスト】黒沢かずこ/村上知子/大島美幸
【料金】全席指定2000円
【Pコード】558-757

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