スマホとおカネの気になるハナシ

“約7割“に見直しの余地あり! 「スマホ料金プラン」のお得なハナシ

今回からスタートした新連載「スマホとおカネの気になるハナシ」では、多くの人が関係する、スマートフォンとお金にまつわる話題を解説する。連載第1回は、多くのユーザーにとって料金プランを見直す余地があるという事実と、契約に関する最新事情を紹介。サブブランドを選択するメリットなど料金プラン見直しのヒントになる情報も掲載しよう。

契約数の約7割が旧料金プランをまだ使っている!?

あらゆるモノの価格が値上がりして家計に大きなダメージを与えている昨今。少しでもお金を節約したいと思うものの、何を節約すればよいのか? と疑問を持つ人も少なくないだろう。「家計の節約」というと、電気料金やガス料金を思い浮かべるかもしれないが、実は意外と見直しがなされていないのが「携帯電話の料金」である。

携帯電話料金といえば、菅義偉前首相の政権下で携帯各社に大幅な引き下げが求められたことで一時期大きな話題となった。2021年にはより安い料金プランが相次いで投入されたほか、NTTドコモのオンライン専用プラン「ahamo」など、従来にはない新しいスタイルの安価な料金プランも登場している。それゆえ料金に敏感な消費者は早々に安価なプランへの乗り換えを進めている。そのいっぽうで、今もなお古い料金プランを使い続けている人も少なからずいるようだ。

菅前首相の政策によって携帯各社の料金引き下げが進められ、オンライン専用でコストパフォーマンスが高いNTTドコモの「ahamo」など新基軸の料金プランも相次いで登場している

菅前首相の政策によって携帯各社の料金引き下げが進められ、オンライン専用でコストパフォーマンスが高いNTTドコモの「ahamo」など新基軸の料金プランも相次いで登場している

実際、総務省の調査によると、携帯各社が提供する新しい料金プランの契約数は約4,050万となっており、一般利用者向け携帯電話契約数の約27%であるという。裏を返せばおよそ7割が新しい料金プランに移行していないともいえ、料金見直しをしていない人がかなりの割合に上ることがわかるだろう。

総務省「競争ルールの検証に関するWG」第36回会合資料より。携帯各社への調査によると、新料金プランへ移行したのは約4,050万とのこと。一見多いように見えるが、実は契約数の27%に過ぎない

総務省「競争ルールの検証に関するWG」第36回会合資料より。携帯各社への調査によると、新料金プランへ移行したのは約4,050万とのこと。一見多いように見えるが、実は契約数の27%に過ぎない

料金プランや端末購入プログラムにあった“縛り”は廃止されている

とはいえ料金プランを変える、しかも他社に乗り換えるとなるとハードルが高いと思っている人も少なからずいることだろう。とりわけ古くから携帯電話を利用している人が懸念しているのは、いわゆる“縛り”の存在ではないだろうか。

確かに以前の料金プランには、 顧客の契約を長期間縛り付ける“縛り”が多く存在した。具体的には、毎月の料金を安くする代わりに2年間など長期の契約継続が求められ、途中で解約すると1万円近い違約金が取られる“2年縛り”、そして4年間の分割払いで端末を購入し、2年後に返却して機種変更すると残債の支払いが免除される端末購入プログラムで、支払いの免除を受ける際にプログラムの再契約が必須とされ解約が難しくなる“4年縛り”などが思い浮かぶ。

そうしたことから“縛り”が解けるまで料金プランを変えたり、他社に乗り換えたりすることはできないと思っている人も少なからずいるかもしれない。だが、実はすでに“縛り”は過去のものとなっており、制度上存在しない。

2019年に改正された電気通信事業法によって過度な囲い込みが禁止され、契約を縛ることが困難になったことから、現在携帯各社が提供している料金プランはいつ解約しても違約金が取られることはないし、端末購入プログラムも再契約の必要なく残債の免除が受けられるようになっているのだ。

総務省「電気通信事業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令等の整備について」より。2019年の電気通信事業法改正で契約の“縛り”に厳しい規制がなされたことから、携帯各社は縛りのない料金プランを提供するようになった

総務省「電気通信事業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令等の整備について」より。2019年の電気通信事業法改正で契約の“縛り”に厳しい規制がなされたことから、携帯各社は縛りのない料金プランを提供するようになった

しかも総務省は法改正後に提供された新しい料金プランへの移行を促進するため、2022年2月に既往契約の解消、要は法改正前に提供されていたプランの契約者を新しいプランに移行させる取り組みを携帯各社に要請。それに応える形で携帯各社は、法改正以前の古い料金プランに関しても2年縛りにつながる違約金や、4年縛りにつながる契約条件などを相次いで撤廃したのだ。

その結果、2022年4月以降は古い料金プランを契約している人であっても“縛り”の影響を受けずに乗り換えができるようになった。消費者は“縛り”を気にする必要なく、好きなタイミングで自由に料金プランを変えられるのだ。

総務省「競争ルールの検証に関するWG」第36回会合資料より。法改正前の料金プラン契約者を新しいプランへ移行させたい総務省の要請によって、実は古い料金プラン契約者も“縛り”からすでに開放されている

総務省「競争ルールの検証に関するWG」第36回会合資料より。法改正前の料金プラン契約者を新しいプランへ移行させたい総務省の要請によって、実は古い料金プラン契約者も“縛り”からすでに開放されている

SIMロックは2021年秋に原則廃止、ネット手続きなら解除も無料

もうひとつ、とりわけ他社に乗り換える際のハードルと思われているのがスマートフォンだ。以前は携帯電話のサービスと端末をセットで契約・購入することが一般的で、なおかつスマートフォンにも他社のSIMで利用できない「SIMロック」がかけられていたことから、他社サービスに乗り換えるなら端末も買い替えないといけない、と思っている人も意外と多いかもしれない。

だが、こちらに関しても、総務省のガイドラインによって2021年10月以降に発売された端末はSIMロックをかけることが原則禁止されていることから、それ以降に購入したスマートフォンであればSIMを差し替えるだけで他社サービスへの乗り換えが可能だ。またそれ以前に購入した端末であっても、携帯各社のショップに依頼するなどしてSIMロック解除ができるものが多い。ネット上で手続きを使えば、基本的に無料で解除できる。

総務省「競争ルールの検証に関するWG」第36回会合資料より。2021年10月以降に発売されたスマートフォンはSIMロックが原則禁止されており、他社のSIMをそのまま挿入しても利用することが可能だ

総務省「競争ルールの検証に関するWG」第36回会合資料より。2021年10月以降に発売されたスマートフォンはSIMロックが原則禁止されており、他社のSIMをそのまま挿入しても利用することが可能だ

携帯電話会社によって使用している周波数帯が違っていることから、スマートフォンによっては他社のSIMで利用すると圏外が増えたり、通信速度が遅くなったりと快適に通信できず、買い替えを余儀なくされるケースももちろんある。だが、iPhoneシリーズであればその心配は不要だ。iPhoneシリーズは携帯4社の主要な周波数帯にほぼすべて対応しているため、SIMロック撤廃前の「iPhone 12」シリーズ以前なら必要に応じてSIMロック解除をするだけ、「iPhone 13」シリーズ以降や「iPhone SE (第3世代)」なら、追加負担なく同じ端末を使い続けたまま他社サービスへ乗り換えられる。

まずは料金プランの変更を検討しよう

こうして見れば電気通信事業法改正以降、携帯電話のサービスは非常に乗り換えがしやすくなっていることがわかる。だがそれでも乗り換えにとまどってしまうのには、そもそも料金プランが多く複雑で、何を選べばよいのかわからないということも大きな要因としてあげられるだろう。

確かに「格安スマホ」として注目されたMVNO(仮想移動体通信事業者)や、2020年に携帯電話市場に本格参入した楽天モバイルなど、携帯電話のサービスを提供する会社自体が大幅に増えているし、携帯各社も複数のブランドを用いてサービス展開するようになったことから、複雑に感じてしまうのも確かだ。そこでまず提案したいのは、現在契約している携帯電話会社のサービスの中で、同種のプランに乗り換えることである。

例としてKDDIの「au」ブランドの大容量プランを比べてみると、先の法改正前まで提供されていた「auデータMAXプラン」は月額11,528円、2年縛りを前提としていた「2年契約」の適用で月額9,878円だったが、現行の「使い放題MAX 4G/5G」は月額7,238円で利用できる。2年契約ありの場合と比較しても月当たり3,000円近く安くなり、新しいプランに変えるだけでお得になることがわかるだろう。

auの大容量新旧プランを比較

※現在は2年契約を適用していても、中途解約時に違約金はかからない

※現在は2年契約を適用していても、中途解約時に違約金はかからない

いっぽうで、乗り換えても料金があまり安くならないケースもある。同じauを例にあげると、法改正前に提供されていた旧料金プランで、通信量が1〜7GBまで利用できる段階制プラン「新auピタットプラン」は、2年契約ありで月額3,278〜6,578円だったが、現行の段階制プラン「ピタットプラン 4G/5G」は月額3,465〜6,765円。2023年2月以降に提供される「スマホミニプラン 4G/5G」は通信量上限が4GBまでに減少しているが、月額3,465〜6,215円と、料金だけを見ればあまり大きな違いはない。

店頭サポートが手厚く、料金も安いサブブランド

手間なく料金を下げたいのであれば、各社が用意するサブブランドをチェックしてみてほしい。サブブランドは、メインブランドより低価格で利用でき、なおかつショップでのサポートも継続して受けられるのでお得感と安心感が高い。同じ会社のサービスなので基本的にSIMロックの解除が不要な点も魅力だ。現在では、ドコモを除く携帯各社がサブブランドを提供しており、そちらに乗り換えれば大幅に料金が安くなることが多い。

安価なサービスへの乗り換えには不安があるというのであれば、まずは同じ会社のサブブランドやそれに類するサービスを選んでみるのがよいだろう。

たとえばKDDIの場合、サブブランドの「UQ mobile」で提供している「くりこしプランS +5G」であれば通信量3GBで月額1,628円、「くりこしプランM +5G」であれば通信量15GBで月額2,728円と、auより非常に安い月額料金で豊富な通信量の利用が可能になる。また、使い切らなかった通信量は翌月まで繰り越すことができるのも魅力と言える。

auの新旧段階制料金プランと、UQ mobile「くりこしプランS+5G」の比較

※現在は2年契約を適用していても、中途解約時に違約金はかからない

※現在は2年契約を適用していても、中途解約時に違約金はかからない

価格.comのUQ mobile料金ページへ

ソフトバンクはサブブランドとして「ワイモバイル」を展開している。ワイモバイルで最安となる「シンプルS」プランは、月額2,178円で3GBまでのデータ通信が可能。「シンプルM」なら月額3,278円に15GBのデータ通信容量が含まれる。なお、こちらも使い切らなかった容量は翌月まで繰り越すことができる。

ソフトバンクの新旧料金プランと「ワイモバイル」の料金を比較

※併用は不可

※併用は不可

価格.comのワイモバイル料金ページへ

なお、NTTドコモは、サブブランドを持っていない。その代わりとして、格安SIM事業者であるNTTレゾナントの「OCN モバイルONE」、フリービット「TONEモバイル」、TOKAIコミュニケーションズ「LIBMO」の3社と「エコノミーMVNO」として提携し、ドコモの料金ラインアップにはない安価な料金プランを受け持っている。

「エコノミーMVNO」となるこれらの3社のサービスは、全国のドコモショップで、契約や初期設定など、ドコモ本体と同水準のサポートが受けられるほか、月々の支払いに対してdポイントが付与される。(ただし契約後の相談やサポートはドコモショップではなく、各サービスのサポート窓口に連絡する必要がある。)

NTTドコモの低容量向け旧料金プランとOCNモバイルONEの料金を比較

価格.comのOCN モバイル ONE料金ページへ

スマートフォンや携帯電話はほぼすべての人が持っているうえに、支払いは毎月発生するため、料金の見直しが家計に与える影響は決して小さくない。すでに「自分は料金を見直した」という人であっても、ほかの家族の見直しをすれば一家全体で料金を引き下げられるだけに、ぜひ積極的に見直しを進めてほしいところだ。

佐野正弘
Writer
佐野正弘
福島県出身。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよびその周辺機器には特に注力しており、対象となる端末はほぼすべて何らかの形で使用している。
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