レビュー

格安機の皮を被ったハイエンドスマホ、NTTドコモ「LG style3 L-41A」

2020年6月25日に発売されたNTTドコモのミドルレンジスマホ「LG style3 L-41A」は、2世代前のハイエンド向けSoC「Snapdragon 845」を採用する異色の製品だ。4機種用意された今夏のNTTドコモのミドル〜エントリー向けモデルとの違いに注目してレビューを行った。

「安いけど速い」を実現するユニークなスマートフォン

昨年実施された、端末代金と通信料金とのいわゆる「分離プラン」の影響で、通信キャリアが販売する端末は定価販売が基本となり、ハイエンドモデルの多くは10万円以上するのが普通になった。その結果、価格性能比にすぐれたエントリー〜ミドルレンジに属する製品に注目が集まるようになったわけだが、NTTドコモでは、本体価格41,976円(税込、オンライン価格)のLG「LG style3 L-41A」(以下、LG Style3)とソニーモバイル「Xperia 10 II」、37,224 円のサムスン「Galaxy A41 SC-41A」、23,760 円の富士通「arrows Be3 F-41A」という4機種をそろえ、2020年6月末から一斉発売している。

この4モデルの中では、「LG Style3」は、2世代前のハイエンド向けSoC「Snapdragon 845」を搭載するなど、もっともハイスペックな製品という位置づけだ。なお、搭載するメモリーは4GB、ストレージは64GBで、microSDXCメモリーカードは1TBまで対応、OSはAndroid 10となる。基本スペックだけを見れば、ソニーモバイル「Xperia XZ2」やサムスン「Galaxy S9」、シャープ「AQUOS R2」といった2018年に発売されたハイエンドモデルと同等の性能を備えている。

本機の実際の処理性能を、AnTuTuベンチマークを使って計測したところ、総合スコアは279,597(CPU:80,550、GPU:105,586、MEM:48,463、UX:44,998)となった。このスコアを、SoC、RAM、ストレージの容量が本機と同じである、2018年発売のサムスン「Galaxy S9」のスコア300,415(CPU:97,178、GPU:104,601、MEM:44,621、UX:54,015)と比較したところ、主に「CPU」のスコアで差がついたものの、グラフィック性能を示す「GPU」の値はほぼ同じだった。なお、今期のNTTドコモの同クラス製品に位置づけられる「Xperia 10 II」と「Galaxy A41」の総合スコアは大体16〜17万ポイント、「arrows Be4」は9万ポイント前後である。これらと比較すると、本機の処理性能が頭ひとつ抜けていることが理解できるだろう。さらにグラフィック性能を示す「GPU」の値を見ると、本機が10万ポイントを超えているのに対して、「Xperia 10 II」と「Galaxy A41」は3万ポイント前後、「arrows Be4」は1万ポイント前後と、かなり大きな差が開いている。

左が本機、右がGalaxy S9のAnTuTuベンチマークにおける総合スコア。なお両機種ともメモリーの容量が少ないため、描画テストが一部行えなかった。それでもGPUのスコアは10万ポイントを超えており、グラフィック性能は現在でもかなり高い実力を備えていると言える

体感速度でも、アプリの起動は高速で、負荷が高めのゲームでもコマ落ちは少なく、WebやSNSアプリ、Google Mapの画面スクロールもかなりなめらかだった。ただし、メモリーの容量が4GBとやや少ないため、アプリを切り替えて使う場合など、スムーズさに欠けることがあった。

タフネスボディに、QHD+表示対応有機ELディスプレイを搭載

本機は、約72(幅)×152(高さ)×8.7(厚さ)mm、重量約160gというボディで、約6.1インチの有機ELディスプレイを備えており、6インチ前後のスマートフォンとしてはごく標準的なサイズ感だ。注目すべきは、IPX5/8等級の防水仕様と、IP6X等級の防塵仕様、米国国防総省の到達基準「MIL-STD-810G」の13項目(高度, 高温保管、高温動作、低温保管、低温動作、温度衝撃, 降雨、湿度、塩水噴霧, 防塵、浸水、振動、衝撃)をクリアしているタフネス設計である点。NTTドコモの今夏モデルでは、富士通の「arrow Be4」もタフネス仕様で、ハンドソープや食器用洗剤でボディを丸洗いできる点をセールスポイントにしている。本機は石けんで丸洗いこそできないが、湿度や降雨、水しぶき程度の塩水など日常やレジャーシーンで想定される環境に耐えるだけの性能は備えており、この点はかなり魅力的だ。

本機のボディは米国国防総省の到達基準「MIL-STD-810G」の13項目をクリア。耐衝撃はもちろん、高温や低温環境での動作も可能。水しぶきがかかる程度なら塩水にも耐えられる

機能面では、FeliCa・NFCポートや、背面に備わる指紋認証センサーのほか、ヘッドホン端子も備える。また、AIアシスタント「Googleアシスタント」の呼び出しボタンを側面に備えているのがユニークだ。なお、サウンド面では、イヤホンで利用できるバーチャルサラウンド機能「DTS:X 3D Surround」に対応しているものの、LGのスマートフォンで広く採用されていたDACは非搭載となっている。

横にレンズが並んだメインカメラとその下に配置される指紋認証センサーなど、背面のデザインは「V30+」などLGのかつてのハイエンドモデルを踏襲している

ボディ下面にヘッドホン端子と、USB 2.0対応のUSB Type-Cポートを搭載する

ボディ下面にヘッドホン端子と、USB 2.0対応のUSB Type-Cポートを搭載する

左側面にはボリュームボタンとAIアシスタントの呼び出しボタンが備わる。電源ボタンは右側面だ

左側面にはボリュームボタンとAIアシスタントの呼び出しボタンが備わる。電源ボタンは右側面だ

処理性能に劣らず魅力的なのがディスプレイだ。4万円前半という価格帯の製品では珍しい3,120×1,440のQHD+表示に対応する約6.1インチの有機ELディスプレイを採用しており、写真の細部や細かな文字をつぶれずに表示できる。なお、初期設定では電力消費を抑えるためにフルHD+表示に抑えられているが、フルHD+のままでも粗さは感じられなかった。

画面解像度をQHD+に変更して、文字を最小サイズにした電子書籍を表示させた。細かくはなるが活字はにじみが感じられず、高品位な表示が維持された

コントラストが高く発色にすぐれた有機ELディスプレイの持ち味を堪能できる

コントラストが高く発色にすぐれた有機ELディスプレイの持ち味を堪能できる

逆光から暗所まで安定した画質の標準カメラ

「LG Style3」のメインカメラは、約4,820万画素の標準カメラと約500万画素の超広角カメラという組み合わせのデュアルカメラだ。いっぽう、フロントカメラは約810万画素のシングルカメラとなっている。いずれも焦点距離は公表されていないが、メインカメラは、標準カメラと超広角カメラの画素数の差がかなり大きい。

メインカメラは標準と超広角という組み合わせのデュアルカメラだ

メインカメラは標準と超広角という組み合わせのデュアルカメラだ

以下に、本機のメインカメラを使った作例を掲載する。いずれも初期設定のままカメラ任せのオートモードで撮影を行っている。

標準カメラで撮影

田園風景を撮影。オートHDRが作用したので木陰から日なた、青空まできれいに撮影できた。構図手前の木々や稲の解像感も周辺まで保たれている

超広角カメラで撮影

同じ構図を超広角カメラに切り替えて撮影した。こちらもHDRが動作したが、全般にアンバーによっている。また、ゆがみはかなり目立つ

標準カメラで撮影

暗所での巨大な水槽を撮影。高感度かつ動く被写体という難しいシーンとなった。感度の限界に近いようで、手ぶれ・被写体ブレは見られるもの、オートHDRが動作したため、幻想的な1枚に仕上がった

本機の標準カメラは、画素数が高いこともあり解像感が高い。暗所でも手軽な撮影で見栄えのする写真が撮れる。いっぽう超広角カメラは、画素数が低いこともあり見比べると粗さは否めない。標準カメラを面に使い、超広角が必要な時に切り替えるとよさそうだ。

フル充電で2日前後は持つバッテリー。USB PDの急速充電にも対応

本機は3,500mAhのバッテリーを搭載しており、約480分の「連続待受時間(4Gエリアの静止時)」、約1,100分の「連続通話時間(VoLTE)」、約100時間の「電池持ち時間」を実現している。ほかのドコモ製品と「電池持ち時間」を比べると、「Xperia 10 II」が約135時間、「Galaxy A41」が約130時間、「arrows be4」が約105時間となっており、本機は処理性能が高い分、電池持ちは多少不利なようだ。なお、USB PD規格を使った急速充電に対応しており、NTTドコモの最新世代の充電器「ACアダプタ 07」を使えば約105分でフル充電が行える。加えて、本機をUSB PD対応のモバイルバッテリーとしてほかの製品に充電できる機能も備える。

今回は検証を7日間行い、1日3時間程度、ゲームやSNS、動画閲覧などで使用したところ、充電は3回行うことになった。最長で50時間、最短で40時間程度という利用ペースで平均すると2日弱は利用できる計算だ。検証期間中、ゲームを1日に1時間程度行ったことを考慮すれば、バッテリーの持ちは総じて悪くないという印象だ。

4万円台としては抜きん出た高性能。MNPや3Gからの移行ならさらに割安に

本機は、4万円台前半で購入できるとは思えないほどの処理性能、グラフィック性能、表示性能を備えており、NTTドコモのエントリー〜ミドルモデルのラインアップの中では価格性能比では抜きん出た1台だ。とくに、グラフィック性能は高く、最新ゲームがかなり快適に動作する高コスパスマホと言える。また、約4,820万画素の標準カメラは逆光や暗所などシビアな構図でもキレイに写る。防水・防塵・タフネス仕様のボディや、FeliCaポートを備えるなど、機能面でも大きな不満はない。

本機と真っ向から競合するのは、同価格の「Xperia 10 II」だろう。基本性能では本機が有利だが、「Xperia 10 II」は、軽量かつバッテリー持ちも良好という強みがある。なお、「Xperia 10 II」のトリプルカメラはノイズや手ぶれが起こりやすく、意外に扱うのに注意がいる。かんたんにキレイな写真が撮れるという点で見れば、本機のほうがすぐれていると言えるだろう。

しかも、本機は8月1日から「はじめてスマホ購入サポート」の対象機種に新たに加えられた。これにより、他キャリアからのMNPや、FOMA(3G)→Xi(4G)への変更または、他社3G回線からXiへMNP契約する場合に12,000ポイントのdポイントが付与されることになる。またMNP契約の場合なら16,500円(税込)の「端末購入割引」を受けることもできる。これらの条件に該当するなら、ドコモの夏スマホでは最安の「arrows Be4」と比較しても充分割安に感じられる。

田中 巧(編集部)
Writer / Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよびその周辺機器には特に注力しており、対象となる端末はほぼすべて何らかの形で使用している。
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