レビュー

「Steam Deck」はコスパ最高クラスの携帯型PCゲーム機だ

「Steam Deck」は、ゲーム配信プラットフォームのSteamを運営するValveが発売した携帯型PCゲーム機。2023年1月27日より、最安モデルを除いて公式サイトから即時購入できるようになりました。今購入を検討している人も多いのではないでしょうか? 

筆者は発売日に予約購入した512GBモデルをゲットし、主に移動中や出先などでPCゲームを楽しんでいます。今回は、今まさに購入を検討している人に向けて、基本スペックの解説、ゲームプレイの快適度、そして応用的な使い方までレビューします。

Valveの携帯型PCゲーム機「Steam Deck」をレビュー

Valveの携帯型PCゲーム機「Steam Deck」をレビュー

ストレージが異なる3種類のどれを選ぶか悩みどころ

まずは、「Steam Deck」の基本スペックからチェックしていきましょう。

「Steam Deck」は、OSにArch Linuxをベースにした独自の「SteamOS 3.0」を搭載しています。プロセッサーは、Zen 2世代/4コア8スレッド/2.4〜3.5GHz動作のCPUに、RDNA 2世代/8CU/1.0〜1.6GHz動作のGPUを内蔵した「AMD APU」。メモリーは16GB(LPDDR5)で、ストレージは64GB eMMC/256GB SSD/512GB SSDの3種類が用意されています。それぞれの価格は下記のとおり。64GB版は予約購入品で入荷次第販売が開始されます。

・64GB eMMC:59,800円
・256GB NVMe SSD:79,800円
・512GB NVMe SSD:99,800円

3機種の主な違いはストレージの種類と容量。64GB版はeMMC、256GB版と512GB版はSSD(PCIe Gen3接続)を搭載しているのでゲームの起動、ロード時間に差があります。ただし、ストレージを1TB SSDに自己責任で交換するのであれば、64GB eMMCモデルがトータルコストは安くなりますね。

「Steam Deck」は64GB版と256GB版、512GB版の3モデルがラインアップ

「Steam Deck」は64GB版と256GB版、512GB版の3モデルがラインアップ

512GB版のみが、映り込みを低減する「プレミアム防眩エッチングガラス」を搭載し、限定のキャリングケースが付属。限定キャリングケースは内装がグレーですが、機能的には64GB版と256GB版に付属するモデルと同等です。

さらに、512GB版には、ゲーム体験には関係ありませんが、限定アバターや背景を利用できる「限定Steamコミュニティプロフィールバンドル」と、ソフトウェアキーボードの見た目を変更できる「限定仮想キーボードテーマ」が付属します。

3機種とも、ディスプレイは7型IPS液晶(1280×800ドット)。ボタン/レバー類は、左側に十字キー、表示ボタン、サムスティック(L3)、トラックパッド(左)、Steamボタンが、右側にサムスティック(R3)、メニューボタン、ABXYボタン、トラックパッド(右)、クイックアクセスボタン、上面にL1/L2ボタン、音量ボタン、電源ボタン、R1/R2ボタンが、背面にR4/R5ボタン、L4/L5ボタンが配置されています。

インターフェイスはUSB 3.2 Gen2 Type-C(データ転送、DisplayPort 1.4、給電対応)×1、microSDメモリーカードスロット×1、3.5mmコンボジャック×1を用意。ワイヤレス通信はIEEE 802.11a/b/g/n/a/ac、Bluetooth 5.0をサポートしています。

ディスプレイはリフレッシュレート最大60Hzで、タッチ操作に対応。ディスプレイ上部には2つのマイク、ディスプレイ左右にはステレオスピーカーが内蔵されています

ディスプレイはリフレッシュレート最大60Hzで、タッチ操作に対応。ディスプレイ上部には2つのマイク、ディスプレイ左右にはステレオスピーカーが内蔵されています

上面にはL1/L2ボタン、音量ボタン、ヘッドホンジャック、冷却ファン、USB Type-Cポート、ステータスLED、電源ボタン、R1/R2ボタン、下面にはmicroSDメモリーカードスロットを装備

上面にはL1/L2ボタン、音量ボタン、ヘッドホンジャック、冷却ファン、USB Type-Cポート、ステータスLED、電源ボタン、R1/R2ボタン、下面にはmicroSDメモリーカードスロットを装備

背面にはR4/R5ボタン、L4/L5ボタンが配置

背面にはR4/R5ボタン、L4/L5ボタンが配置

本体サイズは298(縦)×117(高さ)×49(厚さ)mmで、重量は約669g。40Whのバッテリーを内蔵しており、バッテリー駆動時間は公称値で2〜8時間。かなり幅がありますが、ディスプレイ輝度、ゲームの負荷によって大きく変化するということでしょう。

本体の実測重量は674.5g

本体の実測重量は674.5g

終末世界を猫が冒険する「Stray」はディスプレイ輝度、ボリューム100%で1時間26分39秒動作

終末世界を猫が冒険する「Stray」はディスプレイ輝度、ボリューム100%で1時間26分39秒動作

パッケージには、本体以外にケース、ACアダプター、説明書、ACアダプター用ポーチ、クリーニングクロスが同梱されています

パッケージには、本体以外にケース、ACアダプター、説明書、ACアダプター用ポーチ、クリーニングクロスが同梱されています

どのぐらい快適にPCゲームをプレイできるのか?

「Steam Deck」に搭載されているプロセッサー「AMD APU」は、最新のゲーミングUMPCが採用する「AMD Ryzen 7 6800U」などと比べると処理性能は決して高くはありません。たとえば、Windows環境で実行した「CINEBENCH R23」のCPU(Multi Core)は4067と、「AMD Ryzen 7 6800U」の約38%相当に留まっています。

「CINEBENCH R23」のCPU(Multi Core)は4067で、CPU(Single Core)は990でした

「CINEBENCH R23」のCPU(Multi Core)は4067で、CPU(Single Core)は990でした

ただし、グラフィックス性能は「AMD Ryzen 7 6800U」に善戦する性能を秘めています。RDNA 2世代のGPUが搭載されているだけに、「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」(1280×800ドット、標準品質、ノートPC)で8535(快適)を記録。「AMD Ryzen 7 6800U」の約78%相当のスコアです。RDNA 2世代のGPUにより、ゲームの動作速度についてはその差を大きく詰めてくるわけです。

「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」(1280×800ドット、標準品質、ノートPC)のスコアは8535(快適)

「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」(1280×800ドット、標準品質、ノートPC)のスコアは8535(快適)

実際、筆者は「Steam Deck」でゲームをプレイしていて、ゲーム体験に支障が出るほどの性能不足を感じたことはありません。「Steam Deck」のパフォーマンスに合わせたプリセットを選択していれば、「Cyberpunk 2077」クラスのゲームであっても実用的な速度でプレイできます。

「Cyberpunk 2077」ではグラフィックのクイックプリセットに「Steam Deck」が自動的に適用されます

「Cyberpunk 2077」ではグラフィックのクイックプリセットに「Steam Deck」が自動的に適用されます

「Cyberpunk 2077」のベンチマーク機能で計測したフレームレートは平均39.63fps、最低17.55fps、最大63.22fps。平均フレームレートは60fpsを大きく下回っていますが、Steam Deckの7型IPS液晶ではそれほど気になりません

「Cyberpunk 2077」のベンチマーク機能で計測したフレームレートは平均39.63fps、最低17.55fps、最大63.22fps。平均フレームレートは60fpsを大きく下回っていますが、Steam Deckの7型IPS液晶ではそれほど気になりません

ゲームの互換性についても触れておきましょう。「Steam Deck」でSteamのライブラリーを表示すると、互換性チェックの要件を満たしているゲームについては「DECKで快適に動作」というタブにまとめて表示されます。しかし、筆者が試した限りでは、その中に含まれていない「BIOHAZARD RE:2 Z Version」と「BIOHAZARD VILLAGE Z Version」も一定時間プレイできることを確認しました。

いまのところ、まったく動かなかったのはベンチマークソフトの「3DMark」だけです。筆者がインストール済みのゲームで全編、全ルートをプレイしているわけではないので、特定のシーンでエラーが起きる可能性はあります。しかし、日常的に「Steam Deck」でゲームを遊んできて、予想していた以上に互換性が高いというのが率直な感想です。

筆者はSteamで97本のゲームを購入していますが、そのうち26本のタイトルが「DECKで快適に動作」に含まれています

筆者はSteamで97本のゲームを購入していますが、そのうち26本のタイトルが「DECKで快適に動作」に含まれています

互換性が確認されていないゲームをインストールしようとすると警告メッセージが表示されます

互換性が確認されていないゲームをインストールしようとすると警告メッセージが表示されます

512GBモデルに9本のゲームをインストールした時点のストレージの空き容量は56.3GB。ゆくゆくは1TB SSDに換装したいところです

512GBモデルに9本のゲームをインストールした時点のストレージの空き容量は56.3GB。ゆくゆくは1TB SSDに換装したいところです

「Nreal Air」との相性が抜群

予算が許せば、「Steam Deck」とセットで購入を検討いただきたいのがARグラス「Nreal Air」(45,980円)です。「Steam Deck」のUSB Type-C端子に接続するだけで、ゲーム画面が4メートルの距離で約130インチ相当のサイズで表示されます。VRゲームをプレイしているような没入感を得られるので非常におすすめです。

「Nreal Air」を「Steam Deck」に接続すると、Nrealに電力が供給され、かつ充電器などを接続できなくなるのでプレイ時間は限られますが、電車などで移動する際でも大画面でゲームをプレイできるというメリットがあります

「Nreal Air」を「Steam Deck」に接続すると、Nrealに電力が供給され、かつ充電器などを接続できなくなるのでプレイ時間は限られますが、電車などで移動する際でも大画面でゲームをプレイできるというメリットがあります

これは合成した画像ですが、「Nreal Air」を着用するとゲーム画面がこのように見えます。なお、Nreal Airには「ライトシールド」が同梱されており、外界を遮断してゲーム画面だけをより鮮明に鑑賞可能です

これは合成した画像ですが、「Nreal Air」を着用するとゲーム画面がこのように見えます。なお、Nreal Airには「ライトシールド」が同梱されており、外界を遮断してゲーム画面だけをより鮮明に鑑賞可能です

デスクトップモードで使うならUSBハブは必須

「Steam Deck」の応用的な使い方として「デスクトップモード」が用意されています。「KDE Plasma」というデスクトップ環境が用意されています。

デフォルトでは日本語環境が用意されていないので、追加の言語サポートを提供してくれる「Fcitx 5」と「Mozc for Fcitx 5」などをインストールする必要がありますが、オフィスソフト「LibreOffice」やブラウザー「Chrome」などを導入すれば、日常的なPCワークの多くをこなせます。

出張や旅行などの際に荷物をできるだけ減らしたいのであれば、「Steam Deck」をPC的に利用することもアリです。

「Steam→電源」から「デスクトップに切り替え」を選択すると、デスクトップモードに切り替わります

「Steam→電源」から「デスクトップに切り替え」を選択すると、デスクトップモードに切り替わります

デスクトップ左上の「Return to Gaming Mode」をダブルクリックすると、元のゲーミングモードに切り替わります

デスクトップ左上の「Return to Gaming Mode」をダブルクリックすると、元のゲーミングモードに切り替わります

日本語環境を利用するためには「Fcitx 5」と「Mozc for Fcitx 5」をインストールする必要があります

日本語環境を利用するためには「Fcitx 5」と「Mozc for Fcitx 5」をインストールする必要があります

「Steam Deck」にはディスプレイなどの周辺機器拡張用に「ドッキングステーション」が純正で用意されていますが、14,800円(税込)とかなり高価です

「Steam Deck」にはディスプレイなどの周辺機器拡張用に「ドッキングステーション」が純正で用意されていますが、14,800円(税込)とかなり高価です

筆者はサードパーティー製セルフパワー型USB-Cハブ(2016年に約6,600円で購入)を利用しています。今なら同等品が3,000〜4,000円前後で購入可能です

筆者はサードパーティー製セルフパワー型USB-Cハブ(2016年に約6,600円で購入)を利用しています。今なら同等品が3,000〜4,000円前後で購入可能です

安価な携帯型PCゲーム機を求めるなら最有力の選択肢

「Steam Deck」は、海外で2021年7月に発売された製品であり、最新のゲーミングUMPCと比較するとスペックはかなり見劣りします。また時期は未定ですが、Valveは「Steam Deck」の新バージョンをリリースすることを予告しています。

とは言え、現行の「Steam Deck」は最新のゲーミングUMPCに比べると非常に安価です。また、現時点のゲームを実用的な速度でプレイできるパフォーマンスを備えています。

ほかのプラットフォームのゲームをプレイするためにはWindows環境をインストールする必要があり、現時点ではSteamOSとWindowsをデュアルブートするための「公式インストーラー」は用意されていません。しかし、Steamで購入したゲームを手軽にプレイできる、安価な携帯型PCゲーム機が欲しいのであれば、「Steam Deck」は最有力な1台と言えます。

ジャイアン鈴木
Writer
ジャイアン鈴木
レビューした製品を高確率で買ってしまう物欲系ITライター。守備範囲はPC、スマホ、VRがメイン。ゲーム、デジタルトイも大好き。最近サバゲにはまっています。愛車はスイフトスポーツで、断然マニュアル派です。
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水川悠士(編集部)
Editor
水川悠士(編集部)
デジタル系メディアから価格.comへ。スマホ、スマートウォッチなどのガジェット周り、ゲーム関連を担当。触ってきた製品は数えきれないほど多いです。価格.comマガジンのYouTubeにも出演中。
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