選び方・特集

「第三のビール」をプロが飲み比べ! 人気10銘柄の味の違いは?

いよいよ夏本番。爽快なビールのおいしい季節が到来です。
そこでビール類の市場動向を見ると、特に注目度の高いカテゴリーが新ジャンル(第三のビール)。2018年発売のキリンビール「本麒麟」がヒットし、それに続く形で各社も新ブランドを投入。2019年は年初から春にかけてさまざまな商品が出そろい、今もにぎわいを見せています。

ということで、今回は特にメジャーな新ジャンルを10種類ピックアップ。商品や味わいの解説に加え、特徴を「キレ」や「コク」といった指標でも紹介します。


ビールと新ジャンル(第三のビール)の違い、わかりますか?

「ビール? 発泡酒? 新ジャンル? 似たような商品ばかりで、違いがよくわからない!」という人のために、今回紹介する“新ジャンル(第三のビール)”について、おさらいしてみます。

ビール、発泡酒、新ジャンルの違いは原料にあります。酒税法上でのビールの定義は「麦芽とホップと水を主原料とし、麦芽の比率が50%以上、アルコール度数が20%未満の飲料」。麦芽、ホップ、水以外の副原料の使用も認められていますが、原料の種類や重量にしっかりとした制限があります。

一例を銘柄で挙げるなら「アサヒスーパードライ」はビール、「淡麗グリーンラベル」は発泡酒、「サッポロ 麦とホップ」は新ジャンル

ちなみに、「ヱビス」や「プレモル」などのプレミアム系はビール。クラフトビールと呼ばれるものは、基本的にはビール(麦芽の比率が50%以上でも、特別な副原料を大量に使ったものなどは、日本の定義上では発泡酒とみなされます)です。

風味はビールに近いですが、上記の基準を満たしていないもの(たとえば麦芽比率が50%未満、定められた以外の副原料を使用するなど)が発泡酒に分類。

その発泡酒に別のアルコール飲料(麦由来のスピリッツなど)を加えたもの、または麦芽以外の穀物(豆類など)を原料に発酵させたものが“新ジャンル”です。

ビール > 発泡酒 > 新ジャンルの順で価格は高い傾向にありますが、個人的には新ジャンルの味が安っぽいとは思いません。事実、それぞれの価格差は製造コストの違いも多少ありますが、カテゴリーごとの酒税の税率の違いが大きなところ。家計の強い味方として一大カテゴリーを築いた新ジャンルは、各メーカーとも商品開発に余念がなく、これからさらなる進化が期待できます。


大手メーカー各社の新ジャンル10商品が集結!

さて、新ジャンルが「安かろう・うまかろう」だとわかったところで、さっそく飲み比べていきましょう。今回用意したのは、こちらの10商品です。

ロングセラーから今年の新作まで、大手メーカー各社の主力を集めました。どれも広告やテレビCMなどで見たことあるものばかりですね

・キリン「本麒麟」
・アサヒ「アサヒ 極上<キレ味>」
・サントリー「金麦〈ゴールド・ラガー〉」
・サッポロ「サッポロ 本格辛口」
・サントリー「マグナムドライ〈本辛口〉」
・キリン「キリン のどごし<生>」
・サントリー「金麦」
・アサヒ「クリア アサヒ」
・サッポロ「サッポロ 麦とホップ」
・アサヒ「クリアアサヒ プライムリッチ」

商品ごとに、テイスティングしたレポートと、「キレ」「コク」「香り」「余韻」「苦味」の指標を5段階評価でチェックしていきます。


(1)キリン「本麒麟」

キリンビール伝統の長期低温熟成をさらに1.5倍にした製法によって、雑味が少なくうまみのある味わいに。上質な苦味と爽やかな香りが特徴のドイツ産ヘルスブルッカーホップを使い、力強いコクをプラスしています。

アルコール度数:6%、エネルギー:47kcal、糖質2.5g(100mlあたり)。麦芽、ホップ、大麦に加えて、コーンや糖類、大麦スピリッツが原料に使われています

飲んでみると、豊かな麦のうまみと、鼻抜けのいい爽快さを感じます。それらが重すぎず・軽すぎずの絶妙なバランスで共存。十分な飲みごたえと、おかわりしたくなるような飲みやすさを併せ持った、完成度の高い1本です。

コク深いのに飲みやすい。さすがは新ジャンル界に大きな波を起こした「本麒麟」です

コク深いのに飲みやすい。さすがは新ジャンル界に大きな波を起こした「本麒麟」です


(2)アサヒ「アサヒ 極上<キレ味>」

原材料は麦100%の贅沢仕立て。麦由来の本格的な飲みごたえが特徴です。独自の高発酵醸造技術や冷涼ホップによって、同社の新ジャンル史上最高レベルのシャープなキレも。

アルコール度数:5%、エネルギー:41kcal、糖質2.2g(100mlあたり)。原材料は麦芽、ホップ、大麦で作った発泡酒に、大麦スピリッツとシンプルな構成

麦100%ならではの豊かなボリューム感と、そこからのスパッとシャープなのどごし。この“ギャップ”がとにかく爽快です。単体で飲んでも成立するし、食事との相性もよさそう。うまみ・苦味のバランスも秀逸で、重くなくてどんどん飲み進められます。

パッケージに書いてあるとおりの、冴えわたるキレが心地いい!

パッケージに書いてあるとおりの、冴えわたるキレが心地いい!


(3)サントリー「金麦〈ゴールド・ラガー〉」

サントリーの看板商品「ザ・プレミアム・モルツ」で培われた本格二段仕込み製法を採用。うまみ成分を多く含んだ麦芽を使用した、力強い飲みごたえとコクが特徴です。ビターホップの苦味と適度な刺激感もアクセントに。

アルコール度数:6%、エネルギー:48kcal、糖質2.7g(100mlあたり)。麦芽、ホップ、糖類に加えて、小麦のスピリッツを使用しています

ホップの華やかな香り、そして重厚感たっぷりのうまみが魅力。グイッとのどごしで飲むよりは、じっくりと深い余韻を楽しみたいタイプです。「とりあえずの1本」にもいいですが、2本目以降の中継ぎ・抑えとしてもいい仕事をしそう。

深い夜に、余韻をゆっくり静かに楽しみたい1本です

深い夜に、余韻をゆっくり静かに楽しみたい1本です


(4)サッポロ「サッポロ 本格辛口」

パッケージには「最強炭酸」の文字。第一印象でガツンと刺激がくる、同社の新ジャンル史上で最も強炭酸な1本です。高発酵・氷点下熟成によるクリアでシャープな飲み味と、豊かな飲みごたえも楽しめます。

アルコール度数:5%、エネルギー:41kcal、糖質2.9g(100mlあたり)。麦芽、ホップ、大麦に、スターチ(穀物由来のデンプン)と大麦スピリッツをプラス

強炭酸によるファーストアタックは、刺激的で実に爽快。キレのあるのどごしも爽快そのもので、これをキンキンに冷やして乾杯すると最高でしょう! その名のとおり、“本格辛口”でドライな飲み味は日本で親しまれてきたテイストです。

パッケージのイメージどおり、ガツンとシャープな味わいが力強い!

パッケージのイメージどおり、ガツンとシャープな味わいが力強い!


(5)サントリー「マグナムドライ〈本辛口〉」

1999年に発売された発泡酒「マグナムドライ」を、新ジャンルとしてアップデートしたのがこちら。高温高圧蒸気製法によって作られた“ドライ麦芽”を使うことで、豊かな飲みごたえを実現。同社商品の中でもトップクラスのキレも楽しめます。

アルコール度数:6%、エネルギー:45kcal、糖質2.0g(100mlあたり)。麦芽、ホップ、小麦スピリッツなどが原料です

最初のひと口が爽快かつ鮮烈。先述の「サッポロ 本格辛口」と同じく、こちらもキンキンに冷やして飲みたい1本です。エッジが効いた苦味とのどごしも好バランスで、夏にも心地よく飲めます。

「究極のキレ」はダテじゃない。暑い日に特にうまく感じるでしょう

「究極のキレ」はダテじゃない。暑い日に特にうまく感じるでしょう


(6)キリン「キリン のどごし<生>」

新ジャンル界で根強い人気を誇るロングセラーであり、シェア1位のトップブランド。いまでこそ発泡酒に麦由来のスピリッツを混ぜたタイプが主流ですが、「のどごし<生>」はかつて多かった、豆などの原料を発酵させたタイプの新ジャンル。昨年リニューアルして、過去最高のキレを実現しました。

アルコール度数:5%、エネルギー:37kcal、糖質2.7g(100mlあたり)。麦芽は不使用。ホップ、糖類、大豆たんぱく、酵母エキスで作られています

カーッっと喉をうるおし、スッと消えるキレの鋭さが抜群。それでいてライトな味わいなので、ゴクゴク飲めちゃいます。いろいろな料理との相性もよさそうで、特に濃い味や油っこい料理にはピッタリです。ただし、ぬるくなるとその本領があまり生かされない気がします。

ゴクゴク飲める爽快なうまさと、スッキリした後味が人気のヒミツ

ゴクゴク飲める爽快なうまさと、スッキリした後味が人気のヒミツ


(7)サントリー「金麦」

パッケージ裏面に描かれた“新しい金麦”の文字。何が新しいかというと、金麦史上で最も多く麦芽を使用し、より麦のうまみを感じる味わいになったこと。いっぽうで後味は心地よく、満足感の高い仕上がりになっています。

アルコール度数:5%、エネルギー:43kcal、糖質3.2g(100mlあたり)。麦芽、ホップ、糖類、小麦スピリッツが原料です

適度に濃い味とふくよかなうまみがありつつも、のどごしは爽快に。華やかな香りも感じられて、全体的にバランスがいい1本です。軽めの前菜からガッツリ系のメインまで、どんな料理にもよく合いそうです。

麦の芳醇なうまみとキレのよさを両立させた、バランスのいい味わいです

麦の芳醇なうまみとキレのよさを両立させた、バランスのいい味わいです


(8)アサヒ「クリア アサヒ」

商品名どおり雑味のないクリアな後味が特徴の新ジャンル。直近のリニューアルでは、より麦の味わいと香りを楽しめるようになりました。これは濃厚な香りを持つ麦芽を増量し、アロマホップを加えているためです。

アルコール度数:5%、エネルギー:42kcal、糖質2.9g(100mlあたり)。麦芽、ホップ、大麦などに加えて、コーンやスターチが使われています

コクと爽快感がほどよく噛み合った味わい。豊かな香りの中にキレもあって、飲み疲れしません。季節やシーン、合わせる料理を選ばずに気軽に飲めます。迷ったらとりあえず「クリア アサヒ」でよさげな安定感があります。

後味がクリアなのに麦の香りもしっかりある、万能タイプの1本

後味がクリアなのに麦の香りもしっかりある、万能タイプの1本


(9)サッポロ「サッポロ 麦とホップ」

原料の力を引き出すことを追求し、度重なる進化を続ける2008年誕生のロングセラー。最新版では、長年培った醸造技術による、ブランド史上最高の“麦のうまみ”を実現しています。

アルコール度数:5%、エネルギー:45kcal、糖質3.5g(100mlあたり)。麦芽、ホップ、大麦、大麦スピリッツという定番の原料構成

心地いい苦味と、力強い麦のコクは「リアルなビール!?」と思えるほど。爽快感も十分にあり、完成度の高さを感じます。また、筆者個人としては「麦とホップ」の<黒>や季節限定の味にも注目しています。レギュラー品と限定品を飲み比べてみてもおもしろいでしょう。

コクと爽快感を両立した、完成度の高い1本です

コクと爽快感を両立した、完成度の高い1本です


(10)アサヒ「クリアアサヒ プライムリッチ」

うまみ成分の多い麦芽と、苦味は少なく華やかな香りのファインアロマホップ。2つのこだわり原料によるリッチな味わいと香りが特徴です。芳醇かつ上品なフレーバーだけでなく、飲みごたえもしっかり。

アルコール度数:6%、エネルギー:51kcal、糖質3.8g(100mlあたり)。「クリア アサヒ」通常版と同じく、麦芽、ホップ、大麦に加えてコーンやスターチも使われています

しっかりとしたボディ感はありますが、苦味を抑えた味わいはスムース。うまみが豊かで香りも芳醇な、エレガントさあふれる1本です。濃い味わいのビールが好きな人にもおすすめです。

名前どおりの“プライムリッチ”な味わいで、高級感たっぷり

名前どおりの“プライムリッチ”な味わいで、高級感たっぷり


まとめ

飲み比べてみた結果、新ジャンルはただの「薄いビール」ではなく、商品ごとにさまざまな個性があることがわかりました。今回は紹介していませんが、ベルギーのホワイトビールをイメージした「サッポロ ホワイトベルグ」などもあり、嗜好やTPOによって、いろいろと飲み分けるとおもしろいでしょう。

「サッポロ ホワイトベルグ」。新ジャンル界の異端児と言える存在ですが、「ITI」という世界的な食品コンクールで最高ランクの三ツ星を6年連続受賞し、日本国内のビールテイストで初となる快挙を成し遂げています

また、各商品がどんな人におすすめなのかを、以下にまとめました。

◆ほどよいコク、苦味、爽快感がある王道タイプが好きな人におすすめ:「本麒麟」「金麦」「クリア アサヒ」「サッポロ 麦とホップ」

◆キレのある味、辛口が好きな人におすすめ:「アサヒ 極上<キレ味>」「サッポロ 本格辛口」「マグナムドライ〈本辛口〉」

◆すっきりしたのどごしや、ゴクゴク飲める爽快感を求める人におすすめ:「キリン のどごし<生>」

◆濃い味やコクを求める人におすすめ:「金麦〈ゴールド・ラガー〉」「クリアアサヒ プライムリッチ」

盛り上がりを見せる新ジャンルの世界。自分好みの1本を探してみては?

盛り上がりを見せる新ジャンルの世界。自分好みの1本を探してみては?

冒頭で新ジャンルのトレンドに触れましたが、この10月に予定されている増税もポイント。これにともなって、ビール類ではより割安感のある新ジャンルに熱視線が注がれると言われています。

従来の新ジャンルファンはもちろん、改めて自分好みの新ジャンルを探している人は、ぜひ本稿を参考にしてみてください!

中山秀明
Writer
中山秀明
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。
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しえる(編集部)
自称ポテチマスター。ポテトチップスを中心に、1日3袋のスナック菓子をたいらげるお菓子狂。お菓子関係のグッズやちょっと変わったアイテムをメインに紹介します。
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