“弾丸”試乗レポート

コンパクトクロスオーバーの注目モデル! スズキ「イグニス」試乗レポート

スズキの新型クロスオーバー「イグニス」が2016年2月18日より発売開始となった。この新しいモデルは、どんな特徴を持ち、どのような走りを見せるのか? モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏がレポートする。

力強くインパクトのあるデザインに、鈴木の最新テクノロジーを融合させたコンパクトサイズのクロスオーバーのイグニスに試乗してみた!

ルックスのよさだけでなく、パワートレインや安全装備の充実度も魅力的だ

スズキの新型モデルである「イグニス」は、国内はもちろんだが世界的視野で見ても重要なコンパクトカーのクロスオーバーだ。今や、クロスオーバーは世界的な大ブームになっている。雪深かったり、未舗装のダートの道が残っていたり、しょっちゅう冠水するような土地は世界中のあちこちにある。しかも、そうした国々の多くは所得もそれほど高くないため、潜在的に手頃な価格になりやすいコンパクトカーのクロスオーバーが受け入れられる余地が大きいのだ。インドやアセアン諸国などで求められるはずだろう。ところが意外にも、コンパクトカーのクロスオーバーは、世界的に見てもこれまでほとんど存在しなかった。イグニスは、そんな需要をピタリとはまった存在となるのだ。

全長はわずか3.7m。乗員をアップライト気味に座らせるため、前後の寸法にも余裕がある。後席に大人が乗っても十分な広さを確保した。荷室は通常133リットルと、そう広くはないが、床下にサブトランクを設置。また後席に165mmの前方移動機能を備えた。その後席を最も前にすれば荷室は258リットル、後席の背もたれを倒せば415リットルまで広げることができる。いつも4人乗るわけでなければ、それほどの不便もないだろう。

全長はわずか3.7mというコンパクトさ。車重も軽自動車並みに軽い

全長はわずか3.7mというコンパクトさ。車重も軽自動車並みに軽い

"アップライト気味なシートなので、前後の乗員スペースは意外に広い

後席も背もたれが起立気味のアップライトな姿勢

後席も背もたれが起立気味のアップライトな姿勢

荷室は通常133リットルとそれほど広くはないが、床下のサブトランクや後席の背もたれを倒せば最大415リットルまで拡大できる

デザインはイグニスの最大の魅力だ。シンプルな面構成ながら、SUVらしい力強さとスッキリとした印象を与える。また、グリル内にライトを納めた「セルボ」、ブラックアウトしたAピラーの「スイフト」、フェンダーに特徴のある「エスクード」、Cピラーに特徴的なデザインのあった「フロンテクーペ」といった、過去のスズキの人気モデルのモチーフをちりばめているのも特徴だ。スズキの歴史という情緒も感じさせてくれるすぐれたデザインだと思う。

インテリアは、突き出るように配置されたカーナビのディスプレイが特徴

インテリアは、突き出るように配置されたカーナビのディスプレイが特徴

強い印象を残すヘッドライト周辺のデザイン。LEDヘッドライトが使われている

強い印象を残すヘッドライト周辺のデザイン。LEDヘッドライトが使われている

メカニズムは、スズキの最新テクノロジーの結集となっている。プラットフォームは2014年に発表された新世代のもの。滑らかに連続する骨格などの採用で剛性を確保したまま、大幅な軽量化を達成した。なんと、イグニスは2WDモデルで車両重量850〜880kg。4WDでも890〜920kgという、ほぼ軽自動車並の重量に収まっているのだ。この軽量ボディに、最高出力67kW(91馬力)/6000rpmの1.2リッターデュアルジェットエンジンを搭載する。トランスミッションは副変速機付きのCVT。さらに発電機がモーターとなって加速をアシストするISG(インテグレーテッドスタータージェネレータ)と二次電池のリチウムイオン電池からならマイルドハイブリッドシステムも搭載。その結果、燃費性能は、2WDモデルで最高28.8km/l、4WDで25.4km/lを達成している。

最高出力67kW(91馬力)の1.2リッター デュアルジェットエンジンを搭載。軽量なボディのおかげでパワーは十分

シート下に収まるマイルドハイブリッド システム用のリチウムイオンバッテリー。燃費は2WDモデルで最高28.8km/lとなる

さらに驚くのは装備の充実度だ。ステレオカメラを使う衝突被害軽減自動ブレーキ(歩行者検知機能付き)や車線逸脱警報機能といった運転支援システムから、LEDヘッドライトやクルマを上から見る視線で周囲を確認できる全方位モニター、Apple Car Play対応のカーナビまで最新装備が用意されている。シートヒーターまであるから驚くばかり。

iPhoneと接続可能なApple Car Play対応のカーナビが用意されている

iPhoneと接続可能なApple Car Play対応のカーナビが用意されている

充実の内容なだけに、世界中でのヒットが予想できる

続いては走らせた印象をレポートしよう。ドライバーズシートからの眺めは、視点が高いということもあり、「あ、これは扱いやすそう」という第一印象。インテリアのデザインはシンプル。付き出たようなモニターが特徴的だ。豪華というよりもカジュアル。海や山に、アクティブに使われるイグニスらしい雰囲気だ。

加速感はスムーズ。ほとんど軽自動車並の軽量ボディを1.2リッターのエンジンで走らせるのだから不満など出るはずもない。高速道路での追い越し加速でも十分な力を見せる。パドルシフトで積極的なシフトダウンを行えば、俊敏な動きも可能だ。一点、気になったのは、アクセルオフ時のエンジン回転のドロップ(落下)が一瞬遅れるため、操作のダイレクト感が低いこと。燃費を高めるためのセッティングだろうが、スポーティな気分のときは残念に思うばかり。いっぽう、足回りはまずまず。背が高いからといっても、グラグラとロールが怖いというシーンはまったくなかった。ただし、完熟のできとは言えない。パワーステアリングのチューニングやサスペンションのしなやかさという面では、まだまだ伸びシロがある。走り全体のまとまりは悪くないからこそ、さらなる高いレベルを目指してほしい。

Apple CarPlayを試してみた。ケーブルをつなぐだけでメインメニューにボタンが現れるので、操作はとても簡単だ

ちなみに「Apple CarPlay」も試してみた。これはiPhoneの機能を車載器で使いやすくしようというもの。iPhoneをUSBケーブルでつなげば、メインメニューの中にApple CarPlayのボタンが表示される。これを選ぶと、iPhoneの諸機能が使えるようになるのだ。

イグニスのApple CarPlayで利用できる機能アイコンの一覧。電話や音楽再生、マップなどが利用できる

イグニスのApple CarPlayで利用できる機能アイコンの一覧。電話や音楽再生、マップなどが利用できる

実際には、iPhoneのすべての機能が使えるわけではない。今回は、電話、音楽、マップ、メッセージ、ポッドキャスト、オーディオブックが利用できた。利用はタッチモニターを操作してもよいがSiriも使える。その場合は、ステアリングにある発話ボタンを押しながら喋ればよい。iPhoneの音楽をクルマの車載器経由で使うのは、すでにポピュラーなこと。そういう意味では、Apple CarPlayならではのものといえばカーナビ機能とSiriだ。カーナビは、目的地設定からSiriを使うことができた。モニターに表示される地図画面は、Apple CarPlay専用のものらしく、意外と見やすい。また、音声でも曲がり角を教えてくれるのも助かる。ただし、従来の車載のカーナビと比べれば、まだまだと思う点も。機能が少ないし、地図表示の自由度も低い。いっぽう、最近のSiriは認識率が高いこともあり、何度も発話を繰り返させられることはなかった。だいたい1回か2回で、きっちり対応してくれたのだ。ただしSiriを使ってショートメッセージを送ることはできなかった。メッセージの内容を伝え、誰に送るのかを指示するのだが、どうしても途中で失敗する。次回こそ、成功させたい。

ハンドルに備わる「発話スイッチ」。これを押せばSiriを使った音声認識が利用できる

ハンドルに備わる「発話スイッチ」。これを押せばSiriを使った音声認識が利用できる

精度が向上した最近のSiriなら、ノイズの多い車内でも実用的な音声認識が利用できた

精度が向上した最近のSiriなら、ノイズの多い車内でも実用的な音声認識が利用できた

課題はまだあるが、最新のマップデータを利用できるカーナビ機能は、今後も要注目といえる

課題はまだあるが、最新のマップデータを利用できるカーナビ機能は、今後も要注目といえる

Apple CarPlayに関して言えば、まだまだ満点ではないけれど、普段使うiPhoneをそのままクルマで利用できるのはメリットが大きい。なんといっても、最新のマップデータを活用するナビ機能を、パケット通信料以外無料で利用できるのが便利だ。もともとクルマに乗るときは充電のためにiPhoneをUSBケーブルでつないでいるので、スマートフォンが必須の時代としては、クルマもスマートフォン対応になるのが自然なのではないだろうか。これも今後に期待の部分だ。

ライバル不在のマーケットに、格好よいルックスとすぐれた燃費、充実した装備内容で登場したイグニス。走りに関して細かな部分に注文をつけたが、基本的には合格ラインはクリアしている。この内容であれば、日本に限らず世界中でヒットする可能性は相当に高いだろう。

ボディやデザイン、そして機能など「イグニスならでは」の魅力は数多い。国内はもとより世界的に人気を集めそうなクルマだ

鈴木ケンイチ
Writer
鈴木ケンイチ
新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよびその周辺機器には特に注力しており、対象となる端末はほぼすべて何らかの形で使用している。
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