レビュー

これで250万円!? ホンダ「WR-V」は価格を超えた走りと装備、雰囲気満点!

“空白地帯”を埋めるモデル

街中でも運転しやすくて、デザインがカッコよくて、ちょっとアクティブな使い方ができるようなコンパクトSUVが欲しい、という人は多いものです。国産普通車の販売台数ランキングでは常連となっているトヨタ「ヤリスクロス」や「ライズ」がその代表格。ホンダにはコンパクトSUVとして「ヴェゼル」があり、販売台数もまずまずで健闘していますが、200万円台のライバルと比べると価格帯がやや高め。ホンダにおいて、価格の安いライバルと真っ向から勝負できるコンパクトSUVが“空白地帯”となっていました。ちなみに、ホンダの調べによると、250万円以下のSUVでは実に7割超がガソリンモデルとなっているそうです。

そこで今回、ガソリンモデルのみのコンパクトSUVとして、ドカンと投入された新星がこの「WR-V」。余計なものは削ぎ落とし、割り切ってシンプルに。でも、ものすごくホンダらしい1台に仕上がっています。この「WR-V」、少々面白い成り立ちで、主な開発が行われたのはタイ。日本、タイ、インドのエンジニアたちが集結して開発が進められ、それぞれの国でテストを行ったのち、インドで生産されます。日本やインドを始めとする数か国で販売されますが、開発されたタイでの販売はありません。主要マーケットにインドが入ったことで、中間地点として集まりやすく、テストコースなどの設備が整った開発拠点がタイだった、ということでした。

ホンダのテストコースで「WR-V」に試乗してきました

ホンダのテストコースで「WR-V」に試乗してきました

気になる価格は、ベーシックグレードの「X」が209万8800円。中間グレードの「Z」が234万9600円。外観などがグレードアップする「Z+」が248万9300円。すべて250万円以下に抑えてきたのはさすがです。ホンダの安全思想として、先進安全運転支援システム「Honda SENSING」は全車に標準装備。パワートレインはすべて、1.5L DOHC i-VTECエンジン+CVTです。

■「WR-V」のグレードラインアップと価格
X:2,098,800円
Z:2,349,600円
Z+:2,489,300円

※価格はすべて税込
※駆動方式はすべてFF
※発売は2024年3月22日

デザイナーはミレニアム世代

そんな「WR-V」の大きな魅力のひとつが、見ただけで安心感とタフな信頼感を得られるような、堂々として精悍なデザイン。どことなくマッスル系なボディですが暑苦しさはなく、分厚くて存在感のあるフロントマスクと、しっかり地面をとらえるようなスタンスがカッコよく、ありそうで実は少ない”正統派SUV”の威厳を放っています。開発チームの中でも若い世代、いわゆるミレニアム世代がデザインしたということで、購入ターゲット層でもある世代に響きそうです。

左から、「ゴールドブラウン・メタリック」「イルミナスレッド・メタリック」「プラチナホワイト・パール」

左から、「ゴールドブラウン・メタリック」「イルミナスレッド・メタリック」「プラチナホワイト・パール」

後席の快適性がすばらしい

インテリアに目を向けると、華美な装飾や凝ったモチーフはないものの、中央に大きなディスプレイやスイッチ類が配置され、見るからに使いやすそうな空間です。最近では少ないハンドブレーキが逆に新鮮ですが、これも価格を抑えるための割り切りのひとつ。シートは「X」がファブリック、「Z」と「Z+」が合皮とファブリックのコンビで、ステアリングやシフトセレクターには本革を採用しています。

シンプルですが何かが足りないということもないインパネ周り

シンプルですが何かが足りないということもないインパネ周り

驚くのは室内空間の広さで、前席がゆったりとしているだけでなく、後席のスペースも余裕たっぷり。身長165cmでも頭上は握りこぶし2.5個、膝まわりは同4個ほどのスペースが確保できるので、大人2人+子ども2人といったファミリーでも使いやすい空間だと感じます。

これは、「フィット」をベースとしながらもホイールベースを2530mmから2650mmまで伸ばしたパッケージングによるもの。兄貴分の「ヴェゼル」と比べても40mm長いという、後席の居住スペースを重視し、ドアライニングや前席のシートバック形状を工夫して広げてあります。

ボディサイズからは想像できない広さを持つ後席

ボディサイズからは想像できない広さを持つ後席

後席の前後スライド機構や、「フィット」に採用されているような座面跳ね上げ機構などは持っていませんが、開発者にうかがったところ「いろいろ操作しなくても、そのままで使いやすくバランスのよいクルマを目指しています」とのことでした。その代わり、シート座面のクッションは厚めで座り心地よく、後席用にもエアコンアウトレットが備わるなど、乗員は快適にドライブを楽しめます。

ラゲッジの使い勝手は、見た目よりも実際に荷物を入れてみるとその優秀さに驚きます。家族4人分の1泊のキャンプ道具がホイホイと、しっかり積み込めるのはすばらしいところ。容量も458LとコンパクトSUVとして圧倒的な大容量で、壁面がフラットに近い形状で床下収納もある実力派です。

後席使用時のラゲッジスペース

後席使用時のラゲッジスペース

この4人分のキャンプ道具一式が……

この4人分のキャンプ道具一式が……

すっぽり入った!

すっぽり入った!

静粛性と、走っている実感

運転席に座ると印象的なのが、すっきりとした水平基調のダッシュボードと大きめのフロントガラスがもたらす広々とした視界。ボンネット先端までしっかり確認できるので、取り回しがしやすいのも美点のひとつです。

走り出すと、心地よいエンジン音をともなって軽快に加速していきます。それがノイズとしてではなく、室内の静粛性をある程度維持しながら“走っている実感”を味わわせてくれるような音として入ってくるのです。

さらに、速度が上がるにつれて盛り上がるようなリニアな加速フィールは、ドライブ・バイ・ワイヤとCVTの協調制御による「G-Design Shift」によるもの。加速時や減速時のステップシフト制御も採用し、自分の思いどおりに操れるコントロールのしやすさと、その操作にリンクした音やGなどが感じられます。

ドライバーズシートからは車両先端がよく見えます

ドライバーズシートからは車両先端がよく見えます

驚くほどのパワフルさはありませんが、高速走行での安定感やレーンチェンジでのガッシリとした剛性感は、もっと大きなSUVに乗っているかのよう。カーブではストロークがあってじわりと沈み込みながら、最後はすっきりと立ち上がって抜けていくような、深みのある乗り味に感心。ギャップが点在するような荒れた道での収束も早く、どんな道でもずっと乗っていたくなるような気持ちのいい走りを堪能できました。

高速走行での不安はまったくなく、サイズを超えた運転感覚を持つSUV、といったところです

高速走行での不安はまったくなく、サイズを超えた運転感覚を持つSUV、といったところです

試乗車のタイヤサイズは215/55R17

試乗車のタイヤサイズは215/55R17

また後席にも座ってみたところ、静粛性もフラット感も申し分なく、視界が開放的なのでロングドライブでも快適だと感じます。コンパクトSUVではトップレベルとなる最低地上高195mmを確保していますが、乗り心地は犠牲になっていない模様。

「WR-V」に4WDの設定はなく、全車FFのみなので本格的なオフロードの走行はおすすめできませんが、日本でも冬の北海道などでテスト走行をしているとのことなので、雪道や未舗装の林道くらいなら頼もしく走ってくれそうです。

普段の買い物や送り迎えから遠出まで、何でもこなしてくれそう

普段の買い物や送り迎えから遠出まで、何でもこなしてくれそう

豊富なカスタムパーツも用意

さて、ホンダアクセスが用意した「WR-V」の純正アクセサリー装着車にも触れてみました。特徴的なフロントグリルはブラックエンブレムとなり、フロントロアガーニッシュやフェンダーガーニッシュの装着で、タフな魅力がさらにアップ。標準車ではシルバー塗装のドアロアーガーニッシュが「Z+」のみに装着されます。ほかのグレードでは樹脂ですが、あえて樹脂を選んでアクセサリーでドレスアップするというのも素敵。

「WR-V」はSUVビギナーが選ぶことも多いと予想されるため、フューエルリッドデカールなどを貼るだけでオシャレになるアクセサリーも用意され、手軽にカスタムを楽しめる用意があります。

純正アクセサリーの「ストレージボード」(赤丸)。凹みを利用して細々したものを整理可能。後席を倒した際にシート背面を保護する「シートバックソフトトレー」と、濡れたり汚れたりしたものをそのまま置ける「ラゲッジトレー」

純正アクセサリーの「ストレージボード」(赤丸)。凹みを利用して細々したものを整理可能。後席を倒した際にシート背面を保護する「シートバックソフトトレー」と、濡れたり汚れたりしたものをそのまま置ける「ラゲッジトレー」

また、純正ナビやディスプレイオーディオに搭載できる、ホンダアクセスならではのユニークな安全運転支援ナビオプション「リアカメラdeあんしんプラス4」を体験。バックで駐車するときに真上から見たような映像でサポートしてくれたり、バックで出庫するときにも横から来る歩行者や車両などを検知して教えてくれたり、走行中の死角にいる車両をナビ画面で知らせてくれたりと、さらに安心感が高まる装備です。

「リアカメラdeあんしんプラス4」で駐車も楽々!

「リアカメラdeあんしんプラス4」で駐車も楽々!

こうして見ると、「WR-V」のデザインや室内空間、走りなど、基本的なところはどれをとっても、ほぼ同じサイズの「ヴェゼル」と肩を並べると思えるほどの実力派。もちろん、「ヴェゼル」のような贅沢装備はあまり用意されていませんが、その代わり価格帯を1つ下げてくれたという捉え方ができる、かなり大盤振る舞いな1台です。

まるも亜希子
Writer
まるも亜希子
2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。誰でも今日からできる交通安全応援プロジェクト「OKISHU(オキシュー)」でイベント等も開催。
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芝崎 瞬(編集部)
Editor
芝崎 瞬(編集部)
自動車専門媒体からゴルフ専門メディアを経由し、価格.comマガジンへ。クルマは左ハンドルMTに限る! と思って乗り継いでいたが翻意して今は右AT。得意クラブは、強いて言えばミドルアイアン。
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