バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂

ホンダ新型「CT125・ハンターカブ」に試乗! キャンプも林道も、街乗りだって楽しい

2020年の発売以来、原付二種(125cc以下)のカテゴリだけでなく、バイク人気そのものを牽引してきたホンダ「CT125・ハンターカブ」が、2022年にモデルチェンジし、新型エンジンを搭載。同社の「グロム」「モンキー125」「ダックス125」などに採用されるロングストロークタイプのエンジンに変わった新型はどのような進化を遂げたのか、街中や郊外の林道を走って確かめてみた。

舗装路はもちろん、未舗装路でも新型「CT125・ハンターカブ」の実力をチェック!

舗装路はもちろん、未舗装路でも新型「CT125・ハンターカブ」の実力をチェック!

基本設計はそのままにエンジンと各部をブラッシュアップ

2020年に発売された「CT125・ハンターカブ」のコンセプトモデルが最初に姿を現したのは、2019年に開催された「東京モーターショー」でのこと。過去に「ハンターカブ」の愛称で親しまれた「ホンダ CT110」のデザインを現代的に再現していると話題となり、いざ発売されると、昔からのバイクファンのみならず、ホンダの過去モデルの存在を知らない層にも支持され、販売台数を大きく伸ばした。オフロード走行にも対応したタフな設計や、流行のキャンプツーリングなどに出かけやすい大型キャリアなどの装備、アウトドアをイメージさせるデザインが幅広い層にヒットしたようだ。

2020年6月に発売された「CT125・ハンターカブ」

2020年6月に発売された「CT125・ハンターカブ」

新型「CT125・ハンターカブ」はエンジンが変わったものの、外観上の変更点はきわめて少ない。従来モデルにもあるカラー「グローイングレッド」のタイプで比較してみると、パッと見てわかる変化は、ボディと同色だったリアキャリアがブラックになったくらいだ。新型は、人気の高いデザインや基本設計はそのままにパワーユニットを一新し、かつ各部をブラッシュアップしている。

新しいエンジンを搭載した新型「CT125・ハンターカブ」のサイズは1,965(全長)×805(全幅)×1,085(全高)mmで、車重は118kg。従来モデルと比べると、全長が5mm長くなったが、重量は2kg減少。メーカー希望小売価格は44万円(税込)と据え置かれている

新しいエンジンを搭載した新型「CT125・ハンターカブ」のサイズは1,965(全長)×805(全幅)×1,085(全高)mmで、車重は118kg。従来モデルと比べると、全長が5mm長くなったが、重量は2kg減少。メーカー希望小売価格は44万円(税込)と据え置かれている

「CT125・ハンターカブ」の特徴のひとつである大型のキャリア。形状は変わらないが、新型では「グローイングレッド」のボディカラーではキャリアはブラックとなる(従来モデルはボディと同色)

「CT125・ハンターカブ」の特徴のひとつである大型のキャリア。形状は変わらないが、新型では「グローイングレッド」のボディカラーではキャリアはブラックとなる(従来モデルはボディと同色)

「グローイングレッド」のほかに「マットアーマードシルバーメタリック」(写真左)と「パールオーガニックグリーン」(写真右)のカラーバリエーションが用意されている。後者のみ、キャリアのカラーはボディと同色

「グローイングレッド」のほかに「マットアーマードシルバーメタリック」(写真左)と「パールオーガニックグリーン」(写真右)のカラーバリエーションが用意されている。後者のみ、キャリアのカラーはボディと同色

エアクリーナーの吸気口をキャリアに設けているのも特徴のひとつ。「ホンダ CT110」の時代から受け継がれた機構だ

エアクリーナーの吸気口をキャリアに設けているのも特徴のひとつ。「ホンダ CT110」の時代から受け継がれた機構だ

エンジンは、排気量が従来型の124ccから123ccに若干縮小されたものの、最高出力は8.8PSから9.1PSにアップし、発生回転数は7,000rpmから6,250rpmに下げられている。最大トルクは11Nmと従来と変わりないが、発生回転数は250rpm高い4,750rpmとなった。ピストンの内径(ボア)に対して行程(ストローク)の大きいロングストローク型のエンジンは、低回転域がトルクフルな特性となる傾向が強く、同じ型のエンジンを搭載した「ダックス125」や「モンキー125」などもトルクが増した印象だったが、新型「CT125・ハンターカブ」ではピークパワーが高められているのが興味深い。

リニューアルされたエンジンは、シリンダーが水平近くまで前傾した“横型”と呼ばれるもの。「グロム」や「ダックス125」、「モンキー125」に搭載されたエンジンと基本設計は同一で、外観上の大きな違いはない

リニューアルされたエンジンは、シリンダーが水平近くまで前傾した“横型”と呼ばれるもの。「グロム」や「ダックス125」、「モンキー125」に搭載されたエンジンと基本設計は同一で、外観上の大きな違いはない

エンジン以外にも、実は細かい部分がブラッシュアップされている。リアサスペンションにはスプリング初期荷重(イニシャル)を調整できるプリロード調整機構が追加。締め込んだ際のサスペンションの沈み込みを抑制する。そして、二次減速比の変更にともないリアホイールの位置が変わったことで、全長とホイールベースもそれぞれ5mm長くなった。

リアサスペンションに5段階のプリロード調整機能を追加。タンデムや重い荷物をリアキャリアに積んで出掛ける人にとってはうれしい装備だろう

リアサスペンションに5段階のプリロード調整機能を追加。タンデムや重い荷物をリアキャリアに積んで出掛ける人にとってはうれしい装備だろう

二次減速比の変更により、ホイールベースは従来の1,255mmから1,260mmとなった。タイヤサイズは前後とも80/90-17で変わっていない

二次減速比の変更により、ホイールベースは従来の1,255mmから1,260mmとなった。タイヤサイズは前後とも80/90-17で変わっていない

エンジンガードには、左右の縦パイプをつなぐ横パイプが追加された。補強のための変更点だが、外観上で新型を見分けるポイントになる

エンジンガードには、左右の縦パイプをつなぐ横パイプが追加された。補強のための変更点だが、外観上で新型を見分けるポイントになる

「CT125・ハンターカブ」の特徴でもあるアップタイプのマフラー。ヒートガードのデザインこそ変わっていないが、マフラー本体の形状は若干改良されている

「CT125・ハンターカブ」の特徴でもあるアップタイプのマフラー。ヒートガードのデザインこそ変わっていないが、マフラー本体の形状は若干改良されている

エンジンも、オイルフィラーキャップの位置やキックアームの形状などが少し変更されている

エンジンも、オイルフィラーキャップの位置やキックアームの形状などが少し変更されている

フロントブレーキにはABS付きで片押し2ポッドタイプのキャリパーを採用。金属製のフェンダーや、蛇腹タイプのフォークブーツなどは継承されている

フロントブレーキにはABS付きで片押し2ポッドタイプのキャリパーを採用。金属製のフェンダーや、蛇腹タイプのフォークブーツなどは継承されている

コックピットも従来モデルと同じ。幅の広いハンドルに、リブの立った滑りにくいオフロード向けのグリップを採用している

コックピットも従来モデルと同じ。幅の広いハンドルに、リブの立った滑りにくいオフロード向けのグリップを採用している

メーターの表示項目なども継承。個人的には、シフトポジションインジケーターを付けてほしかった

メーターの表示項目なども継承。個人的には、シフトポジションインジケーターを付けてほしかった

新型エンジンは中回転域でのパワーが向上!

筆者は、「CT125・ハンターカブ」と同じロングストロークエンジンを搭載した「グロム」や「ダックス125」「モンキー125」のほか、排気量は違うが同タイプのエンジンを搭載した「スーパーカブ110」や「クロスカブ110」にすでに試乗している。これらのマシンの多くは、低回転域のトルクが増し、街乗りなどでの乗りやすさが向上した印象だった。ただ、「CT125・ハンターカブ」は従来から低回転域のトルクが太いので、はたしてその部分を強化するメリットがあるのかが気になるところだ。

シート高は800mmと、スーパーカブ系で最も高い。身長175cmの筆者の場合、両足のかかとは接地しないくらいだ。小柄な人は最初とまどうかもしれないが、車重が軽いのでそれほど心配する必要はない

シート高は800mmと、スーパーカブ系で最も高い。身長175cmの筆者の場合、両足のかかとは接地しないくらいだ。小柄な人は最初とまどうかもしれないが、車重が軽いのでそれほど心配する必要はない

2020年に発売された「CT125・ハンターカブ」に試乗した際、低回転域のトルクの太さに驚かされた。新型も、その点は変わらない。最大トルクの数値は同じでもロングストロークタイプのエンジンでは実用域でのトルク感がアップすることも少なくないが、新型ではそうした変化も感じなかった。

その代わりに、中回転域以上でのパワー感が向上している印象。アクセルを少し大きめに開けた際に加速していく感覚が強くなっている。幹線道路などで先行車を追い越すときなどに、シフトダウンをしなくてもアクセル開度を大きくするだけで済んでしまう感覚だ。最高出力値の向上はわずか0.3PSだが、それ以上の力強さを感じる。低回転域のトルクはそのままに、中回転域より上のパワーが高まっているので、幹線道路を使った移動がよりスムーズになった。

アクセルを開けていったときのスピードの乗りがよく、街乗りだけでなくツーリング時の移動も快適に!

アクセルを開けていったときのスピードの乗りがよく、街乗りだけでなくツーリング時の移動も快適に!

エンジン以外の部分では、従来モデルとの変化はほぼ感じられなかった。リアサスペンションにプリロード調整が追加されたが、デフォルト状態でよく動く感覚は従来モデルと同じ。大人2人でタンデムすると、かなりリアが沈み込むため、そうしたシーンではプリロードを1段階か2段階締め込むとよいフィーリングになる。

そして、フロントサスペンションも従来モデルと変わらず動きがいい。トップブリッジまで伸びた構造で、「スーパーカブ」シリーズとしては最も剛性感があるため、ある程度スピードが乗るようなカーブでもフロント周りの安心感は絶大。ビジネスバイクっぽさはなく、普通のバイクに乗っている感覚だ。移動だけでなく、操ることも楽しめる足回りだといえる。

ビジネスバイクがベースとは思えないほど、コーナリング時の特にスピードが乗るシーンでの安定感がある。街乗りだけでなく、ワインディングも楽しめるマシンだ

ビジネスバイクがベースとは思えないほど、コーナリング時の特にスピードが乗るシーンでの安定感がある。街乗りだけでなく、ワインディングも楽しめるマシンだ

未舗装の林道では、こうしたシーンでよく使う回転域のトルク感は従来モデルと同じ印象。足回りの作りがいいため、荒れた道でも安心して走れる。それでいて、少し大きめにアクセルを開ければ、リアタイヤを少しスライドさせながら曲がっていく走り方も可能。オフロード初心者の林道デビューに推せるだけでなく、ある程度オフになれたライダーでも、オフロードならではの楽しみ方ができる懐の深さを持ち合わせている。

シート外側の角に座るようなオフロード乗りポジションで、少しリアを滑らせながら走るのが楽しい

シート外側の角に座るようなオフロード乗りポジションで、少しリアを滑らせながら走るのが楽しい

フレーム構造上、ニーグリップはできないが、写真のようにスタンディングポジションを取るとシートを膝で挟み込めるので、オフロードでの安心感が高まる

フレーム構造上、ニーグリップはできないが、写真のようにスタンディングポジションを取るとシートを膝で挟み込めるので、オフロードでの安心感が高まる

【試乗を終えて】
オフロードだけでなく街中でも乗りやすく進化

「CT125・ハンターカブ」は、オフロードでの走行や、大型のキャリアに荷物を積んで出かけるような使い方をしたい人に選ばれることが多いマシンだが、新型は、そうしたユーザーが使いたいであろうシーンを想定したブラッシュアップがされている。

重い荷物にも対応する足回りとなったことで、荷物を積んでのキャンプツーリングやタンデムなどがより快適にこなせるようになり、新型エンジンの搭載で中回転域以上のパワーがアップし、スピードが乗りやすい幹線道路などでの移動がスムーズになった。元々素性のいいマシンだったが、ツーリングに出かける途中の移動がさらに楽になったのは魅力的。それでいて価格は据え置きなのだから、ファンにとってはありがたい限りだ。

●メインカット、走行シーン撮影:松川忍

増谷茂樹
Writer
増谷茂樹
カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。
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中村真由美(編集部)
Editor
中村真由美(編集部)
モノ雑誌のシロモノ家電の編集者として6年間従事した後、価格.comマガジンで同ジャンルを主に担当。気づけば15年以上、生活家電の情報を追い、さまざまな製品に触れています。
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