キャンピングカーに憧れはあるものの、予算的なハードルが高く実現は難しいと思っている人も多いだろう。しかし、車種や装備を工夫すれば、300万円くらいで家族4人が泊まって過ごせるキャンピングカーを手に入れることができる。今回は、賢く購入し、キャンピングカーのオーナーとなった一木さんに選び方のポイントを教えてもらうとともに、一木さん家族のキャンピングカーライフにも密着してみた!
【この記事も見ておきたい!】
・内装や維持費のことも! 購入前に知っておきたいキャンピングカーの基本
・車内で寝転んだ写真付き! 快適な車中泊ができる自動車はコレだ!!
キャンピングカーはベースとなる車種を決め、そこに装備する冷蔵庫やコンロ、シャワーをはじめとするオプションを選んでいく。いわゆる改造となるため、販売店(ディーラー)ではなく、架装メーカー(キャンピングカーメーカーと言うこともある)で購入するのが一般的だが、それほど多くはないものの、ディーラーが販売しているキャンピングカーもある。今回紹介する一木さんが選んだのも、ディーラー(トヨタカローラ横浜)が企画・販売しているもの。商用車であるタウンエースをベースに、オリジナルの内外装を施した「キャンパーアルトピアーノ」だ。
ベース車は真っ白だが、キャンパーアルトピアーノはツートンカラーとされ、商用車っぽさが払拭されている。ベージュ×ホワイトの「デゼルト」とグレイッシュグリーン×ホワイトの「フォレスタ」、ライトグリーン×ホワイトの「プラテリア」の3色が基本カラーだが、ベース車同様のホワイトやシルバー1色という選択も可能。ホワイトまたはシルバーの単色にした場合、14万円〜割引される
キャンパーアルトピアーノの大きな特徴は、手ごろな価格であるということ。ワンボックスタイプのバンをカスタマイズした「バンコン」は300〜500万円くらいするが、キャンパーアルトピアーノはベースモデルによって異なるが、もっとも安いグレード(2WD、DX/MT)で227万9,000円(税別)〜、もっとも高いグレード(4WD、GL/AT)で291万182円(税別)〜となっている。このように価格が抑えられたのは、内装が最小限であるため。フルフラットのベッドに展開できるシートとテーブルを備えただけで、本格的なキャンピングカーというより、車中泊仕様のクルマに近い位置づけとなっている。現にディーラーでは「車中泊仕様車」と記しており、キャンピングカーとは称していない。というのも、キャンピングカーは基本的にコンロや排水システムなどを装備した「8ナンバー」(改造車)がイメージされるからだ。だが、近年人気の「軽キャンパー」もキャンピングカーに分類されている現状、キャンパーアルトピアーノも立派なキャンピングカーであると言っていいだろう。
運転席と助手席、3人がけのリアシートが装備されており、乗車定員は5人。リアシートは柄のあるファブリック製とされ、商用車とは一線を画した雰囲気になっている。なお、フロントシートは無地なので、柄を揃えたい時はオプションのカバー(7万円/税別)を装着しよう
車体後方にはコーナーテーブルが設置されている。リアハッチを開けて、外に足を出してくつろぐのもいい
コーナーテーブルの下にはラックも装備。ティッシュボックスも付いている
ラゲージスペースにベッドを設置し、リアシートを展開するとフルフラットなベッドになる。車中泊に向いた普通の自動車でも、座面を上にした状態ではこれほどフラットにはならないので、寝心地は断然いい。なお、広さは最長2,050mmで、大人2人が就寝可能
ラゲージスペースに設置したベッドは椅子としても使える。リアシートを反転させて向かい合わせにし、標準装備のテーブルを組み立ててくつろぐのもいい
もともと、国産のミニバンに乗りキャンプなどに出かけ、車中泊をしていた一木さん一家。これまで乗っていた自動車が古くなってきたのと、犬を飼い始めたこともあり、もっと快適に車中泊できるクルマに買い換えようと考えていたところ、キャンパーアルトピアーノに出会ったという。キャンピングカーへの憧れはあったものの、価格が高いので二の足を踏んでいたのだが、キャンパーアルトピアーノなら許容範囲内。トイレやシャワー、食事は周囲の施設を利用するので、オプションを付ける必要もない。キャンパーアルトピアーノで足りないのは、家族4人と犬1匹が快適に寝るスペースだが、それはオプションのルーフテントを追加すれば解決できる。ルーフテントとは、天井にキャリアを付け、そこに設置するテント。ルーフテントを使えば、家族4人で車中泊が可能となる。なお、新車購入時にルーフテントを装備した状態で納車してくれるディーラーや架装メーカーは少ない。こういったところも、キャンパーアルトピアーノの魅力のひとつだ。
一木さんが選んだのは、GLグレードの2WDのAT車。ルーフテント(16万6,667円/税別)もオプションで装着している。なお、キャンパーアルトピアーノはベース車に準じたグレードがあるが、標準のキャンピングカーの装備は同じ
運転席はノーマルのタウンエースと同様。奥さんが普段使いできることも条件だったので、サイズ感的にもキャンパーアルトピアーノは理想的なクルマだったという
キャンパーアルトピアーノには一木さんが選んだルーフテントのほかに、18Lの冷凍・冷蔵庫(8万円/税別)やシャワー付きシンク(9万円/税別)などのオプションも用意されている。しかし、車内で調理をしない一木さん一家には、これらのオプションは不要。その代わりに、絶対付けておきたかったのが、換気のためのファン(8万円/税別)と窓をふさげる遮光スクリーン(3万8,500円/税別)だ。そして、最後まで迷いに迷ってサブバッテリー(15万円/税別)も追加することに決定。必要最低限の装備で、できるだけ予算を抑えたいのはやまやまだが、地震などの災害時に避難場所として活用した際に、電源が使えることは大きなメリットであると考え、サブバッテリーを装備することにしたという。
窓を開けなくても車内の空気を換気できるファンは、快適さが格段に変わってくるらしい。サブバッテリーから電源を取っているので、エンジンをかけなくても稼働する
サブバッテリーはベッド下に装備。1,500Wの出力に対応している
家庭用の100Vコンセントのほか、シガーソケットやUSBポートも装備。スマートフォンを充電できるのはもちろん、消費電力1,500Wまでの電気ケトルや電子レンジなどを使うこともできる
遮光スクリーンはフロントガラス、リアガラスの分も含め8枚セット。自分で装着する
遮光スクリーンを装着して就寝すれば、日差しやライトがまぶしくないだけでなく、外から車内を見えなくできる
納車時に装備してもらったオプションはここまでで、収納棚などは市販のものを使ってDIYし、より快適性を高めている。コストを抑えるためには、自分で工夫するのが1番だ!
リアシートと柄は異なるが、純正のフロントシートカバー(7万円/税別)を購入せず自分で用意すれば、予算を大きく削減できる
フロントシートの脇に薄い小物入れを用意しておくと、けっこう便利。差し色になるのも◎
フロントシートの背面に付いているバーにネットを取り付ければ、収納棚に!
ホームセンターで購入したパイプを加工して、天井部分にネットを自作。内装の側面にネジ穴の多い商用車だから、DIYもしやすい
いよいよ、キャンパーアルトピアーノで初めてのお出かけ! 昼間は釣りを楽しみ、そのまま港で車中泊するという。駐車する場所の周囲にはトイレや食堂があるので、それらをフルに利用し、車内ではほぼ寝るだけ。キャンピングカーとしては装備が少なそうに思えるが、一木さんのようなスタイルで使うなら不足はない。
自動車を走らせる用事をすべて済ませたら、寝床の準備。付属のハシゴをかけて、ルーフテントを広げる。一般的なテントはポールを組み立てる必要があるが、このルーフテントはファスナーを開けて、開くだけ。1分もあれば設営が完了する
ルーフテントはこのような感じになる
キャリアの上に設営するので、車体の前後、横にはみ出さない。1台分の駐車スペースで収まる
ルーフテントに寝袋を移動させたりしている間に、車内のシートは展開され、ベッドになっていた
「ルーフテントの準備ができたよ!」と子どもたちに声をかけると、勢いよくハシゴを上っていく。ハシゴを使って出入りしなければならないので、子どもたちは大丈夫かと心配していたが、まったく問題ないようだ
ルーフテントの定員は2人だが、けっこう広い。このような空間だと、日頃話せないようなことを語り合ってしまいそうだ
寝床の準備を済ませた一木さん一家は、近くのお店で夕食。その後は、車内でくつろいだり、思い思いの時間を過ごしていた。
子どもたちはベッドの上で、本を読んだり、トランプをしたりと、家にいるのと変わらない感じ。LEDの車内灯もあるので、明るさもバッチリ!
バックゲートに灯りを吊るし、アウトドアチェアに座って過ごすのもいい
サブバッテリーを搭載したおかげで、ポータブル冷蔵庫で飲み物を冷やしておくことができた。ポータブル冷蔵庫はもともと持っていたものだが、サブバッテリーを追加したのは正解だったようだ
ゆったりと自由な時間を過ごしたあとは、就寝。ルーフテントに2人、車内のベッドに2人で寝る。
ルーフテントも大人が足を伸ばして寝られる長さがある。2人並んでも、余裕があるほど広い
ルーフテントに2人が寝て、残る2人と犬は車内のベッドで就寝
※奥さんの代わりに旦那さんが出演
ちなみに、ルーフテントの寝心地については、一般的なテント泊と同じくらいだという。冬は寒そうなので、防寒対策は必須。いっぽう車内のベッドのほうは、クッション性がいいのでかなり快適だったとのこと。
一木さんのように、食事はお店で済ませ、お風呂も温泉施設を利用するなら、キャンパーアルトピアーノを買わなくても、車中泊向きの自動車でもいいのでは? と思われる人もいるだろう。近年は、シートがフルフラットになる車中泊向きの自動車がたくさんリリースされている。しかし、そのほとんどがシートの背をベッド代わりにするため、クッション性の高いマットを準備しなければならない。ひとりで車中泊する人や連泊はしないなら、マット+車中泊向けの自動車でもかまわないが、家族3〜4人で寝るなら、わざわざマットを積み込まなくてもいいキャンパーアルトピアーノのほうが手間もなく、快適性も高いのは間違いない。
キャンピングカーというと高価なイメージがあるが、今回紹介したキャンパーアルトピアーノのように機能を絞れば価格も抑えられる。また、家族4人で乗って出かけられ、車中泊もできる仕様ながら、日常の買い物や子どもの送り迎えなどにも使えるサイズ感であるところも魅力的。キャンピングカーにはあれもこれも装備を付けたくなるが、一木さんのように必要最低限な装備に留め、就寝や移動中の快適さを優先するスタイルもなかなかいいものだ。
装備は最小限だが、サブバッテリーがあるだけで便利さは格段にアップ。朝イチのコーヒータイムを楽しむ一木さんたちを見ていると、筆者もキャンピングカーがほしくなってきた
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