エルサルバドル大統領選、現職ブケレ氏圧勝で1党独裁の懸念

エルサルバドル大統領選、現職ブケレ氏圧勝で1党独裁の懸念
エルサルバドルで4日実施された大統領選は、現職のブケレ大統領が地滑り的勝利を収めた。ギャング弾圧による治安改善が支持された形だが、事実上の1党独裁国家になり、民主主義が脅かされるとの懸念も広がっている。写真は選挙後に話をするブケレ大統領。サンサルバドルで4日撮影。(2024年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)
[サンサルバドル(エルサルバドル) 5日 ロイター] - エルサルバドルで4日実施された大統領選は、現職のブケレ大統領が地滑り的勝利を収めた。ギャング弾圧による治安改善が支持された形だが、事実上の1党独裁国家になり、民主主義が脅かされるとの懸念も広がっている。
5日時点で開票は続いているが、ブケレ氏の得票率は83%前後に達するもようで、議会選(定員60)でも同氏の与党・新思想党が58議席を制する勢いだ。
人権団体は、権力の集中が進んで公民権がさらに抑圧されると懸念している。中米大学・人権研究所のディレクター、ガブリエラ・サントス氏は「ここまで権力が集中したということは、エルサルバドルに(公民権の)保証はなくなったことを意味する」と述べた。
しかし支持者らは、法的手続きに基づかずに多くの市民を拘束するなどの独裁的手法を意に介さず、むしろギャングによる暴力が減って夜間に外出できるようになったことに感謝している。
一部の中米諸国は、左派ゲリラと、米国を後ろ盾とする右派独裁体制との紛争を経て、持続的な民主主義モデルを立ち上げるのに苦慮してきた。ブケレ氏の人気ぶりは、そうした実情を浮き彫りにしている。
ブケレ氏は大統領の任期制限を撤廃し、隣国ニカラグアのオルテガ大統領のように終身統治を目指すのではないか、との懸念もある。
一方、野党の大統領候補はいずれも得票率が1桁台にとどまる見通しで、支持率回復は遠い道のりだ。ブケレ氏は、インターネット上でジャーナリストや政敵を攻撃してくれる「部隊」を雇ってメディアを巧みに操り、選挙戦で野党を「ギャングの仲間」と位置付けることに成功した。
ここ数年、議会はブケレ氏の提案を右から左へ通すだけで、成立した法律の大半は大統領府の提案によるものだった。

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