焦点:イラン、イスラエルへの報復に選択肢 全面戦争は回避へ

焦点:イラン、イスラエルへの報復に選択肢 全面戦争は回避へ
4月3日、 シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺への攻撃を受け、イランの最高指導者ハメネイ師はイスラエルに対する報復を宣言したが、大規模な衝突を引き起こすことなくいかに報復するかという難問に直面する。写真は2日、攻撃を受け破壊されたダマスカスのイラン大使館(2024年 ロイター/Firas Makdesi)
[ワシントン 3日 ロイター] - シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺への攻撃を受け、イランの最高指導者ハメネイ師はイスラエルに対する報復を宣言したが、大規模な衝突を引き起こすことなくいかに報復するかという難問に直面する。
イランにはさまざまな選択肢がある。同国が支援する武装組織に中東駐留米軍あるいはイスラエルを直接攻撃させるか、米国やその同盟国が長年抑制を求めてきた核開発を加速させることが可能だ。
米政府当局者らは、イランの支援を受ける武装組織がイラクとシリアに駐留する米軍を攻撃するかどうかを注視していると述べた。
米軍は2月初め、ヨルダンの米軍施設で米兵士が死亡した攻撃への報復として、イラン革命防衛隊や親イラン武装組織に関連するイラクとシリアの施設を空爆。これを受けて中東駐留米軍への攻撃は2月に停止していた。
米政府当局者らは、1日のイラン大使館周辺への攻撃後、親イラン武装組織が駐留米軍を攻撃しようとしていると示唆する情報はまだ入っていないと述べた。イランメディアは、大使館攻撃でイラン革命防衛隊のモハンマドレザ・ザヘディ司令官などが死亡したと報じた。
米国は2日、イランによる報復をけん制。ウッド国連次席大使は「われわれは自国の人員を守ることをためらわない」と言明し、イランや親イラン組織に対しこの状況を利用して米側への攻撃を再開しないよう改めて警告すると述べた。 もっと見る
<全面戦争回避>
ある関係筋は、イランが衝突を望んでいないのは明白で、報復すれば衝突を招き得るという「ジレンマに直面している」と指摘。「即応力はあるが状況悪化は目指さない」立場を示すために行動を調整しようとしているとした。
その上で、イランがイスラエル本国かその大使館、あるいは海外のユダヤ人施設を攻撃する可能性があると分析した。
米政府高官は、イスラエル軍による攻撃の重大性を考慮すると、イランは米軍を狙うのではなく、イスラエルの国益を直接攻撃して報復する以外の選択肢はないかもしれないと述べた。
米シンクタンク「外交問題評議会」の中東専門家、エリオット・エイブラムス氏もまた、イランは全面戦争を望んでいないが、イスラエルの国益を標的にする可能性はあるとの見方を示した。
イランはイスラエルとレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラが大規模な戦争を始めることは望んでおらず、ヒズボラが目立った行動を取ることはないとも予想。「他にも報復の方法は数多くある。一つの例を挙げるならイスラエル大使館の爆破を試みることだ」と語った。
イランはまた、核開発を加速させることで対応する可能性もある。トランプ前米大統領が2018年にイラン核合意から離脱して以来、イランは核開発を強化してきた。
しかし、核兵器級の90%のウラン濃縮を行う、あるいは核兵器を実際に設計する作業を再開するという最も劇的な行動を取れば裏目に出て、イスラエルや米国からの攻撃を招く可能性がある。
関係筋はこのような劇的な行動は、核兵器獲得を決定したとイスラエルと米国に見なされるだろうと指摘。「つまり大きなリスクを取ることになる。そのような準備ができているとは思わない」と語った。

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トムソン・ロイター

National security correspondent focusing on the Pentagon in Washington D.C. Reports on U.S. military activity and operations throughout the world and the impact that they have. Has reported from over two dozen countries to include Iraq, Afghanistan, and much of the Middle East, Asia and Europe. From Karachi, Pakistan.