アングル:新天皇と皇后で変わる日本、「令和」時代の皇室とは

アングル:新天皇と皇后で変わる日本、「令和」時代の皇室とは
 4月25日、新天皇に即位する皇太子さま、新皇后になる雅子さまは、大学で教育を受け、語学に堪能、海外に数年以上滞在し、皇太子さまはその間洗濯も自分でされるなど、さまざまな面で「初」の天皇陛下・皇后陛下になる。都内で2017年4月撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)
Elaine Lies
[東京 25日 ロイター] - 5月1日に新天皇に即位する皇太子さま、新皇后になる雅子さまは、大学で教育を受け、語学に堪能、海外に数年以上滞在し、皇太子さまはその間洗濯も自分でされるなど、さまざまな面で「初」の天皇陛下・皇后陛下になる。
2人が新しい天皇・皇后像を形成する準備を進めるなか、皇室がさらに国際化し、国民に近い存在になることへの期待が高まっている。
米シンクタンク、ウッドロー・ウィルソン・センター上級研究員の後藤志保子氏は、「新しい世代の皇族として、社会の大義のためにこれまでより一歩踏み出した活動を広げる機会」があると述べた。
雅子さまには元外交官としての経験がある。後藤氏は、2人には独自の経歴と関心があり、それらに積極的に取り組んでいくために必要なスキルがあると述べ、天皇が神とされた昭和の第2次世界大戦以降、皇室は大きく変化したと指摘した。
<天皇の存在とは>
今上天皇と美智子さまは、特に災害の後などに国民に寄り添い、手を差し伸べてきた。およそ200年ぶりとなる今上天皇の退位により、天皇とはどのような存在であるべきかという議論も起きた。
宮内庁の元職員は、「2つの異なる解釈があった」と語る。ひとつは、新天皇は今上天皇のように積極的に国民とふれあうべきという考えで、もうひとつは天皇は「祈っているだけでよい」という考えだ。元職員は、将来を考えれば、ただ存在するだけの天皇は国民の信頼と共感を得られないだろうとの見解を示した。
59歳になる皇太子さまは今上天皇と皇后さまの公務を引き継いでいく考えだが、皇室は時代に対応していく必要があると発言している。観測筋は、それは日本のアイデンティティーの一部である立場を活用して発言することや、手を差し伸べることを意味するのではないかと推測する。
女性皇族に関する著書がある精神科医の香山リカ氏は、皇室の人々が、例えばインターネット交流サイト(SNS)を使うなどして、自分の意見をある程度表明していくことや、言葉でなくても写真投稿サイトのインスタグラムなどを活用するのも時代に適しているのではないかと語った。皇太子さまは以前、海外で一般の人との自撮り写真(セルフィ―)にも応じている。
<雅子さまへの共感>
国民にとっての心配は、宮内庁が「適応障害」と診断した病気に悩まされ、約10年にわたってほとんどの公務から遠ざかることとなった雅子さまの体調だ。
名古屋大大学院の河西秀哉准教授は、雅子さまが災害時の慰問などに行くようになれば、国民は、自分たちと同じくこれまで困難に立ち向かってきた新皇后に親近感を抱くだろうと指摘。美智子さまへの感情が感謝の気持ちであったことに対し、雅子さまへの感情は共感となり、より親しみを感じるのではないかとの見解を示した。
雅子さまはこれまで幾度となく、誕生日に出す感想の中で、子どもの貧困や虐待について記している。彼女にとって関心の高いテーマであることの表れと言える。
中世ヨーロッパの水上交通を研究した皇太子さまは、水問題や環境保護に熱心で、今後は気候変動にも取り組む意向を示している。
後藤氏は、「皇太子さまにとっても、国にとっても、国際的にも重要な課題で、他にもそのようなテーマは多くある。2人には、取り組むにあたり活用できるプラットホームがある」と述べた。
「環境問題や、国境を越えた理解や対話を深める活動は、世界が目先のことばかりを見て排他的になるなか、重要だ」
しかし、変化を好まない日本では、時間が必要だ。
河西氏によると、今上天皇と美智子さまも、最初は批判を受けた。美智子さまが膝をつき、慰問する相手の手をとったときには、天皇の権威を傷つけたとの批判があったという。
新天皇・皇后も同じように、何かを変えては立ち止まり、また次の一歩を踏み出すだろうと、河西氏は語った。
(翻訳:宗えりか、編集:久保信博)

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