スターオーシャン6 THE DIVINE FORCE - レビュー

大胆な戦闘システムと繊細な「仲間」との旅は待ち望んだ「スターオーシャン」そのものだ

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多くのJRPGファンがそうであるように、筆者もまた「スターオーシャン」に熱中した経験がある。『スターオーシャン』が制作された90年代後半は、多くの新進気鋭のJRPGが生み出されていたが、その中でも一際「スターオーシャン」シリーズには夢中になった。思うに、そこで描かれた冒険は「救世主が世界を救うストーリー」だけでなく「誰と救うのか」とでも言うような「仲間」のリアリティがずば抜けていた。特徴的な「バトルシステム」や「スペースオペラ風のシナリオ」も重要な柱ではあるが、物語を共に紡いでいく代え難い「仲間」の存在こそ、まさしく「スターオーシャン」がJRPGファンの心を掴んだ理由だろう。

 

本作は、シリーズ25周年記念作品と銘打たれる、およそ6年ぶりのナンバリング新作だ。シリーズは一時は、国内を代表するJRPGとして存在感の大きなタイトルだったが、率直に言って現在では、当時の勢いはなりを潜めている。特に、2016年に発売された『スターオーシャン5 -Integrity and Faithlessness-』は、大雑把でシリーズの魅力を感じ辛い「バトルシステム」や「ボリューム不足のストーリー」など、シリーズファンにとって満足できるクオリティではなかった。

このような背景もあり、本作は全てのファンに歓迎されていたわけではない。筆者自身も実際にプレイするまで、面白さに対して懐疑的な気持ちがあったことは否定できない。だが、いざゲームが始まると、緻密さと大胆さが両立するバトルシステムや、往年のスペースオペラを思わせるシナリオなど、シリーズの魅力をすぐに再認識できた。何よりシリーズの重要な柱である「仲間」との交流が丁寧に描かれることで、本作はシリーズ25周年を記念するにふさわしい確かな「遊び心地」を感じられた。本稿はレイモンド編をクリアした時点でのレビューであり、PS5版でのプレイを前提としている。

「仲間」を中心とするロールプレイング

まずは、本作の物語やシリーズの核でもあるキャラクターについて詳しく語ろう。本作の主人公は宇宙での運送業を生業とするレイモンド・ローレンス。レイモンドは銀河の辺境での輸送任務の最中に、とある戦闘艦から不意の砲撃を受け、アスター4号星という惑星への緊急着陸を余儀なくされる。見知らぬ惑星に不時着した直後、レイモンドはアスター4号星に位置するオーシディアス王国の王女レティシアと出会う。外界との接触が少なく「未開惑星」とみなされるアスター4号星の一国の王女は、「空」から現れたレイモンドに一縷の希望を抱く。レティシアは、不時着に伴いはぐれたレイモンドの仲間を探すことを条件に、王国を救う手がかりになる人物を共に捜索することをレイモンドに請う。物語では互いに協力しつつ目的の為に、共に旅を続けていくことになる。

W主人公の1人「レイモンド・ローレンス」

また、本作の特筆すべき点として、シナリオに「ダブルヒーローシステム」というシステムが採用されていることが挙げられる。これは、『スターオーシャン セカンドストーリー』でも搭載されていた要素で、ゲーム開始時に主人公を選択できる機能だ。本作では、先述したレイモンドとレティシアのW主人公から1人を選択し、ストーリーを開始できる。ゲームでは、レイモンドとレティシアが一緒に行動しているパートがほとんどなので、大筋の物語は共通しているが、ちょっとした感情の機微や、パーティメンバーが別行動を取る場面で、選択した主人公の視点からストーリーを楽しめるようになっている。

W主人公のもう1人「レティシア・オーシディアス」

異星人同士の「ボーイミーツガール」というわかりやすい導入、アスター4号星における国家間の動乱など、中盤までの丁寧な展開は、俯瞰的な立場のレイモンド、より切迫したレティシアの視点でも没入感がある。一方で、中盤以降はアスター4号星を飛び出し、銀河全体の存亡が関わる事態へと進展していくのだが、あまりに話の規模が大きく、やや突拍子のない展開も多くなっていく。特に、レイモンドやレティシアの心情描写が薄く半ば巻き込まれる形で進行していったり、銀河全体を揺るがす混乱を描くには設定面の描写が少なかったりと「ご都合主義」のような展開も見受けられる。

だが、プレイ中の多くのシークエンスで、キャラクターの一挙手一投足に笑えたり熱くなったり、現在も2周目を遊べている最大の理由は「仲間」の存在だ。作品ごとに効果的に機能している面としていない面はあるが、「スターオーシャン」では冒険を共にする「仲間」を重視している。

物語を盛り上げる個性豊かな仲間たち

例えば、第1作では主人公のラティと地球連邦所属の女性軍人・イリアという、異星人同士がメインキャラクターに据えられていた。少し歳の離れた姉弟のように描かれた2人のコミカルな会話劇は多くのユーザーにとって大事な冒険の記憶になっているだろう。本作でも「仲間」を魅力的に描くというポイントにしっかりと注力されている。挙げ出すときりが無いが、レティシアのレイモンドへの淡い恋心や、アスター4号星の技術者・ミダスのレイモンドの副官・エレナへの向き合い方など、その魅力は多岐に渡る。

一方で、個性的なキャラクターの魅力に対して、拙いキャラクターアニメーションや演出は気になる箇所だ。例えば、カットシーン中にメインで喋っているキャラクター以外は棒立ちだったり、表情の変化も薄かったりと、仲間に愛着を持っているほど熱中しづらく思うだろう。加えて、感情表現に伴うキャラクターアニメーションのバリエーションが少ないため、単調な動きも目立つ。特に、シナリオの深奥に迫る中盤以降は、30分程度のカットシーンもあるが、棒立ちの仲間、動きの少ない会話劇によってゲーム全体の没入感が削がれている印象を受けた。

大胆だが爽快感溢れる戦闘システム

また、本作の魅力として戦闘システムは見逃せない。本作では3Dのシームレスバトルが採用されており、フィールドで敵とエンカウントするとその場でバトルが開始される。システムとしてはスティック移動とボタン操作でスキルを発動していくコンボアクション、回避などオーソドックスな手触りだ。また、本作は、いわゆる通常攻撃は存在せず、画面下部に表示される「AP」を消費するスキル攻撃が基本となる。そのため、ただ単に連打するだけでは勝利を収めることは難しく、キャラクターの切り替えやスキルの発動タイミングを見極める、いわゆる「アクションRPG」としての設計が徹底されている。

DUMAはR1ボタンで瞬時に起動可能

また、主人公たちに同行する「機械生命体・DUMA」を活用することで、戦闘の方向性が文字通り変化していく。DUMAはフィールドや戦闘中にR1で起動できるのだが、ターゲットロック中の敵に対して高速でアタックしダメージを与えられる。ボタン一つで瞬時に敵へとぶつかっていくため、バトルは空中戦や地上戦へとスピーディーに変化していく。また、DUMAはスピード感も魅力だが、敵がこちらを見つけていないタイミングで行う「サプライズアタック」や、敵の視界の外からアタックを行う「ブラインドサイド」など、敵の隙を衝き攻撃することで、先述の「AP」が増加していく。敵の攻撃を受けると「AP」が減少しコンボも繋げなくなるため、なるべくダメージを受けないように猛攻を仕掛けるバトルは非常に手に汗握る。

アクセル全開の「DUMA」での戦闘

操作キャラクターによって、DUMAの操作にもバリエーションが生まれる。例えば、回復役の場合は味方のもとへ一直線で向かうことで回復できたり、遠距離攻撃型は即座に空中へ退避できたりと、DUMAは、攻撃だけでなく回復や回避など戦闘の中心として機能していく。DUMAを伴うアクションは、先述の「一直線でアタックする」という説明からもわかるように、どれも大胆なプレイになるため、フィールドによってはカメラがゴチャゴチャになることも少なくない。とはいえ、多少の大雑把さも含めて爽快感が高く、ゲームをクリアするまで通常戦闘は常に熱中でき、一切の面倒さや単調さを感じなかった。

また、バトル中で気になったのは「味方AI」についてだ。過去作でも味方がMPをすぐに使い切り、備蓄しておいた回復薬が枯渇するなんてことがザラにあったが、本作でも少し気を抜くと操作キャラクター以外が全滅することがたびたび発生する。仲間が回復アイテムを使用できるように設定したり、DUMAの防御モードを活用するなど、ある程度の補強はできるものの、全体攻撃で一気に味方がダウンすることも多い。特に、ここまで見てきたように、本作のバトルシステムはDUMAを駆使するスピーディーさが特徴なので、味方のダウンや回復アイテムを多用する場面はゲームの魅力を引き下げている。

仲間AIのバランスは少々粗が目立つ

DUMAと巡る広大な世界

また、フィールドにおいてもDUMAは大活躍だ。本作では縦長のワイドリニアのようなフィールドが多数用意されており、DUMAで空中を自由に移動可能となる。特に、DUMAによる縦軸の移動は探索の幅を広げるのはもちろん、どうしても冗長になりがちな「ゲームの移動」について、ストレスを軽減する要素としてうまく機能している。

フィールドや街などDUMAは自由に移動が可能だ

広大なフィールドに合わせて、旅の道中で訪れる街も魅力的だ。最初に訪れる小さな村ラーカス村には少し古びた民家が建ち並んでいたり、そのほかにも土地の成り立ちを想像させるさまざまなロケーションが旅を大いに盛り上げてくれる。アクティビティ自体は決して多くはないが、路地裏など細かく作り込まれた街並みは一見の価値ありだ。

また、街ではシリーズお馴染みの「プライベートアクション」も用意されている。「プライベートアクション」とは街中で過ごしている仲間に話しかけることで個別のイベントを見ることができるシステム。それぞれの仲間たちの違った一面を知ることができ、物語や仲間の解像度を向上させる機能として素晴らしい要素だ。

プライベートアクションでは意外な組み合わせの会話を楽しめる

シリーズお馴染みの多様な育成システム

また、「スターオーシャン」シリーズお馴染みの多様な育成システムもゲームプレイをより盛り上げてくれる。本作ではスキルツリーをはじめとして、コマンドによるコンボの設定や強化、アイテムや武器の生成などさまざまなカスタマイズが可能となっている。

スキルツリーは非常にオーソドックスなパネルの開放型となっており、キャラクターの基礎攻撃力や防御力を向上させるパネルや、バトル中のスキルパネルが用意されている。取得したスキルをコンボに組み入れることで、自分好みのコンボを構築できるなど、スキル自体の強化も可能になる。一番しっくりくる戦闘パターンをキャラクターごとにセットしていくプレイは想像以上に多彩で驚かされた。

オーソドックスでわかりやすいスキルパネル

その一方で、スキル取得も含めてメニュー画面などのユーザーインターフェースは煩雑な作りが目立っており、少々ストレスを感じる。例えば、同じアイテムが重複しアイテムで溢れてしまうアイテムリスト、頻繁にあるパーティ離脱のたびに外れるアクセサリー、一目で理解できないアイコンなど、快適なプレイを阻害する要素が多くある。

アイテムが重複しており少々わかりづらい

ゲーム全体として『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』は、シリーズが帰ってきた確かな喜びがある。煩雑な部分が目立つことは事実だが、それを補ってあまりある、バトルシステムやカスタマイズ性の高いスキル。そしてなにより、共に旅をした仲間たちは、誰一人として欠けてはならない、冒険の記憶として多くのユーザーの記憶に残るだろう。それはまさしく、往年の『スターオーシャン』(1996年)や『スターオーシャン セカンドストーリー』(1998年)をクリアしたときの満足感に近い。

物語はいささか規模が大きすぎるし、キャラクターたちも少し置いてきぼりを食らっている印象すらある。しかしながら仲間たちの感情の機微や関係性といったポイントに対して、本作は逃げることなく描き切っている。その点において『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』はシリーズの最新作として強度を持つ作品だ。

長所

  • シリーズの魅力である「仲間」との冒険譚
  • 大胆ながらも爽快感溢れる戦闘システム
  • わかりやすく多様な育成システム

短所

  • 演出の乏しさやムービーパートの多さ
  • ストレスを感じさせる味方AIや煩雑さが目立つUI

総評

シリーズ25周年を記念する作品として、失速したシリーズを復活させようとする確かな「遊び心地」を感じられる。ボーイミーツガール風の物語や爽快さに振り切った大胆なバトルシステムなど評価できる箇所は多いが、一方で徐々に収拾が付かなくなるシナリオや煩雑なUIなど、従来の作品と同様の課題をいまだ抱えている。だが、何よりも冒険を共にする「仲間キャラクター」を丁寧に描いた冒険譚は多くのユーザーの記憶に残るだろうし、「スターオーシャン」シリーズの最新作として見逃せない一作と言える。

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シリーズが帰ってきた確かな喜びを感じさせる『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』レビュー

8
Great
『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』は、大胆なバトルシステムなど評価できる箇所も多い反面、従来の作品と同様の課題をいまだ抱えてもいる。だが「仲間キャラクター」を丁寧に描いた冒険譚は多くのユーザーの記憶に残るだろうし、「スターオーシャン」シリーズの最新作として見逃せない一作と言える。
スターオーシャン6 THE DIVINE FORCE
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